令和8年熊本地震の概要および被害状況【災害リスク情報<号外>(2026年8月)】
[このレポートを書いたコンサルタント]
- 会社名
- MS&ADインターリスク総研株式会社
- 部署名
- リスクマネジメント第一部
- 執筆者名
- 主任コンサルタント 野中 香歩 Kaho Nonaka
2026.8.3
2026年7月28日16時27分頃、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、熊本県宇城市(うきし)・氷川町(ひかわちょう)で震度7、北陸地方から九州地方にかけて震度1~6強の揺れを観測しました。
被害に遭われた皆様には、心からお見舞い申し上げます。
本レポートでは、今回の熊本地震の概要および被害状況について報告します。なお、本レポートは2026年7月29日15時時点の情報に基づいて作成しています。
1. 地震の概要
(1) 震度分布
2026年7月28日16時27分頃、熊本県熊本地方で震源深さ16km、マグニチュード(以降、Mと記す)7.1の地震が発生した。本地震による各地の震度分布を図1に示す。本地震では、熊本県の宇城市(うきし)・氷川町(ひかわちょう)で震度7を観測したほか、北陸地方から九州地方にかけて震度1~6強の揺れを観測した1)。
(2) 津波の観測状況
本地震では、7月28日16時29分に有明・八代海において津波注意報が発表されたが、津波は観測されていない。ただし、今後海域の活断層で地震が発生した場合には津波発生の可能性も高まるため注意が必要である。
(3) 長周期地震動の観測情報
本地震では、図3に示すとおり、熊本県熊本で長周期地震動階級4、熊本県天草・芦北で 長周期地震動階級3が観測された。長周期地震動階級3、4が観測された地域の高層ビルの高層階等では、「立っていることが困難になる」、「キャスター付き什器が大きく動く」、「固定していない家具が移動することがある」、「固定が不安定な家具は倒れることがある」、「間仕切壁などにひび割れ・亀裂が入ることがある」といった現象が発生した可能性がある。
2. 熊本地方の地震
(1) 地震の発生メカニズムと震源断層
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気象庁の速報によると、本地震の発震機構(発生メカニズムは、2016年4月16日に発生した熊本地方の地震と同じく北北西ー南南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型(図4)で、地殻内で発生した地震である。
今回の地震活動域付近には布田川断層帯・日奈久断層帯が存在しており、日奈久断層帯の3つの区間(高野-白旗区間、日奈久区間、八代海区間)のうち、主に高野-白旗区間及び日奈久区間に沿って震源が分布している。7月28日 16時27分に発生したM7.1の震源断層は、日奈久断層帯の日奈久区間の北東部及び高野-白旗区間の一部に及んでいると考えられる。
図5に断層の位置と、本地震及び過去に発生した地震の震央を示す。本地震は 2016年4月の熊本地震が発生した日奈久断層帯に沿って発生していると考えられる。
(2) 本地震前後の地震活動状況
熊本県熊本地方では平成28年(2016年)熊本地震以降、地震活動が活発化しており地震の発生回数が増加傾向にあった。図6は2000年10月1日以降の地震活動を示したものであり、薄青色は2016年4月14日21時以前、灰色は2016年4月14日21時以降、赤色は2026年7月28日16時27分以降の地震を示している。これを見ると2016年4月14日21時以降の地震活動域は布田川断層帯、日奈久断層帯 付近に集中しており、今回の地震の震央周辺で地震活動が活発となっている。28日以降の余震活動は高野―白旗区間から日奈久区間に沿って長さ約50kmにわたって分布している。
図7に本地震発生後の地震発生回数を示す。2026年7月28日16時27分の最大震度7の地震以降、7月29日16時時点で震度1以上の地震観測回数は200回に及ぶ3)。余震の発生状況は2016年熊本地震と同程度となっている。
※2000年10月1日~2026年7月29日13時00分、深さ0~20km、M2.0以上
(3) 熊本県の活断層
熊本県に被害を及ぼす地震は、主に陸域や沿岸部の浅い場所で発生する地震と、日向灘など東方の海域で発生する地震である。陸域の浅いところでこれまでに発生した被害地震は、主に布田川断層帯・日奈久断層帯に沿う地域などで発生している。2016年4月の熊本地震および今回の地震も布田川断層帯・日奈久断層帯付近で発生している。
布田川断層帯は、阿蘇外輪山の西側斜面から宇土半島の先端に至る活断層帯で、東北東 西南西方向に延び全体の長さは約64kmであり、布田川区間、宇土区間、宇土半島北岸区間の三つに区分される。日奈久断層帯はその北端において布田川断層帯と接し八代海南部に至る活断層帯であり、全体の長さは約81km、北東から南西方向に高野―白旗区間、日奈久区間、八代海区間の三つに区分される。
政府の地震調査委員会によると、10年前の熊本地震は布田川断層帯や日奈久断層帯の北側が動いて起き、そのときと比べ、今回の地震活動は南西側で日奈久断層帯に沿うように起きたとみられている。今回の震源断層は日奈久区間の北東部と高野白旗区間の一部の計約30kmであり、日奈久区間にはなお割れ残りがあるため、将来的に地震を引き起こす可能性は十分あるとされている。
3. 被害状況
(1) 被害概要
総務省消防庁の発表9)によると、7月30日6時30分時点で、熊本県、福岡県、大分県、鹿児島県で死者12名、重傷者12名、軽傷者65名の人的被害(熊本県の「調査中」を含まない)が発生しており、住家被害では全壊1棟および一部破損5棟が確認されている。
ライフライン、企業の被災・復旧状況の概要について、それぞれ表1、表2に概要をまとめる。
| 項目 | 状況 |
|---|---|
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道路6) 7月29日14:00時点 |
