海が吸収するCO2?ブルーカーボン事業の現場視察会で学ぶ海と脱炭素の関係
2026.7.3
「海がCO2を吸収する」。そう聞くと、少し意外に感じる方もいるかもしれません。
近年、藻場などの海の沿岸生態系がCO2を吸収して海底や深海に蓄積された炭素を「ブルーカーボン」として活用する取り組みが国内で広がり始めています。
一体どういう取り組みなのか?MS&ADインターリスク総研の担当者がブルーカーボン事業の現地視察会に参加してきましたので、その内容をご紹介します。
流れ
- そもそも「ブルーカーボン」とは?
- 企業とブルーカーボンをつなぐ「ブルーカーボンクレジット」とは?
- ブルーカーボン事業の現場を視察!
- まとめ:ブルーカーボンは新しい地域づくりのヒント
そもそも「ブルーカーボン」とは?
ブルーカーボンとは、沿岸や海洋の生態系が光合成で吸収したCO2が、炭素として海底や堆積物などに蓄積されたもののことをいいます。CO2を吸収する海の生態系には、藻場(海草・海藻)、干潟、マングローブ林などがあります。
脱炭素の緩和策には大きく「排出削減対策」と「吸収源対策」の2つの方法があり、ブルーカーボンは2009年に公表された国連環境計画(UNEP)の報告書で紹介され、海洋・沿岸生態系を活用した「吸収源対策」の一つとして世界的に注目されるようになりました。
| 排出削減対策 | CO2などの温室効果ガスの排出を減らす
|
|---|---|
| 吸収源対策 | CO2などの温室効果ガスの吸収を増やす
|
そしてブルーカーボンの価値は、CO2を吸収することだけではありません。藻場や干潟の保全・再生は、水質の改善や水産資源の回復、生物多様性の保全など、多面的な効果をもたらします。
近年ではこうした価値が「自然資本」や「ネイチャーポジティブ」といった観点からも評価されて、企業のサステナビリティ活動の1つとしても注目されています。
企業とブルーカーボンをつなぐ「ブルーカーボンクレジット」とは?
ブルーカーボンが企業のサステナビリティ活動として注目される理由の1つとして、「ブルーカーボンクレジット」の仕組みが挙げられます。
クレジットと聞くと難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うと、海の環境保全活動によって吸収されたCO2の価値を見える化したものです。
例えば、藻場を再生することでCO2の吸収量が増えた場合、その吸収量を第三者が評価して、クレジットとして認証します。
企業はそのクレジットを購入することで、脱炭素への取り組みを後押しするとともに、藻場の再生や海洋環境の保全活動を支援することができます。


※イラストは生成AIを使って作成しています
つまり、ブルーカーボンクレジットは「海を守る活動」と「企業のサステナビリティ活動」をつなぐ仕組みとも言うことができます。
ブルーカーボン事業の現場を視察!
そのブルーカーボンクレジットの認証と発行を行っているのが「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)」です。JBEは、企業や自治体、研究機関などが参加するネットワーク組織「BERG」を運営していて、MS&ADインターリスク総研もメンバーの一員として活動しています。
このBERGが企画したブルーカーボン事業の視察会が、2026年5月28日と29日の2日間にわたって愛媛県宇和島市で開かれ、MS&ADインターリスク総研も脱炭素経営のコンサルティングを担当するコンサルタントが参加してきました。
視察会では1日目にセミナー、2日目に愛媛県南西部の「宇和海(うわかい)」で行われているブルーカーボン事業の現場の視察が行われました。
JBE桑江朝比呂理事長による講演


画像提供:緒方太陽氏
このうちセミナーでは、宇和海における、気候変動の影響や藻場の現状、漁業・水産業の取り組み、海の環境を守りながらその価値を経済や地域の活性化につなげる考え方「ブルーエコノミー」の推進などが紹介されました。
また2日目の現地視察では、宇和島市内で初めてブルーカーボンクレジットの認証を取得したアマモ場がある宇和海を視察して、静かな湾内に点在する養殖のいかだや、海と人の営みが近いこの地域ならではの景観を感じることができました。
一方で、ブルーカーボンクレジットの創出においては課題もあります。
まず、現状ではプロジェクト実施に伴う活動費(モニタリング調査費用など)を超えるだけのクレジット売却益が見込めないこと。そして、プロジェクト実施に伴う活動費を地域の自治体が負担できたとしても、あくまで単年で、継続的に取り組みを実施するための費用を捻出するのが難しいことです。
宇和海の視察で、持続可能な「ブルーエコノミー」の推進の実現には、地域に根差した企業、その地域を応援したい県外の企業などが活動に賛同することでクレジット需要が活性化していくことが必要だと、改めて感じました。
視察当日の宇和海の様子


画像提供:緒方太陽氏
まとめ:ブルーカーボンは新しい地域づくりのヒント
今回の現地視察を通じて印象的だったのは、ブルーカーボンが環境保全にとどまらず、地域の産業や技術開発、さらには人のつながりにも広がる取り組みだという点でした。
藻場の再生や保全は、CO2吸収の面だけでなく、水産資源や生物多様性の回復にもつながります。こうした取り組みが地域に根づいていくためには、環境価値を守ることに加え、それを継続できる仕組みを整えることも重要です。
ブルーカーボンは、自然環境の保全と地域の持続可能な発展を両立する、新しい地域づくりのヒントになり得ると感じました。
MS&ADインターリスク総研としても、こうした取り組みを支える企業や地域の皆さまにいっそう貢献できるよう活動していきたいと思います。