雪害リスクおよびその対策【災害リスク情報104号】
[このレポートを書いたコンサルタント]
- 会社名
- MS&ADインターリスク総研株式会社
- 所属名
- リスクマネジメント第一部
リスクエンジニアリング第二グループ - 執筆者名
- 主任コンサルタント 藤田 草史朗
2026.2.2
- 近年、日本国内では局地的かつ短時間の大雪により、都市部や交通網を含む広範な地域で深刻な被害が発生している。気象情報の活用や事前準備など、雪害リスクへの対策が重要となっている。
- 太陽光発電設備では、積雪による損壊事故が急増しており、設計・保守・遠隔監視・除雪作業の最適化など多面的な対策が求められる。
1.はじめに
日本の国土の50%以上が国土交通省により豪雪地帯に指定され、これらの地域では雪害の防除など豪雪地帯向けの各種対策が講じられている。近年の大雪では、局地的に短時間で大量に降雪することが多くなっており、都市部や交通の要所への影響も大きくなっている。我が国にとって降雪および積雪は、豪雪地帯以外にとっても冬期における大きなリスクとなっている。特に、太陽光発電設備では積雪による損壊事故が増加しており、発電事業者にとって重大な脅威となっていることから、対策の強化が求められている。
本レポートでは今冬の寒候期予報を紹介するとともに、雪による被害を軽減するための対策を整理する。また、太陽光発電設備に関しては、積雪による損壊事故の現状や具体的な対策について詳しく述べる。
【図1】豪雪地帯・特別豪雪地帯の地域指定図※1


2.今冬の寒候期予報
2025年9月22日に気象庁より発表された寒候期予報によると、今冬(12月~2月)の気温は全国的にほぼ平年並と予想されている。
また、降雪量は、北・東日本の日本海側ではほぼ平年並みと予想されている一方、西日本の日本海側 i では平年並か多い見込みと予想されている。
なお、寒候期予報は主に熱帯域のゆっくりとした海洋変動の大気への影響に基づいている。中高緯度の大気独自の変動(寒帯前線ジェット気流の蛇行や北極振動 i i など)は予測の不確実性が大きいため、予報を検討する際にはこの点も考慮している。
【表1】今冬(2025年12月~2026年2月)の平均気温・降水量・降雪量の予報※2


i )西日本の日本海側の降雪量予報は近畿日本海側と山陰を対象としており、九州北部地方を含んでいない。
i i )北極圏とそれを取り巻く中緯度の地上気圧場が南北でシーソーのように変動し、逆相関を持つ現象。北極振動の状態によって、偏西風の流れや寒気の南下・北上が変化し、日本の天候にも影響を及ぼす要因の一つとされる。
3.近年の降雪量
表2に近年の降雪量の平年比とともに、冬季の天候の特徴および主な被害を示す。
近年の日本国内における天候は、暖冬傾向が続く一方で、局地的に記録的な大雪が発生する年も見られる。2015~2016年は冬型の気圧配置が長続きしなかったため、全国的に降雪量は少なかったものの、2016年1月下旬の強い寒気の影響で九州北部地方ではかなり多くの雪が降った。2016~2017年は全国的に暖冬となり、北日本や東日本では少雪となったが、西日本では大雪となる時期もあった。
2018年1月には本州の南側を発達しながら東へ進む南岸低気圧の影響で首都圏が広範囲にわたり大雪となり、2月には北陸地方を中心に記録的な大雪が発生し、交通障害や車両の立ち往生など社会的な影響が大きくなった。2018~2019年および2019~2020年は再び暖冬・少雪となり、各地で観測史上最少の積雪を記録した。
一方、2020~2021年は寒波の影響で日本海側を中心に大雪となり、停電や交通障害などの被害が発生した。2021~2022年および2022~2023年は平年並みかやや多い積雪となる地域もあり、局地的な大雪による被害が報告されている。2023~2024年は再び暖冬傾向となり、全国的に少雪となった。2025年2月には冬型の気圧配置の影響を受けやすかった西日本日本海側で降雪量が多くなった。
したがって、2015~2025年の間は、暖冬や少雪の年が多い一方で、局地的・短期間に記録的な大雪となる年も見られ、交通障害や雪害への警戒が引き続き必要な状況である。寒候期予報では全体的な傾向を把握できるが、冬型の気圧配置による突発的な大雪にも今後十分な注意が求められる。
【表2】近年の降雪量平年比など
過去の地域平均気象データ※3、消防白書※4より当社にて作成


