コラム/トピックス

【お客さま事例】三井住友海上が実践型研修で育てるカーボンニュートラル推進人財

2026.8.7

地域社会や顧客の経済成長とカーボンニュートラルの実現を支援しようと、2026年4月から新たなサービスを提供し始めた三井住友海上火災保険株式会社(以下、三井住友海上)。

そのサービスの提供にあたって、まずは社内の“仲間 (アンバサダー)”を増やそうと営業社員などを対象にMS&ADインターリスク総研の“実践型” カーボンニュートラル研修を実施しています。

三井住友海上は、カーボンニュートラルに関連する新サービスでどのようなことを実現しようとし、そのためにどのような課題を乗り越えようとしているのか。

担当者に詳しく話を聞きました。

この記事の
流れ
  • 三井住友海上がカーボンニュートラル関連の新サービスを提供する背景は?
  • 新サービス「MS&ADカーボンクレジット」とは?
  • 一番の課題は脱炭素の取り組みの“自分ごと化”
  • 知識の習得と実務との接続まで落とし込んだ実践的な研修
  • 脱炭素やカーボンクレジットを深く理解するアンバサダーを育成したい
話を聞かせてもらった三井住友海上の3人。左からビジネスデザイン部ソリューション開発グループの福原悠介氏、西嶋啓佑氏。経営企画部SX推進チームの小林美慶氏。
話を聞かせてもらった三井住友海上の3人。左からビジネスデザイン部ソリューション開発グループの福原悠介氏、西嶋啓佑氏。経営企画部SX推進チームの小林美慶氏。

話を聞かせてもらった三井住友海上の3人。
左からビジネスデザイン部ソリューション開発グループの福原悠介氏、
西嶋啓佑氏。経営企画部SX推進チームの小林美慶氏。

三井住友海上がカーボンニュートラル関連の新サービスを提供する背景は?

ーーはじめに三井住友海上がカーボンニュートラル領域の商品やサービスを強化している背景を教えてください。

小林)当社も一員となっているMS&ADインシュアランス グループ ホールディングスでは、現在社会インフラとしての保険を持続的に提供し、環境と社会の持続可能性向上と当社の企業価値向上を実現することを掲げています。

この中で「自然災害への対応」を経営重要課題の1つに定めています。背景にあるのが、気候変動や自然資本の毀損による自然災害の増加や激甚化で、これらは社会の安心や安全を脅かすだけではなく、保険の引き受け・支払いといった損害保険事業の持続可能性に直接影響を及ぼすという危機感があります。

小林氏は、SX推進チームでサステナビリティ・トランスフォーメーションをけん引し、社会課題の解決と企業の持続的な成長の実現に取り組んでいる。
小林氏は、SX推進チームでサステナビリティ・トランスフォーメーションをけん引し、社会課題の解決と企業の持続的な成長の実現に取り組んでいる。

小林氏は、SX推進チームで
サステナビリティ・トランスフォーメーションをけん引し、
社会課題の解決と企業の持続的な成長の実現に取り組んでいる。

こうしたことを踏まえて、カーボンニュートラル・脱炭素を重要なテーマの1つとして捉えています。具体的な取り組みとして自社の温室効果ガス(GHG)排出量削減に加えて、保険引受先や投融資先とサステナビリティ課題について意見交換する「サステナビリティ対話」の実施、脱炭素化に資する商品やサービスの提供を通じたお客さまや地域社会のカーボンニュートラルの移行支援に取り組んでいます。

新サービス「MS&ADカーボンクレジット」とは?

ーーその一環としてどのような取り組みをされているのでしょうか。

福原)当社は新たに「MS&ADカーボンクレジット※1」というJ-クレジット※2の創出と販売の事業を開始しました。

※1「MS&ADカーボンクレジット」のプレスリリースはこちら(2026年4月17日)
※2 J-クレジット制度:省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2などの排出削減量や、適切な森林管理によるCO2の吸収量を「クレジット」として国が認証する公的な制度。

なぜこの事業を開始したのかというと、企業ごとに政府から排出量の枠が割り当てられ、その枠の余剰・不足分を取引する「排出量取引制度(GX-ETS)」の第2フェーズが2026年4月から始まったからです。

