建築物のライフサイクルカーボン(LCCO2)算定・評価を促進する制度のポイントは?
2026.1.28
日本で排出される二酸化炭素(CO2)のうち約40%を建築分野が占めています。こうした中、政府は、従来の「建築物の省エネ化」にとどまらず、建築物の計画から解体までのライフサイクル全体でCO2の排出量を削減していくため、大規模建築を対象に「建築物のライフサイクルカーボン(LCCO2)」の算定・評価を促進する制度を検討しており、2028年をめどに開始することを目指しています。
この制度では、LCCO2の算定・公表・報告の義務化が想定されているため、建材・設計・施工各段階でのデータ整備や対応方針の検討等が急務となっています。
本コラムでは制度のポイントはどういったもので、事業者が取るべき対応などを解説します。
流れ
- 建築物のライフサイクルカーボン(LCCO2)関連法改正案の主要点と対象範囲は?
- LCCO2評価とは?
- 制度導入で期待される効果と現実的課題
- 企業・自治体が直ちに準備すべき対策とは?
- さいごに
建築物のライフサイクルカーボン(LCCO2)関連法改正案の主要点と対象範囲は?
政府が検討中の関連法改正案では、建物の資材製造から施工、解体までの工程で排出される二酸化炭素(CO2)の総量を算定する制度の創設を盛り込んだ概要が示されていて、対象となるのは、5,000㎡以上のオフィスビルなど大規模な建築物とされています。
また、建築主には、新築や増改築の着工前に算定結果を国に届け出るよう義務付けることが盛り込まれています(図1)。
【図1】


出典:国土交通省 ホーム>政策・仕事>審議会・委員会等>配布資料
「参考資料3_建築物のライフサイクルカーボンの削減に向けた制度の概要(PDF形式:426KB)」
改正案が施行された場合、一定規模以上の新築・増改築についてLCCO2の算定・報告・公表が義務化される見通しで、対象基準や報告様式、第三者評価の有無、適用開始時期が制度設計の焦点となっています。
LCCO2評価とは?
LCCO2とは、建材製造→輸送→施工→使用→解体・廃棄まで建物ライフサイクル全体で発生する温室効果ガス量(CO2換算)を示します。国際規格(ISO14040/44)やEPD※1/CFP※2と整合する手法が前提で、材料ごとの原単位(kgCO2e/単位)や使用段階のエネルギー(オペレーショナル)を統合して評価することになります。
※1 EPD:Environmental Product Declarationの略称。世界各国でISO14025に準拠するEPDプログラム運営者によって管理されており日本では一般社団法人サステナブル経営推進機構がEPDを運営している。
※2 CFP:Carbon Footprint of Productsの略称。製品一つあたりの原材料から廃棄まで、一連のプロセスにおけるGHG排出量評価のこと。
国内ではJ‑CAT※3等の算定ツール整備が進み、GX製品や低炭素建材の評価指標(GX価値)やScope3情報の取り扱いが重要課題です。信頼性確保のため、データ整備・第三者レビュープロセスと統一ルールが不可欠です。
※3 J-CAT:Japan Carbon Assessment Tool for Building Lifecycleの略称。ゼロカーボンビル推進会議の元で開発された建築物のライフサイクル全体を通じた温室効果ガス排出量の算定ツール。
制度導入で期待される効果と現実的課題
導入効果としては、建材選定や設計段階での低炭素化が促進され、市場で低炭素製品(GX製品)への需要が拡大、投資や調達の評価指標にも影響します。
一方で課題は多岐にわたり、次のような課題が挙げられます。
- 製品別の原単位データ不足
- EPD/CFP等のデータ作成コスト
- 設計・施工現場の技術・人材不足
- 中小事業者の負担増
また、地震・災害対応や耐久性など日本特有の条件をどう制度設計に反映するか、段階的導入や簡易評価ルールとの整合も検討点です。
企業・自治体が直ちに準備すべき対策とは?
事業者はまずデータ整備(EPD/CFP取得、製品原単位の収集)と評価ツール(J‑CAT等)導入、BIM※4活用によるLCA※5連携を優先する必要が想定されます。また設計段階での代替案比較やGX製品の採用計画、調達基準へのLCCO2要件導入を進めることが望ましいでしょう。
※4 BIM:Building Information Modelingの略称。建築物の3次元の形状情報に加え、面積・材料・部材の仕様や性能、仕上げなどの建築情報モデル(BIMモデル)を構築するもの。
※5 LCA:Life cycle assessmentの略称。製品のライフサイクル(資源採取-原料生産-製品生産-流通・消費-廃棄・リサイクル)を通じた環境負荷を把握・評価する活動のこと。評価対象は温室効果ガス、大気汚染、生物/人間への毒性、土地利用転換、資源枯渇など。
また、自治体においては、公共建築での先行導入や支援制度、地域サプライチェーンのデータ整備、事業者向けの研修・認証制度整備を検討してはどうでしょうか。早期の試行・PDCAによって制度運用開始時の混乱を抑え、特に中小事業者支援と透明な報告ルールの整備が重要となります。
さいごに
今回の改正法案では5,000㎡以上の大規模な建築物について届出を義務付ける方向性が示されました。
ただ、それ以外にも2,000㎡以上の住宅を除く建築物の新築・増改築についても、建築士が建築主に対してLCCO2の評価結果等の義務付けを検討すべき、建築物のLCCO2評価結果に係る表示ルールの策定を検討すべき、といった議論も出ており、関係する皆さまにとって今後少なからず対応しなければならない領域が増える可能性があります。
そのような状況への対応は短期間では難しく、改正法案が施行される前段階から対策を検討したい企業さまもいらっしゃるのではないでしょうか。当社ではCFP、LCAを基本としたライフサイクル全般の評価を行っておりますので、お気軽にご相談を頂ければ幸いです。
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