i i i )平年を100とし、階級はかなり少ない(-2)、少ない(-1)、平年並(0)、多い(1)、かなり多い(2)で表す。
4.降雪情報の収集
雪による被害を軽減するには、情報を的確に入手し、対策を取ることが重要である。
(1)気象庁発表による雪の状況
気象庁ホームページでは、現在の積雪の深さや平年比、累積降雪量などを11月から5月頃まで公表している(図2)。屋根上の積雪量が目視で確認できる場合は、目視による確認を優先するべきであるが、目視などで判断するのが困難な場合には、公表されている情報から積雪量を把握し、雪下ろしなどの実施判断に役立てることが可能である。
【図2】雪の状況 積雪の深さ 2026年1月5日13時00分
<気象庁ホームページ 雪の状況>
https://www.data.jma.go.jp/stats/data/mdrr/snc_rct/index_snc.html


(2)早期天候情報
気象庁は2019年6月から予報期間の取り方を一部変更し「早期天候情報(図3)」の提供を開始した。これは、10年に1度程度しか発生しないような著しい高温や低温、降雪量(冬季の日本海側)となる可能性が通常よりも高まっているときに、6日前までに注意喚起の情報を発表するものである。6日先から14日先までの期間で、5日間平均気温が「かなり高い」「かなり低い」となる確率が30%以上、または5日間降雪量が「かなり多い」となる確率が30%以上と見込まれる場合に発表される。
特に降雪量に関しては、地域や時期ごとに10年に1度程度しか発生しないような顕著に多い降雪量が予想され、その確率が30%以上となった場合に「大雪または雪に関する早期天候情報」が発表される。発表対象地域は、冬型の気圧配置に伴う降雪が卓越する日本海側を中心とした地域(図4)である。この情報のタイトルは、各地域・時期における「かなり多い」降雪量の基準が概ね平年で最も多い時期の降雪量以上となる場合は「大雪に関する早期天候情報」、それ以外の時期は「雪に関する早期天候情報」としている。こうした情報が発表された際は、時期や積雪の状況によって、屋根雪による家屋の損壊や交通障害、果樹の枝折れ、ビニールハウスの倒壊、太陽光発電設備の損壊が発生するおそれがある。発表された情報を建物の補強や雪下ろしの準備、必要な要員の確保、屋外作業の計画の見直しなどに役立てることが重要である。
【図3】早期天候情報(降雪量) 2026年1月5日14時30分発表
<気象庁ホームページ 早期天候情報>
https://www.data.jma.go.jp/cpd/souten/?reg_no=0&elem=snow


【図4】大雪または雪に関する早期天候情報の発表地域※5


(3)気象警報・注意報
気象庁は、災害が起こるおそれのあるときは「注意報」を、重大な災害が起こるおそれのあるときは「警報」を、予想される現象が特に異常であるため重大な災害が起こるおそれが著しく大きい場合に「特別警報」を発表し、注意や警戒を呼び掛ける。気象警報・注意報は、予想される現象が発生する概ね3~6時間前に発表されることが多い。
太平洋側などは、前節に挙げた大雪に関する早期天候情報の対象外となっている。したがって、これらの地域では、気象庁ホームページなどから気象警報・注意報の発表状況を確認し、避難や出退社の判断に役立てることが重要である。
【図5】気象警報・注意報の発表状況の例
<気象庁ホームページ 気象警報・注意報>
https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#5/34.5/137/&elem=all&contents=warning


5.降雪シーズンに向けた準備
首都圏、名古屋、大阪などの大都市圏では、大きな積雪に見舞われることが少なく、積雪に対する準備不足が懸念される。本章では、降雪に対して準備しておくべき事項について記載する。
(1)過去の積雪状況の振り返り
過去に積雪に見舞われた際の被害状況を整理する。整理の方法としては、構内図への被害状況の記入など、見直しやすい形とすることを推奨する(図6)。また、改良工事などを行った場合は講じた対策について、対策が済んでいない場合は今後必要な取組について併せて整理することを推奨する…
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