グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット(GNPS)2026熊本で発信したMS&ADグループの取り組みとは
2026.9.24
2026年7月14日から2日間にわたり熊本市で開かれた「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026」。
自然(生物多様性)の損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」を目指す、この国際会議には、MS&ADインシュアランス グループ(以下、MS&ADグループ)からも関係者がパネルディスカッションに登壇するなどしました。
今回は、パネルディスカッションや関連イベントで紹介された展示・ソリューションを通して、MS&ADグループが自然資本の保全と再生を、防災・減災や地域づくり、企業の持続可能な成長へどのようにつなげようとしているのかをご紹介します。
流れ
- MS&ADグループがネイチャーポジティブに取り組むわけとは?
- MS&ADグループ社長CEO舩曵氏「自然を守るだけではなく、価値創造につなげる」
- 熊本から始まるウォーターポジティブの実践
- 自然の力を生かす「グリーンレジリエンス」という考え方
- 水資源マネジメントに資する新ソリューションの紹介も
- まとめ:自然の力を生かし、災害に強く持続可能な地域をつくる
MS&ADグループがネイチャーポジティブに取り組むわけとは?
気候変動による自然災害の増加は、世界各地で多くの被害を引き起こし、社会のサステナビリティを揺るがすと同時に、保険という形で災害時の補償を提供するMS&ADグループにとっても大きな影響があります。
MS&ADグループは、自然災害のリスクを低減し、社会全体のレジリエンスを高めるためにも、気候変動への対応とともに、「ネイチャーポジティブ」に向けた自然資本の保全・回復に取り組んでいます。
また、ネイチャーポジティブの目標を含む生物多様性枠組み(GBF)の2022年の採択や、2023年のTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)による開示提言正式版の公表など、国際的に企業がネイチャーポジティブに取り組む必要性が高まっています 。
こうした流れを踏まえて、企業のネイチャーポジティブに向けた取り組みの支援と日本国内の機運を醸成していく一環として、MS&ADグループはさまざまな企業や団体とのパートナーシップの取り組みも進めています。
例えば、MS&ADグループは2010年に日本・愛知で開催された生物多様性条約第10回締約国会議に先立ち、「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」の設立に関与し、日本のビジネスにおける生物多様性への普及啓発や取り組みの推進に貢献をしてきました。現在では、会員企業が64社まで拡大をしています。
また、2023年2月には、三井住友フィナンシャルグループ、日本政策投資銀行、農林中央金庫などの金融機関と共同で企業のネイチャーポジティブ活動を支援するアライアンス「FANPS(Finance Alliance for Nature Positive Solutions)」を立ち上げました。
MS&ADグループ社長CEO舩曵氏「自然を守るだけではなく、価値創造につなげる」
こうした中、熊本市で開かれたグローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026。初日の14日にメインホールで行われたパネルディスカッション「ネイチャーポジティブの社会・経済的意義」には、MS&ADグループの取締役社長でCEOの舩曵真一郎氏も登壇しました。


パネルディスカッションに登壇した舩曵真一郎氏
(右から1人目・スクリーンにも投影)
この中で舩曵氏は保険会社の立場から、自然資本の損失が企業活動や経済に及ぼす影響について説明しました。舩曵氏によると、日本では地震による被害を除くと自然災害の中でも台風による被害額が最も大きかったが、1990年代後半からは大雨による水災被害が増加し、ここ10年で見た場合、直近5年とその前の5年では支払保険金が5倍以上に増えているということです。
その要因として舩曵氏が指摘したのは、気候変動による降雨量の増加と市街化の急速な進展で、都市部での災害リスクがこれまで以上に高まっていると説明しました。
また、世界でも暴風雨による保険金の支払いが年間2兆円規模に上り、その結果、保険料の上昇や災害への備えが不十分な状況(プロテクションギャップ)も生じているといいます。
その上で、舩曵氏は「災害による被害を減らすためには、社会全体で減災に取り組む必要があり、金融機関も重要な役割を果たすべきだ」と強調しました。続けて「自然を守るだけではなく、価値創造につなげる視点も欠かせない」と述べて、ネイチャーポジティブの実現には自然資本の保全と経済価値の創出を両立させることが重要だとの考えを示しました。
この考え方は、熊本ウォーターポジティブ・アクションやこのあと触れるグリーンレジリエンスなど、MS&ADグループのネイチャーポジティブの取り組みに共通する考え方です。
熊本から始まるウォーターポジティブの実践
サミットと並行して開催された展示会「NATURE TECH!ステージ」では、MS&ADグループもメンバーとして協働している「熊本ウォーターポジティブ・アクション」に関して、一般社団法人「熊本ウォーターポジティブ・デザインセンター」(以下、KuWP)設立のキックオフイベントも開かれました。
KuWPのキックオフイベントの様子


