脱炭素経営が中小企業のブランド価値を高める時代へ 脱炭素と自社ブランディングを結びつける実践事例
2026.2.24
近年、「脱炭素経営」という言葉を耳にする機会が急速に増えています。かつては大企業やグローバル企業の課題と捉えられがちだった脱炭素ですが、現在では中小企業にとっても避けて通れない経営テーマとなっています。
しかし、「環境対応はコストがかかる」「何から始めればよいかわからない」と感じている経営者の方も少なくありません。一方で、脱炭素経営を単なる環境対策にとどめず、自社のブランディングや競争力強化につなげている中小企業も確実に増えています。
本コラムでは、脱炭素経営がなぜ今必要なのかを整理したうえで、実際に脱炭素を自社ブランド価値へと転換している中小企業の事例を紹介し、今後のヒントを探ります。
流れ
- なぜ脱炭素経営が必要なのか ―ブランディングの観点から―
- 事例①:A販売株式会社 ―脱炭素を「企業姿勢」として可視化するBtoB・BtoC型モデル―
- 事例②:B造船株式会社 ―技術力×脱炭素で新たな産業ブランドを創出―
- 事例③:C酒造株式会社 ―伝統産業×脱炭素で消費者共感型ブランドへ―
- まとめ:脱炭素は中小企業の「新しいブランド資産」
1.なぜ脱炭素経営が必要なのか ― ブランディングの観点から―
日本政府は2050年のカーボンニュートラルを目標に掲げ、企業活動全体で温室効果ガスを削減するよう求めています。特に近年は、単に自社の排出量を減らすだけでなく、サプライチェーン全体での脱炭素対応が重視されるようになりました。これは、大企業だけでなく、その取引先である中小企業にも対応が求められることを意味します。

こうした流れの中で、脱炭素経営は次のようなブランド価値を生み出します。
- 取引先から「選ばれる企業」になる
- 環境意識の高い顧客・消費者からの信頼を得る
- 採用活動において企業姿勢を明確に示せる
- 社員の誇りやモチベーション向上につながる
重要なのは、脱炭素を「義務」や「コスト」として捉えるのではなく、企業の姿勢・価値観を表現する手段、つまりブランディングの要素として活用することです。
それでは実際に、脱炭素経営をブランド価値に結びつけている中小企業の事例を見ていきましょう。
2.事例①: 関東地方の販売会社 ―脱炭素を「企業姿勢」として可視化するBtoB・BtoC型モデル―
この販売会社は、リユース可能なトナーカートリッジ部材販売を中心に、脱炭素経営を進めています。もともとSDGsを企業理念として掲げていましたが、温室効果ガス排出量の算定や削減目標の設定、再生可能エネルギー導入などを通じて「脱炭素経営そのものを企業価値にする」取組を加速させています。
また、同社は、自社製品の環境負荷を可視化するため、CFP(カーボンフットプリント)※の算定に取り組んでいます。
※CFP(カーボンフットプリント):製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに⾄るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2排出量に換算し、製品に表⽰された数値もしくはそれを表⽰する仕組み。(参照元:経済産業省、環境省「カーボンフットプリント ガイドライン」)
「環境にやさしい製品」という抽象的な表現にとどまらず、原材料調達から製造、輸送、廃棄までのライフサイクル全体で排出されるCO₂量を数値として示すことで、取引先に対して客観的な説明を可能にしました。この取組は、次の点でブランディングにつながっています。
- 数値に基づく情報開示により、企業としての信頼性が高まること
- 環境配慮を重視する取引先から「選ばれる理由」を明確にできること
- 脱炭素への姿勢を経営戦略として発信できること
その結果、BtoCのみならずBtoB分野においても、環境対応に積極的な企業というブランドイメージを確立しています。CFPの活用は、科学的根拠を持った脱炭素ブランディングの有効な手法といえます。
同社の事例は、脱炭素を「特別な商品」ではなく、企業そのものの姿勢としてブランド化するモデルといえるでしょう。
3.事例②:四国地方の造船会社 ―技術力×脱炭素で新たな産業ブランドを創出―
この造船会社は、内航船を中心とした船舶建造を行う造船企業です。同社は、海運業界全体の脱炭素化という大きな課題に対し、「ゼロエミッション船」の開発という形で挑戦しています。
従来、船舶は大量の燃料を消費し、CO₂排出量が多い産業分野の一つとされてきました。同社はこの課題に対し、電動化や省エネ技術の導入、環境負荷の少ない素材の活用など、複合的な技術開発を進めています。

この取組は、単なる環境対応にとどまらず、次のようなブランド価値を生み出しています。
- 「環境対応型造船会社」という明確なポジション確立
- 海運会社・自治体・研究機関からの注目度向上
- 技術力と社会課題解決を両立する企業イメージの構築
また、地域社会に対しても「脱炭素産業の拠点」という新たな価値を提示し、地域ブランドの向上にも貢献しています。この事例は、BtoB分野において脱炭素・技術革新・競争力強化を実現している好例といえます。
4.事例③:中国地方の酒造会社 ―伝統産業×脱炭素で消費者共感型ブランドへ―
この酒造会社は、中国地方で酒類製造を行う地域密着型の酒蔵です。同社は、自社の温室効果ガス排出量を把握したうえで、再生可能エネルギー電力への切替や設備更新による省エネ化など、段階的な脱炭素施策に取り組んでいます。
酒造業は地域文化や伝統と深く結びついた産業です。同社は、こうした背景を活かしながら、次のような点をメッセージとして発信しています。
- 環境に配慮した酒造り
- 持続可能な地域産業の実践
- 次世代へ文化を継承する姿勢
この取組により、単なる「地酒」ではなく以下のような付加価値が生まれています。
- 環境意識の高い消費者から支持されるブランド
- 観光や地域振興と結びつくストーリー性
- 国内外への発信力向上
同社の事例は、BtoC分野において脱炭素を「共感の物語」に転換したブランディングモデルといえるでしょう。
■まとめ:脱炭素は中小企業の「新しいブランド資産」
今回紹介した3社の事例から見えてくる共通点は、脱炭素経営を単なる省エネ対策に終わらせず、次のような「企業価値」として再構築している点です。
- 排出量の見える化
- 技術・工程・商品への反映
- 社内外へのストーリー発信
このように脱炭素経営は「守り」の施策ではなく、「攻め」のブランディング戦略になり得ます。特に中小企業は、経営者の思いや地域性、独自技術と結びつけることで、大企業にはない強い物語をつくることも可能です。
これからの時代、企業が選ばれる理由は「価格」や「品質」だけではなく、「どのような未来を目指しているか」にも広がっていきます。脱炭素経営は、その問いに対する一つの答えと言えるものです。
脱炭素経営は、取組方次第で企業のブランド価値を大きく高める可能性を秘めています。しかし、「どこから始めればよいのか」「自社の強みとどう結びつけるのか」で悩まれる企業も少なくありません。
MS&ADインターリスク総研では、温室効果ガス排出量の計測・削減計画策定支援などの脱炭素経営の導入支援から、商品・サービスのブランディングに最適なCFP、LCAを基本としたライフサイクル全般の評価を行っておりますので、お気軽にご相談を頂ければ幸いです。
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