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鉄道6) 7月29日14:00時点 |
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航空6) 7月29日14:00時点 |
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電力6) 7月29日14:00時点 |
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ガス8) 7月29日14:00時点 |
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油槽所、SS 7月30日6:00時点 |
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水道6) 7月29日14:00時点 |
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通信7) 7月30日6:00時点 |
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その他6) 7月29日14:00時点 |
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| 業種 | 被災状況 | 対応状況 |
|---|---|---|
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全般 7月29日13:00時点 |
熊本県には半導体をはじめ、産業の主要な生産拠点を持つ企業において、建物や設備の損傷等の被害が発生しているほか、部品の供給遅れ等の物流状況を踏まえ操業停止を行っている。多くの企業がサプライチェーンを含め、被害状況や安全性を確認している段階であり、再開の見通しはたっていない。 | - |
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小売業 7月30日時点 |
ショッピングセンターで地震後に爆発が発生し、死者が発生 | 爆発の原因を調査中 |
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製造 7月30日時点 |
生産拠点内の煙突が倒壊し、死者が発生し、操業を停止 | 被害状況につき調査中 |
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半導体 7月30日時点 |
A社 熊本県内の2工場で壁面の亀裂や一部漏水、天井パネルの落下や壁面のひび割れが発生し、操業を停止 B社 熊本県内の1工場で操業を停止 |
被害状況につき確認中 |
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自動車 7月30日時点 |
A社 福岡県の生産拠点で部品供給遅れにより生産停止 B社 福岡県の3工場にて操業停止 |
操業再開時期を検討中 |
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行政 7月30日時点 |
免震ダンパーの損傷 | 耐震性能を確認中 |
(2) 揺れによる被害
今回の地震では、7月30日6時30分時点の総務省消防庁によれば9)6棟の住家被害が発生している。ただし、各種報道によれば震源に近い八代市・氷川町を中心に他にも倒壊被害が発生していると見られており、八代市では瓦葺木造建築の神社拝殿の倒壊、氷川町では瓦葺木造建築の住宅の倒壊が報告されている。
建物被害を大きくする要因として、建物の耐震性が挙げられ、いわゆる旧耐震基準(昭和56年5月以前)の建物は新耐震基準(昭和56年6月以降)に比べて被害を受けやすいことが指摘されている。
例えば2016年熊本地震の被害調査結果10)では、旧耐震基準の木造建築物の倒壊率は新耐震基準の倒壊率と比較して顕著に高くなっている。熊本県14)によれば、 平成29年より耐震改修促進計画を実施し、令和7年までの 10年間で耐震化率を13.5ポイント上昇させた。令和8年3月時点での住宅の耐震化率は89.5%と 日本全国の耐震化率90%と同程度となっているが、今回の地震の震源に近い阿蘇、八代、水俣・芦北、球磨及び天草地域では耐震化率75%未満と耐震化率が低い傾向にある。建物被害については今後詳細な調査が実施されるとみられるが、耐震化率が低い地域では大きな被害になる可能性がある。
(3) その他 被害
国土交通省11)によると熊本県の八代港および水俣港で液状化、宮崎県で2件の土砂災害(人的・人家被害なし)が確認されている。また、熊本県八代市内の複数の工場で液状化や地盤沈下が発生している。
土砂災害においては、地震時に崩壊しなかった斜面でも、地震の揺れにより脆くなって崩壊リスクが高まっている場合があることから、普段なら崩れないような雨量の降雨や規模の小さい余震でも斜面が崩壊する可能性が高いことに注意が必要である。なお、今回の地震で大きな揺れを観測した3県25市町村では、各県と各気象台が共同で発表する土砂災害警戒情報の発表基準について、通常基準より引き下げた暫定基準を設けて運用している。
| 対象の県 | 通常の基準に対する暫定基準の割合 |
暫定基準を設ける対象の市町村 (市町村内で発表対象区域を分割している場合は、その区域) |
|---|---|---|
| 熊本県 | 7割 | 宇城市、氷川町、熊本市、八代市西部、宇土市、美里町、益城町、合志市、大津町、西原村、御船町、上天草市、芦北町、嘉島町、甲佐町 |
| 8割 | 八代市東部、山鹿市、菊池市、菊陽町、水俣市、天草市、津奈木町 | |
| 長崎県 | 8割 | 南島原市 |
| 鹿児島県 | 8割 | 薩摩川内市、さつま町、長島町 |
また、総務省消防庁の発表9)によると、7月30日6時30分時点で、10件の火災が発生したと報告されている。
