【お客さま事例】品川区「初動で被害の全体像を把握し、区民の生活再建を加速したい」『調査量エスティメータ』を活用した取り組みとは?
2026.9.10
2025年9月に豪雨被害に見舞われた東京都品川区。下水道や排水施設の処理能力を超える雨により内水氾濫が発生し、区全域で浸水被害が出ました。
この経験から品川区では、早期の被害推定を行うことができるMS&ADインターリスク総研の『調査量エスティメータ』を導入。初動から被害の全体像を把握して、現地調査とり災証明書の発行業務を効率化し、区民の生活再建を加速することを目指しています。
品川区は災害の経験によってどのような課題に直面し、その課題をどのように解決しようと取り組んでいるのか。防災まちづくり部防災課の羽鳥匡彦課長に話を伺いました。
流れ
- 2025年9月の豪雨災害で、区全域で浸水被害が出た品川区
- 初動の段階でもっと被害の全体像を把握したい
- SNSに投稿された被害情報から早い段階で被害発生エリアを推定
- 課題解決に取り組み住民の生活再建を早めていきたい


写真中央が品川区防災まちづくり部防災課の羽鳥匡彦課長。
同課の日下梨里子氏(左)と二田佳奈恵氏(右)も同席。
2025年9月の豪雨災害で、区全域で浸水被害が出た品川区
ーーはじめに品川区の防災の取り組み状況について教えてください。
羽鳥)品川区では、全庁で災害に対応するという方針を掲げています。私たち防災課だけではなく、災害対策本部を立ち上げた際には、事前に割り振った役割に応じて、それぞれの部署が災害対応に取り組む体制を整えています。
2025年9月11日には豪雨災害が発生して、区全体で大きな被害が出ました。このため、発災直後から見舞金の支給、浸水した家屋などの消毒、災害廃棄物の無償回収などの支援策を実施しました。その後は、止水板設置への助成などの豪雨対策の強化にも取り組んでいます。
2025年9月11日に品川区で発生した豪雨災害


画像提供:品川区
ーー2025年9月の大雨による被害について、詳しく教えていただけますでしょうか。
羽鳥)気象庁から「大雨警報(浸水害)および洪水警報」が発表 されて大雨が降り、区全域で次のような被害が出ました。
| 人的被害 | なし | |
|---|---|---|
| 浸水被害 | 床上浸水 | 513件 |
| 床下浸水 | 307件 | |
| 事業所等 | 359件 | |
| その他の被害 (区全域で発生) |
|
|
広範に被害が出た原因は、内水氾濫です。品川区のような都市では、河川の堤防決壊よりも下水道や排水施設の処理能力を超える雨による内水氾濫のリスクが高いと考えています。
一定の雨量を超えると氾濫を防ぐことができないので、災害が起きたときにいかに早く状況を把握して対策を打っていけるかということの重要さを、改めて痛感しました。
初動の段階でもっと被害の全体像を把握したい
ーーその時の災害で品川区としてどのような点に課題を感じたのでしょうか。
羽鳥)結果的に区全域で被害が発生していることがわかったのですが、発災当初、区内でどのくらいの被害が出ているのかがなかなか見えなかった点です。
被害の情報が入るたび調査班を現地に派遣して、地図上に被害状況をプロットしていくことで、被害が区全域にわたって発生していることが見えてきました。ここまで被害が広がっているということは、初動の段階で把握するのは困難でした。
2025年9月の大雨で発生した内水氾濫


画像提供:品川区
ーー初動の段階で被害の全体像を把握したかったのはどのような理由からでしょうか。
羽鳥)全体状況を少しでも早く把握できていれば、被害が集中しているところにリソースをもっと効率よく投入することができたのではないかと考えているからです。
被害の情報があった場所に調査班を派遣し、現地に到着して報告が上がってくるまでに1、2時間はかかります。すべての調査班から報告が上がってきて、全体像が見えてくるまでに3時間ほどはかかったかと思います。
調査班を派遣するためには、人員、車両、その他機材を確保する必要があるのですが、被害の情報があるたびに派遣していると、より大きな被害が出ている場所が明らかになったときに対応できなくなる恐れもあります。
早い段階で全体状況を把握して、優先度の高いエリアから調査班を派遣できればより効果的な対応が可能になると考えています。
実際、2025年9月の豪雨対応では「もっと早く被害の全体像がわかっていれば、行政対応をより効率的に進められたのではないか」と感じた場面がありました。
品川区では、現地で被害状況を確認する際に、被災された区民の皆さまに「見舞金」を直接お渡ししてきました。今回も当初は被害が局地的だと考えて、従来通り一軒一軒訪問して直接お渡ししていました。