KuWPは、企業や団体のウォーターポジティブの取り組みの実行、効果の定量的評価、それにPRまでを一気通貫で支援、クレジット化も含む取り組みのメリット創出を目指すため、熊本県立大学、熊本大学、肥後銀行、サントリーホールディングス、MS&ADグループが2026年4月に設立した組織です。
イベントでは、自然の機能を生かして地下水の保全や水循環の健全化、防災・減災、生物多様性保全などの社会課題の解決を目指す「グリーンインフラ」の一つである「雨庭(あめにわ)」が紹介されました。
雨庭は、雨水を一時的に受け止めて地中に浸透させる「庭」で、地下水の涵養に役立つとともに、雨水が短時間に河川や排水路へ集中しないようにする「流出抑制」を通じて、浸水リスクを軽減することができます。
イベントでは、熊本ウォーターポジティブ・デザインセンター(KuWP)が、こうした雨庭の普及啓発や導入支援などを担っていくことが紹介されました。
イベントで投影された雨庭の資料


出典:一般社団法人 熊本ウォーターポジティブ・デザインセンター
「熊本の未来を、共に育む 熊本ウォーターポジティブ・アクション」
その上で、熊本地域におけるグリーンインフラの普及と社会実装を加速するため、活動の趣旨に参加する「一般会員」、地下水の涵養に取り組む「宣言会員」、雨庭の施工を担う「技術会員」、KuWPの運営に参加する「共創会員」を設けているということで、イベントでは広く参加を呼びかけました。
雨庭の普及や効果の定量評価を通じて、自然の力を生かした地域づくりを社会実装していくことが、KuWPの役割です。これは、ネイチャーポジティブを地域で実践する具体例の一つと言えます。
自然の力を生かす「グリーンレジリエンス」という考え方
サミット2日目の15日に開かれた公式サイドイベント「流域デジタルツイン2026『理想的な水とビジネスのエコシステムを考える』」では、MS&ADグループのMS&ADインターリスク総研で自然資本領域のグループ長を務める金子祐らが登壇し、流域の水資源を持続可能に管理して、ビジネスとともに発展する仕組みについて意見を交わしました。


公式サイドイベントで登壇するMS&ADインターリスク総研の金子祐
この中では、MS&ADグループが取り組む「グリーンレジリエンス」の推進を紹介しました。グリーンレジリエンスとは、自然の恵みを生かし、生物多様性を守りながら、脱炭素化を進め、自然災害の被害をやわらげ、その魅力で地域も活性化する好循環を生み出すという考え方です。
また、近年、気候変動に伴って自然災害が増え、特に水害リスクが拡大していることを踏まえ、自然の多様な機能を活用して防災・減災と地域の魅力向上を同時に進める必要性を説明しました。
その上で、グリーンインフラや自然を活用した解決策(NbS: Nature-based Solutions)を基盤に、自然を保全し、生物の多様性を守りながら、脱炭素、防災・減災、地域活性化を一体的に進めることが、災害に強く持続可能な社会の実現につながると述べました。
こうしたグリーンレジリエンスの考え方は、流域全体で水資源を管理する取り組みや企業向けソリューションにも共通していて、自然資本を利活用し、地域の防災や持続可能な社会づくりにつなげることを目指しています。
水資源マネジメントに資する新ソリューションの紹介も
このほかMS&ADグループは、企業の水リスク、水資源のマネジメントに資する新たなソリューションについて、サミットを取材するプレス向けに発信するとともに、並行して開催された展示会「NATURE TECH!」のブースでも紹介しました。