これにより、これまでは努力目標だった企業のGHG排出量削減に向けた取り組みが、一部の企業※3で義務化されることになります。

※3 CO2直接排出量(Scope1)が直近3か年度平均10万トン以上の企業(300~400社程度)が義務化対象となる見込み。

福原氏は社会課題解決型ソリューションの企画開発を行う事業ソリューション開発グループに所属し、脱炭素やエネルギー領域の事業を担当する。
福原氏は社会課題解決型ソリューションの企画開発を行う事業ソリューション開発グループに所属し、脱炭素やエネルギー領域の事業を担当する。

福原氏は社会課題解決型ソリューションの企画開発を行う
事業ソリューション開発グループに所属し、
脱炭素やエネルギー領域の事業を担当する。

カーボンニュートラルに資するサービスを提供するという当社の方針、そしてGX-ETSによって排出量取引のマーケットができることの2点から、このビジネスに参入すべきだと考えました。

ーー損害保険会社としてJ-クレジットの創出・販売事業に参入する意義をどのように考えていますか?

福原)GX-ETSやJ-クレジットなどの制度の本質的な意義は、中小企業や個人が行っているCO2排出量削減取り組み・CO2吸収量増加取り組みをJ-クレジットという形で環境価値を見える化し、大企業がこれを購入し、さらなるカーボンニュートラル取り組みに投資が行われるという資金循環を作っていくことだと考えています。

当社は損害保険会社として日ごろの営業活動を通じて、個人と中小企業、そして大企業の双方と接点を持っていることから、この資金循環を回していく役割を担う社会的な意義があると考えています。

三井住友海上のJ-クレジット創出・販売事業による資金循環のイメージ

三井住友海上のJ-クレジット創出・販売事業による資金循環のイメージ
三井住友海上のJ-クレジット創出・販売事業による資金循環のイメージ

※イラストは生成AIを使って作成しています

一番の課題は脱炭素の取り組みの“自分ごと化”

ーーサービスの提供に合わせてMS&ADインターリスク総研の“実践型”カーボンニュートラル研修を実施しているということですが、どのような課題感から研修を行おうと考えたのですか。

西嶋)我々としては先ほど説明があったように、保険会社としてJ-クレジットの創出・販売事業に参入する意義があると考えていますが、創出と販売を仲介したからといって直接的に保険料収入につながるわけではないことも事実です。

このため、日々お客さまと接している営業担当者がこのサービスを「お客さまから最も選ばれる保険会社」として提供するサービスと認識してもらう必要がありました。

西嶋氏は、福原氏と同じグループで脱炭素とエネルギー領域のリーダーを務め、次世代モビリティ領域も担当する。
西嶋氏は、福原氏と同じグループで脱炭素とエネルギー領域のリーダーを務め、次世代モビリティ領域も担当する。

西嶋氏は、福原氏と同じグループで
脱炭素とエネルギー領域のリーダーを務め、
次世代モビリティ領域も担当する。

このサービスを環境貢献・社会貢献というイメージでとらえられてしまうと、本業とは別のテーマに見えてしまうことから、まずはカーボンニュートラル・脱炭素を“自分ごと化”し、「お客さまとの対話のテーマ」の1つとして扱えるように研修を実施することにしました。

知識の習得と実務との接続まで落とし込んだ実践的な研修

ーー研修はどのような点を重視して、全体のプログラムを検討したのでしょうか。

小林)脱炭素や気候変動などのサステナビリティのテーマが、決して現場の仕事と無関係ではないということを、受講者に具体的にイメージしてもらうことを重視しました。

そのため、受講者が自分の業務やお客さま対応とどのようにつながっているのかを理解できるよう、単なる知識の習得にとどまらず実務や事業との接続まで落とし込んだ実践的な内容にしました。

三井住友海上で実施しているカーボンニュートラル研修の主なスケジュール
日程 内容
研修1日目 脱炭素の基礎知識に関するセミナー
お客さまとの会話を想定した「MS&ADカーボンクレジット」「脱炭素支援メニュー」提案のロールプレイング研修
お客さまへの提案を設計するための「ターゲットシート」作成演習
研修2日目 脱炭素ビジネスカードゲーム研修※4
研修3日目 「ターゲットシート」を使ったお客さまへのアプローチ状況確認
アプローチ状況と成果の発表

