レポート/資料

荷主優位の商慣習の打破を狙いとする取適法の要点【RMFOCUS 第98号】

[このレポートを書いたコンサルタント]

林田 顕
会社名
MS&ADインターリスク総研株式会社
部署名
リスクマネジメント第二部
モビリティリスクマネジメントグループ
執筆者名
マネージャー上席コンサルタント 林田 顕 Ken Hayashida

2026.7.1

要旨
  • 下請法が改正され、新たに取適法として2026年1月に施行された。
  • 取適法では下請法よりも委託事業者の責任が重くなり、中小受託事業者の保護が強化された。
  • 取適法では新設された「特定運送委託」により、下請法では対象にならなかった荷主が対象に加えられた。
  • 違反事業者は、実名で違反の内容等が公正取引委員会のウェブサイトに掲載され、かつ報道発表資料ではより詳細な違反内容等が公表される。
  • 商品、製品、原材料等の運送を委託している取り引きがある場合を中心に荷主として確認すべき事項につき解説する。

1. 下請法から取適法へ

(1) 下請法の制定

下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」)は1956年6月1日に制定された。その当時、公正・自由な競争の実現を目指す法律として私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、「独占禁止法」)が制定されており、この法律において、優越的地位の濫用が規制された。優越的地位の濫用とは、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に相手方に不利益を与えることなどをいう。例えば、下請取引における下請代金の支払遅延などの行為は、優越的地位の濫用行為に該当すると考えられる。

ただ、現実には、下請事業者が親事業者の独占禁止法違反行為を公正取引委員会や中小企業庁に申告することは少なく、立場の弱い下請事業者の保護については十分に機能しているとはいえない状況であった。その状況を打破すべく制定されたのが下請法であった。その意味では、下請法は独占禁止法を補完する法律といえる。

(2) 取適法への改正

2025年5月に下請法が製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(以下、「取適法」)に改正され、2026年1月1日に施行された。改正の背景について、政府広報オンラインでは次のように説明している。

「近年、労務費や原材料費などのコストが急激に上昇しているなか、中小企業をはじめとする事業者が賃上げの原資を確保し、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる『構造的な価格転嫁』の実現を目指すために、取引の適正化と価格転嫁の促進を図る法改正が行われました。」

(3) 取適法への改正により何が変わったのか

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