コラム/トピックス

GX排出量取引制度(GX-ETS)の排出枠割り当て指針等、詳細ルールを公表 -経産省-

2026.2.6

GXとは…グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)の略。
 ETSとは…Emissions Trading Systemの略で、「排出量取引制度」の意味。

経済産業省の産業構造審議会は、2026年度から義務化が開始されるGX排出量取引制度(GX-ETS)の詳細設計をまとめた。

GX-ETSは2025年5月に成立した改正GX推進法に定められ、企業間での温室効果ガス排出枠の売買を認めるもので、社会全体の排出量を効率的かつ段階的に削減することを目的とした日本初の本格的な法定カーボンプライシング制度である。大規模事業者(直接排出10万トン以上)の参加を義務付けており、GX推進機構の運営のもと、制度は第1フェーズ(自主的試行、2023~2025年度)、第2フェーズ(義務化、2026年度~)、将来的な第3フェーズ(有償オークション導入予定)に分かれる。

<図 GX-ETSのスケジュール概要>

GX-ETSのスケジュール概要
GX-ETSのスケジュール概要

出典:経済産業省「産業構造審議会 排出量取引制度小委員会中間整理」より

2026年度(第2フェーズ)からは、政府が全体の排出上限を設定し、各企業に排出枠を割り当てる。今回の取りまとめにおいては、主に以下の事項が正式に定められた。

  • 密接関係者との共同での届出:
    排出目標等の共同提出の対象として、ホールディングス等の親会社が直接排出量の観点か
    ら制度対象外となるケースを想定し、グループ会社(兄弟会社を含む)単位での義務履行を
    認める。
  • ベンチマークとグランドファザリングによる割り当て:
    排出枠は同業種上位企業のベンチマークか、ベンチマーク設定困難な業種は過去排出量に
    削減率を乗じる方法(グランドファザリング方式)とする。
  • 基準活動量・排出量の算定方法詳細:
    事業所の新設・廃止・活動量の変
    動等が発生した場合には割当量を調整する。
  • 小規模事業所の扱い:
    小規模事業所(エネルギー使用量1500kL未満)は、手続きの簡素化の観点から活動量の変
    動に伴う調整は省略する。小規模事業所群を一体とみなし、全体で7.5%超の変動時のみ調
    整する。
  • 過去の削減努力の勘案:
    過去(2013年度以降)の自主的な削減努力も反映し、グランドファザリング設定削減率以
    上の削減は割当量に反映する。
  • GX関連の研究開発投資の勘案:
    研究開発費や自己負担額も一定条件で排出枠不足分の軽減に活用可能。
  • 排出枠の上下限価格:
    2026年度の上限取引価格は1tあたり4,300円、調整基準価格は1,700円、以降は物価変動
    を加味して決定する。
  • 本制度におけるクレジットの扱い:
    削減インセンティブを確保するため、J-クレジット※1やJCMクレジット※2の利用は実排出量
    の10%までとする。今後DACCS※3やCCS※4などへの対象拡大を予定。

出典:経済産業省「産業構造審議会 排出量取引制度小委員会中間整理」をもとに当社作成

義務化対象企業は日本全体で300~400社となる想定で、国内の温室効果ガス排出量の60%に相当する見込みである。

対象企業には中長期の排出目標や実績、研究開発投資などを含む移行計画の策定・毎年の提出と公表が義務付けられる。設備投資計画・実績は提出義務のみで公表は不要となる。これらに対応していく上で、排出量データの正確な測定・管理体制の整備、第三者機関による排出量の検証や割当量の認証を受けること、償却枠の調達計画が求められる。

また、内閣官房GX実行推進室は今後の検討論点として、サプライチェーン全体での排出削減の必要性を挙げている。この流れから義務化対象外企業においても、排出量データの把握・提供、削減努力、提携する大企業との連携強化がさらに求められる可能性がある。中小企業には相談窓口や支援策も設けられているため、これらを活用した準備が重要となる。

※1)J-クレジット
日本国内において、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入、森林管理などにより削減・吸収された温室効果ガスの量を「クレジット」として認証し、企業や自治体などが取引できる制度。これにより、排出削減努力を行った主体はクレジットを販売することができ、他の事業者はクレジットを購入することで自らの排出量の一部として活用することが可能となる。

※2)JCMクレジット(Joint Crediting Mechanism:二国間クレジット制度)
日本と途上国などのパートナー国が共同で実施する温室効果ガス排出削減プロジェクトにより創出されるクレジット。日本企業が海外で省エネ設備の導入や再生可能エネルギー事業を展開し、その成果として得られた排出削減量を日本と相手国で分け合い、クレジットとして活用可能である。

※3)DACCS(Direct Air Carbon Capture and Storage:大気直接回収・貯留)
大気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収し、地中などに貯留する技術。従来の排出抑制策とは異なり、既に大気中に存在するCO2を回収するため、カーボンニュートラルやカーボンマイナスの達成に貢献する先端的な技術として注目される。

※4)CCS(Carbon Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)
発電所や工場などから排出される二酸化炭素(CO2)を回収し、地中深くに安全に貯留する技術。これにより、大気中へのCO2排出を大幅に削減できるため、産業部門における脱炭素化の有力な手段とされている。

【参考情報】
2025年12月19日付 経産省HP
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/20251219_report.html
2024年12月19日付 内閣官房GX実行推進室「GX実現に資する排出量取引制度に係る 論点の整理(案)」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/carbon_pricing_wg/dai5/siryou2.pdf

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