4. 今後の留意事項および企業が取るべき地震対策
今回発生した地震は、2016年4月の熊本地震と同様に布田川断層帯や日奈久断層帯に沿っており、2016年4月の熊本地震の割れ残りのずれによるものと見られている。今回の震源断層は日奈久区間の北東部と高野―白旗区間の一部であり、日奈久区間にはなお割れ残りがあると推測されている。2016年4月の熊本地震でも14日に益城町で震度 7を観測した後、16日にも西原村で震度7を観測している事例があり、大地震発生から1週間程度の間に同程度の地震が続発する可能性は大いにあると考えられている。そのため、地震発生から 1週間程度は最大震度7程度の地震に注意する必要がある。
8月5日にかけて最高気温35度以上の猛暑日が予測されており、特に8月3日は最高気温が40度の酷暑日となる見込みである(図10)。気温・湿度の上昇に加え、避難生活や復旧作業等による生活リズムの乱れにより熱中症リスクが高まる。また、災害時にはインフルエンザやノロウイルス等の感染症リスクも高まるため、健康管理にも注意する必要がある。
台風13号(ドルフィン)は、30日午後3時現在には、ウェーク島近海にあって、1時間に約20キロの速さで西北西へ進んでいる(図11)。8月1日午後3時の予報では、猛烈な勢力を維持したまま、南鳥島近海に達し、その後、3日午後3時の予報では、非常に強い勢力で小笠原近海に達する見込みである。九州地方に影響が出るおそれがあるため、今後の台風進路に注視し、台風への備えも必要である。
以上を踏まえ、今後の地震活動に対する留意事項と企業が取るべき地震対策 について以下にまとめる。
(1) これまでの地震活動及び地殻変動の状況を踏まえると、熊本地方の周辺では、一連の地震活動は当分続くと考えられており1)、引き続き強い揺れ、津波などに警戒を続ける必要がある。
(2) 揺れの強かった地域では、家屋の倒壊や土砂災害などの危険性が高まっている。地震により斜面・堆積土砂が不安定化している状況で、8月3日の週は非常に強い台風第13号が日本付近を通過する可能性があるため、今後の地震活動に加え、台風の進路予報および風雨の状況に十分注意する。
(3) 熊本県では、8月5日にかけて最高気温が35度以上の猛暑日となる見込みである。最高気温が40度の酷暑日も予想され、危険な暑さがしばらく続くため、熱中症に注意する。
(4) 熊本地震に関する情報に対して、特にインターネット上にはデマや虚偽の情報も溢れている。情報に接した際は、情報源を確認したり、行政や報道機関の情報を調べたりするなど、冷静に対応する。
【参考文献】
- 気象庁 令和8年7月28日16時27分頃の熊本県熊本地方の地震について https://www.jma.go.jp/jma/press/2607/28a/kaisetsu202607281730.pdf
- 地震調査研究推進本部 正断層・逆断層・横ずれ断層
https://www.jishin.go.jp/resource/terms/tm_fault/ - 気象庁「令和8年熊本地震」について(第4報)
https://www.jma.go.jp/jma/press/2607/29a/kaisetsu202607291500.pdf - 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 令和8年熊本地震の評価
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2026/20260728_kumamoto_1.pdf - 地震調査研究推進本部 熊本県の地震活動の特徴
https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_kyushu-okinawa/p43_kumamoto/ - 熊本県 令和8年熊本地震に係る第4回災害対策本部会議
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/315507.pdf - 総務省 令和8年熊本地震に関する被害状況等について(第10報)
https://www.soumu.go.jp/main_content/001084541.pdf - 一般社団法人日本ガス協会 熊本地方を震源とする地震における都市ガスの供給状況、今後の復旧見通し、応援隊の派遣について
https://www.gas.or.jp/kinkyu/30888e1dac704a85a35c705f484faaac.pdf - 総務省消防庁 令和8年熊本地震による被害及び消防機関等の対応状況(第18報)
https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/20260728kumamotojishin18.pdf - 熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書
https://www.nilim.go.jp/lab/hbg/0930/pdf/text.pdf - 国土交通省 令和8年熊本地震による被害状況等について(第8報)
https://www.mlit.go.jp/common/002014404.pdf - 国土交通省 令和8年7月28日16時27分頃の熊本県熊本地方の地震に伴う土砂災害に関する警報等の暫定的な運用について
https://www.mlit.go.jp/report/press/sabo01_hh_000214.html - 熊本地方気象台 令和8年熊本地震今後の気象見通し
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/315522.pdf - 熊本県 熊本県建築物耐震改修促進計画 概要
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/307627.pdf
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