2026年度は上記の内容を5か所で実施予定

※4 脱炭素ビジネスカード研修の詳しい内容は以下の記事をご覧ください
「脱炭素を自分事として体験できるビジネスカードゲーム研修とは?1人の行動がみんなの未来を変える」

三井住友海上のカーボンニュートラル研修の様子
三井住友海上のカーボンニュートラル研修の様子

これまでに227名の営業部門の担当者が参加し、2回目、3回目も同程度の人数が参加する予定です。

ーー研修の受講者からはどのような反応がありましたか。

西嶋)研修の中では、ターゲット別のアプローチ方法を整理したり、お客さまとの会話を想定した提案のロールプレイングをしたりしたことで、「これまであいまいだった内容が、具体的な営業イメージにつながった」という声が多く上がっています。

また、今後は実際の取引先とサステナビリティに関する対話を深めたり、自治体・金融機関・中小企業・代理店への提案活動に活かしたりしたいという声もありました。

中には、今回の研修を通じて環境省の認定制度「脱炭素アドバイザー※5」の資格を取ったという社員もいて、「脱炭素も自分の仕事に活かせる」という空気感が醸成できつつあるとも感じています。

※5 脱炭素化のアドバイスや実践支援を行う人財育成を国が後押しする施策として、2023年10月に創設された制度で、能力や役割によって、ベーシック、アドバンスト、シニアの3つのレベルに分かれる。

当社グループの一員であるMS&ADインターリスク総研と本音ベースで研修プログラムの相談をできた点も大きいと話す3人
当社グループの一員であるMS&ADインターリスク総研と本音ベースで研修プログラムの相談をできた点も大きいと話す3人

研修の企画・運営をお願いしたMS&ADインターリスク総研が当社グループの一員であることから、グループの取り組みに理解があり、本音ベースで研修プログラムの相談をできた点も、受講者の納得感を得るうえで非常に大きな要因の1つだと考えています。

脱炭素やカーボンクレジットを深く理解するアンバサダーを育成したい

ーーカーボンクレジットの創出・販売事業に関する今後の展望を教えてください。

西嶋)定量的な目標としては、2030年度までの累計の取扱高40億円を目指しています。また、2027年4月には当社はあいおいニッセイ同和損保と合併し新会社ができますが、GX領域において新会社が一番に想起されるようになっていくことが定性的なゴールです。

そのためにも、この研修などを通じて脱炭素・カーボンニュートラルやカーボンクレジットのサービスを深く理解するアンバサダーとなるような人財を数多く育成して、全国各地の現場で研修を実施するなどして推進できる人が増えていくと心強いですね。

小林)全国各地の皆さんが実践された取り組みや得られた情報を集約・分析して優れた事例を横展開しながら、脱炭素を1つの戦略として事業戦略や商品・サービスなどの企業価値向上にしっかりと結び付けていきたいと考えています。

今後も、自然災害リスクの低減や地域全体のレジリエンス向上に取り組むとともに、お客さまや社会全体のカーボンニュートラルへの移行を支援し、脱炭素社会の実現を力強く後押ししていきたいと思います。

(本インタビューは、2026年6月22日に実施されたものです)

脱炭素経営は、今や企業にとって避けては通れない課題です。一方で「どこから始めればよいか分からない」「社内の意識がなかなか高まらない」「排出量の算定や報告が難しい」といった声も多く聞かれます。MS&ADインターリスク総研は、そんな貴社のお悩みを解決するため、次のようなメニューでサポートします。

  • CO2・GHG(温室効果ガス)排出量の“見える化”
  • 体験型ビジネスゲーム研修の実施
  • 専門家による実務支援
  • 組織全体を巻き込む意識改革の実現
  • 脱炭素経営がわかる・実行できるワークショップの開催

貴社の状況にあわせて最適なプランをご提供しますので、お気軽にご相談ください

会員登録でリスクマネジメントがさらに加速

会員だけが見られるリスクの最新情報や専門家のナレッジが盛りだくさん。
もう一つ上のリスクマネジメントを目指す方の強い味方になります。

  • 関心に合った最新情報がメールで届く!

  • 専門家によるレポートをダウンロードし放題!

  • お気に入りに登録していつでも見返せる。