プレス向けにソリューションを紹介するMS&ADインターリスク総研のコンサルタント藤田嘉子
このうちMS&ADインターリスク総研が提供する、拠点の水リスク分析サービス「流域リスクレンズ」は、企業拠点の取水・排水情報に加え、流域の水の流れ、気候変動による影響、保護地域や重要自然エリアとの近接性を踏まえて、リスクをスコア化するだけではなく、実務に落とし込んだ対応策を提供するソリューションです。
- 「流域リスクレンズ」の詳細についてはこちら
また同じくMS&ADインターリスク総研の「製品による地域水資源へのポジティブ評価」は、節水製品の普及が流域の水資源に与える効果を、流域の課題も踏まえて定量的に評価するソリューションです。節水量の多寡にとどまらず、流域ごとの水ストレスや渇水発生頻度などの数値の変化を可視化し、製品が地域の水課題解決にどの程度貢献したかを科学的な根拠に基づいて示すことで、情報開示や環境PR、事業戦略への活用が可能です。
- 「製品による地域水資源へのポジティブインパクト評価」の詳細についてはこちら
今回紹介されたソリューションは、いずれも自然環境を守ることを目的とするだけではなく、企業や地域が水リスクを把握し、持続可能な地域づくりや防災・減災につなげるための実践的な取り組みです。
このほかブースでは、MS&ADグループが積極的に関わる、流域全体で雨水を管理し少しでも災害の被害を減らそうという発想に基づく「流域治水」の取り組みを紹介するパネルなども展示され、グループとして推進するネイチャーポジティブの取り組みをアピールしました。


「NATURE TECH!ステージ」に設けられたMS&ADグループのブース
ブースには多くの来場者が訪れ、「災害対策と自然環境への配慮を両立させる考え方が興味深い」「流域全体で考えることの大切さを実感した」といった感想が寄せられました。自然の力を生かしながら地域のレジリエンスを高めていくMS&ADグループの取り組みに、高い関心を持っていただけていると感じました。
まとめ:自然の力を生かし、災害に強く持続可能な地域をつくる
グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026や関連するイベントで、MS&ADグループは、自然を守ることを環境保全にとどめず、防災・減災や地域づくり、企業活動につなげるさまざまな取り組みを発信しました。
その後、2026年7月には熊本県で地震が発生し、地域のレジリエンスや自然・インフラを含めた備えの重要性が認識されました。今回紹介したKuWP、流域デジタルツイン、企業向けソリューションは、一見すると別々の取り組みに見えますが、その根底にあるのは「自然の力を生かし、災害に強く持続可能な地域をつくる」という共通の考え方です。
MS&ADグループは今後も、ネイチャーポジティブやウォーターポジティブの取り組みを通じて、自然資本の保全と持続可能な社会づくりに貢献していきます。
MS&ADインターリスク総研では、今回の記事で触れたサービスも含めて、企業の皆さまの自然関連課題への対応に資する、さまざまなサービスを紹介しました。
当社では、TNFDフレームワークなどを踏まえ、以下のような自然関連の支援メニューをご提供しています。
- TNFD対応全般の支援
- 優先地域の評価
- 事業特性に応じた依存・インパクトの評価
- シナリオ分析を含むリスク・機会評価
- 今後の取り組みや指標・目標設定方向性の検討、情報開示
- 拠点のリスクマネジメントに資する水リスクの詳細評価
- サステナビリティ推進による「価値創出プロセス」の可視化
- 製品を通じた地域水資源へのポジティブインパクトの定量的評価
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