不審者侵入と事件発生への備えとは?企業・施設が今見直すべき対策
[このコラムを書いたコンサルタント]
- 専門領域
- 自然災害、防犯
- 役職名
- リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリング第二グループ 上席コンサルタント
- 執筆者名
- 石長 賢一 Kenichi Ishinaga
2026.7.27
近年、商業施設や学校施設などにおいて、不審者の侵入から催涙スプレーの散布、殺傷事件に至るまで様々な事件が発生しています。
不特定多数の人が利用する施設では利用者の利便性を確保しようとすると、不審者の侵入や傷害事件などの発生を完全に防ぐことは容易ではありません。
それでは、どのように侵入リスクや事件の発生に備えればよいのでしょうか?MS&ADインターリスク総研の防犯対策のコンサルタントを務める石長が、対策と初動対応手順のポイントをわかりやすく解説します。
流れ
- どんな施設でも起こりうる不審者の侵入と事件発生リスク
- 不審者対応の第一歩は「前兆」を見逃さないこと
- 不審者・事件対応マニュアルを整備し、初動対応手順を明確にする
- 訓練を通じて実効性のある対応体制を構築する
- まとめ:不審者・事件対応は「侵入前の対策」と「事件発生後の対応」の両輪で考える
どんな施設でも起こりうる不審者の侵入と事件発生リスク
国内では毎年のように、商業施設や学校施設などで不審者が侵入する事件が発生しています。
2025年には、東京都内の小学校に男2人が侵入し、教職員などに重軽傷を負わせる事件が発生しました。この事件を記憶されている方も多いのではないでしょうか。
| 発生年 | 場所 | 内容 |
|---|---|---|
| 2020年 | 商業施設 | 女性が男に刺殺される |
| 2021年 | 鉄道施設 | 鉄道の車内で乗客が刃物で襲われ7人が重軽傷を負う |
| 2023年 | 学校施設 | 卒業した少年が学校に侵入し、教員を切りつける |
| 2024年 | 商業施設 | 男性がスプレーまかれたと通報、利用者が目の痛み訴える |
| 2025年 | 学校施設 | 教職員など4人が侵入してきた男2人に暴行される |
| 2026年 | 商業施設 | 男が催涙スプレーのようなものを噴射し20人以上が搬送される |
出典:報道をもとにMS&ADインターリスク総研が作成
このように、不審者による侵入事件や傷害事件などは、いつ、どこで発生するかを予測することができません。商業施設のように不特定多数の人が出入りする施設では、不審者の侵入を完全に防ぐことは困難です。
こうした施設で事件が発生した場合、現場に混乱が生じ、避難時に利用者や従業員が負傷するなど、二次被害が発生するおそれがあります。さらに、学校施設では利用者の大半が子供であるため、避難誘導は通常よりも難しくなります。したがって、いかに迅速かつ的確な初動対応を行えるかが非常に重要です。
このため、事業者の皆さまは、不審者の侵入事件や傷害事件などへの未然防止策を講じると同時に、事件が発生した場合に備える必要があります。
不審者対応の第一歩は「前兆」を見逃さないこと
不審者の侵入事件等が起きることを前提に備えるにあたっては、日ごろから「不審者をどのように発見するのか、事件が発生した場合、どのように対応するか」を明確にしておくことが重要になります。
特に、子どもや女性の来訪が多い施設では「前兆事案」を見逃さないことも大切です。前兆事案とは、子供や女性を対象とした性犯罪等の前兆とみられる、声掛け、つきまといなどの行為を指します。これには、刑罰法令に触れない程度のものも含まれます。
施設の周辺の徘徊、特定の利用者への執拗な関心、写真撮影といった行為など、1つ1つは直ちに問題行動に見えなくても、このような行為が重なることで、不審者の侵入や傷害事件などが発生する前兆となり得ます。
こうした前兆を確実に把握するためには、次のような点を準備しておくことが有効です。
- 「不審者かどうか」を個人の判断にゆだねない
- 情報共有ルールを整える
- 違和感を組織で蓄積する仕組みを作る
不審者・事件対応マニュアルを整備し、初動対応手順を明確にする
前兆事案を把握できたとしても、その後の対応手順が定まっていなければ、事件を未然に防げないおそれがあります。また、事件が発生した場合には、二次被害を防止し、速やかに警察へ引き継ぐことが必要です。
そのため、施設の特性に応じた不審者・事件対応マニュアルを作成し、関係者間で「誰が」「いつ」「何をするか」を明確にしておくことが重要です。さらに、マニュアルに沿った手順や知識を適切に身に付け、誰もが同じ水準で安定して対応できるようにすることも重要です。
マニュアルに盛り込む項目としては、次のようなものが挙げられます。
- 不審者発見時の報告先
- 緊急連絡体制
- 110番通報の判断基準
- 犯人の隔離方法・場所
- 利用者や児童・生徒の避難誘導方法
- 現場対応者の役割分担 など
訓練を通じて実効性のある対応体制を構築する
不審者の侵入や事件の発生はいつ起こるかわからないものの、発生頻度が高くないことも事実です。その一方で、実際にそれらの事件が発生すると、想定外のことが起こる可能性があります。
こうしたことから、マニュアルを作っただけでは、いざというときに適切に対応できないおそれがあるため、定期的に訓練を実施することで対応能力を高めていく必要があります。
実際に、学校施設では不審者対応マニュアルを整備したり訓練を実施したりしていたことで、被害を最小限に抑えられた事例もあります。
訓練の実施にあたっては、次のような点を確認しておく必要があります。
- 情報共有の手順
- 不審者・犯人の誘導手順
- 避難誘導の動線
- 役割分担
- 警察到着までの対応 など
そして特に重要となるのが、訓練後の「振り返り」です。
情報伝達に問題がなかったか、判断に迷った場面はなかったか、マニュアルに不足はなかったかなどを振り返り、課題点や改善点を洗い出します。振り返りを踏まえて体制を見直すことで、実際の緊急時に対応できるようになります。
まとめ:不審者・事件対応は「侵入前の対策」と「事件発生後の対応」の両輪で考える
商業施設や学校施設などで不審者の侵入や傷害事件などが発生した場合、死傷者が出るだけでなく、その後の風評被害が生じることで、長期間にわたって悪影響を及ぼし続ける可能性があります。
被害を最小限に抑えるためには、マニュアルの作成などの「侵入前の対策」と訓練を通じて会得する「事件発生後の対応」の両輪で考える必要があります。
不審者の侵入や事件の発生に備えるためには、次の3つの視点が重要です。
- 前兆を見逃さない
- 不審者・事件対応マニュアルを整備する
- 定期的な訓練を実施し、継続的な見直しを行う
万が一の事態に備えて、平時から実効性のある体制づくりを進めていきましょう。
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