ただ、実際には被害が区全域に及んでいました。もし初動の段階で被害の全体像や規模を把握できていれば、見舞金の支給は申請方式に切り替えて、職員を被害認定調査やほかの災害対応に重点的に配置するといった判断ができたかもしれません。
SNSに投稿された洪水情報から早い段階で浸水発生エリアを推定
ーーそうした課題に対して『調査量エスティメータ』はどのように活用できると感じたのでしょうか。
『調査量エスティメータ』の主な機能
- AI被害推定により発災直後でも精度の高い被災件数を提示
- 調査に必要な要員数・実施スケジュールなどの情報をまとめた調査計画書(ひな形)の提供
- 被害認定調査マネジメント研修の提供
- SNSに投稿された洪水情報を分析し浸水発生エリアを推定(オプション)
羽鳥)品川区として特に活用できそうだと考えたのが、SNSに投稿された洪水情報から浸水発生エリアを推定できる機能です。
実際に、過去の災害のデータを使ったデモンストレーションの画面を見た際に、被害が集中しているところが一目でわかりました。
区長以下の上層部に被害状況を視覚的に伝えることができるようになれば、的確な判断につなげられると感じました。
SNS情報から浸水発生エリアを推定する機能のデモ画面


気象庁の防災気象情報をトリガーとして初動を立ち上げて、『調査量エスティメータ』で被害が集中していると考えられるエリアを確認し、優先順位を決めて調査班を派遣しようと考えています。
この機能を活用できれば、初動対応だけではなく、その後のり災証明書の発行業務のスピードアップにもつながると考えています。
早い段階で、エリアごとの被害の概況がつかめるようになれば、その後の被害認定調査に向けた人員確保や、調査エリアの優先順位付けが従来よりも前倒しできるようになり、区民の皆さんの生活再建を加速させることができると考えています。
課題解決に取り組み住民の生活再建を早めていきたい
ーー品川区として、今後の災害対応について考えていることはありますか。
羽鳥)今回の豪雨では、災害廃棄物の処理についても課題を感じました。
本来、事業系廃棄物や家電リサイクル法の対象となる家電製品については自治体による収集は行わず、また、浸水した家具などを災害廃棄物として無償回収する場合には、被害認定調査を経て発行されるり災証明書の提示が必要となります。
しかし、その手続きを待っていると1か月近くかかることもあり、その間に廃棄物が住宅周辺や道路沿いに積み上がってしまいます。
そこで今回は特例として、り災証明書の発行を待たず、事業系や家電も含め 清掃事務所が順次無料で回収する対応を取りました。結果として約700件、161トンの災害廃棄物を回収しました。
今回の経験を踏まえて、災害廃棄物が「どのくらい発生しそうか」をできるだけ早く把握する必要もあると感じています。発生する災害廃棄物の量が比較的少なければ、通常の収集体制を強化しながら順次回収することで対応できます。


一方、廃棄物の量が大きいと見込まれる場合は、仮置き場の開設や収集車両・人員の増強、民間事業者や他自治体への応援要請など、より大規模な処理体制を早期に立ち上げる必要があります。
今回の豪雨では既存の体制で対応できる規模でしたが、首都直下地震のような大規模災害では、あらかじめ想定していた仮置き場だけでは足りない可能性もあります。そのため、災害発生直後に「どの程度の災害廃棄物が発生しそうか」というボリューム感を早期に把握できれば、必要な処理体制を迅速に判断・構築でき、災害廃棄物の滞留を防ぐだけでなく、住民の生活再建も早めることにつながると考えています。
(本インタビューは、2026年7月13日に実施されたものです)
【自治体さま向け】被害認定調査の効率化を可能にするデジタルソリューション
MS&ADインターリスク総研では、品川区さまに導入いただいた「調査量エスティメータ」も含めて、自治体が被害認定調査を効率的に実施できるデジタルソリューション「被害認定調査DXパッケージ」をご提供しています。
当社が積み上げてきた多くの経験と実績に基づき、調査量の見積もりから、調査計画策定、実際の調査、職員の皆さまの研修までトータルで支援することで自治体の皆さまの負担を軽減し、迅速なり災証明書発行業務を支援します。
【自治体さま向け】災害廃棄物量推計パッケージ
品川区さまがインタビューの最後に触れていた災害廃棄物に関して、当社では名古屋大学の平山修久准教授の指導のもと、環境省の推計手法を基に独自の改良を加えた「災害廃棄物量推計サービス」を開発しました。
本サービスにより、自治体による災害廃棄物処理計画の実効性を向上させ、初動対応期における業務効率化に貢献します。