【導入事例】国分寺市 発災直後の「災害廃棄物量が分からない」をどう乗り越えるか|「災害廃棄物量推計サービス」
2026.10.15
大規模な災害が起きると、短期間に大量の災害廃棄物が発生します。自治体には、廃棄物を一時的に集めて保管する仮置場(かりおきば)の設置や人員の配置、収集・運搬、処理先の確保などさまざまな対応が求められます。その判断の前提となるのが「どれだけの災害廃棄物が発生するのか」という情報です。
東京都国分寺市では、2025年度(令和7年度)に災害廃棄物処理計画を改定する中で、仮置場の不足という課題を改めて認識しました。一方、実際の災害時には、災害廃棄物量の推計に必要となる被害棟数を早期に把握することも容易ではありません。
そこで導入したのが、MS&ADインターリスク総研の「災害廃棄物量推計サービス」です。発災直後の情報が限られる中で、早期に廃棄物量を把握することにどのような意味があるのか。国分寺市の担当者に導入の背景と期待する効果を聞きました。
流れ
- 災害廃棄物処理計画の改定で見えてきた「仮置場不足」
- 対応体制を考える前提となる「災害廃棄物量」
- より早く災害廃棄物量を把握するために
- 「走りながら考える」災害対応を、実態に近づける
- 担当職員以外でも推計量を把握できる体制に
- 推計した「量」を、実際の処理や支援要請につなげる
災害廃棄物処理計画の改定で見えてきた「仮置場不足」
国分寺市 建設環境部は、災害時には災害廃棄物量の把握をはじめ、収集・運搬車両や処理施設の処理能力の算定、仮置場の設置などを担います。
その国分寺市は2025年度、災害廃棄物処理計画を改定。その際、想定される災害廃棄物量から必要となる仮置場の面積を算出したところ、現在確保している面積では不足することが改めて分かりました。
限られた仮置場で大量の廃棄物を受け入れるには、一定期間保管した廃棄物を処理施設へ運び、次の廃棄物を受け入れられるよう、できるだけ早く回転させていく必要があるといいます。そのため市では、収集や運搬などを担う民間事業者などに協力を求める仕組みについても検討しています。
対応体制を考える前提となる「災害廃棄物量」
実際にどの仮置場を開設し、どの程度の規模で運用するのか。どれだけの人員が必要なのか。市の処理施設だけで対応できるのか。こうした災害時の対応を考えるうえで、一つの前提となるのが、発生する災害廃棄物の量です。
一方、従来の方法で災害廃棄物量を推計するには、全壊・半壊などの被害棟数を把握したうえで計算する必要があります。
国分寺市が実際の災害対応を考える中でも、この被害棟数の把握が課題として浮かび上がったといいます。
「被害棟数を把握しないと、災害廃棄物量を推計できません。そこが 一つの課題だと考えていました」(小野木課長)
市内で大規模な災害が発生し、災害廃棄物処理に対応した経験はないという国分寺市。このため、実際に災害が発生した場合には、東京都などから災害廃棄物処理の経験がある人材の派遣を要請し、アドバイスを受けながら対応することも想定していると話します。
「職員も災害廃棄物処理については未経験なので、実際に災害が起きたときの対応は、見えないところだらけというのが正直なところです」(小野木課長)
より早く災害廃棄物量を把握するために
こうした中、国分寺市が導入したのが、MS&ADインターリスク総研の「災害廃棄物量推計サービス」です。
きっかけとなったのは、災害廃棄物処理計画の見直しを行っていた時期に、防災安全課が、災害時に被害棟数などを推計できる同社のサービス「調査量エスティメータ」を導入することになったことでした。その流れで建設環境部は「災害廃棄物量推計サービス」の説明を聞き、災害廃棄物量の把握に活用できると考えました。
「仮置場を設置するには、想定される災害廃棄物量の把握が必要です。実測値に近い推計ができるのであれば、活用したいと考えました」(小野木課長)
導入を検討する上では、価格が比較的安価だったことも後押ししました。予算要求の査定では金額も重要になるため、その点も予算が認められた理由の一つだったといいます。
また、サービスでは、独自の住宅資産データなどを用いて、発災後、数時間以内に災害廃棄物量を推計します。国分寺市では、デモや資料を通じ、東京都全体の平均値での推計ではなく、国分寺市の実態に合わせた結果となる点にも着目しました。
小野木環境課長と佐藤主任
「走りながら考える」災害対応を、実態に近づける
では、災害廃棄物量を早期に把握できることで、自治体の対応はどう変わるのでしょうか。
国分寺市が期待するのは、仮置場や人員、民間事業者との役割分担など、発災後の体制を検討する際の判断材料として活用することです。
「量が分からないと、体制の組みようもありません。量が分かれば、我々の人数で足りるのかという人的な体制や、仮置場にどれくらいの面積が必要なのかを考える参考になります。仮置場の管理・運営に必要な人数が分かれば、どこを民間事業者に頼むのかといった役割分担も考えていけるようになると思います」(小野木課長)
ただし、実際の災害対応では、災害廃棄物量が分かるまで行政が何もせずに待っているわけではありません。限られた情報から一定の想定を置き、まずは必要と考えられる体制を組んで対応を始めることになります。
いわば、「走りながら考える」必要があります。
「仮に廃棄物の量が分からなかったとしても、何もしないわけではなく、ある程度想定して体制は組むと思います。ただ、その想定が実際と合っているのか、人数や体制が足りているのかは、やってみないと分からない部分があります。それがすぐ推計で分かるのであれば、より実際の状況に合った体制に見直していけるのではないかと考えています」(小野木課長)
担当職員以外でも推計量を把握できる体制に
国分寺市がもう一つメリットとして挙げるのが、災害廃棄物の担当職員が手作業で計算しなくても、推計量を把握できることです。
災害時には、通常とは異なる業務が一斉に発生します。国分寺市でも当初、建物の被害状況などを把握したあと、担当職員が災害廃棄物量を手作業で計算することを想定していました。
しかし、サービスのデモを見たことで、そのイメージが変わったといいます。
「実際に地震が起きた後、担当職員が手作業で計算する必要があると当初は考えていました。ただ、デモを見て、廃棄物処理に携わっていない職員でも、すぐに推計量を確認できる点は、災害時には役立つだろうと感じました」(佐藤主任)
さらに「災害廃棄物量推計サービス」では、2026年9月から、家具や家電などの家財を中心とする「片付けごみ量」を明示できる機能も追加されました。
片付けごみは、解体廃棄物よりも早い段階で一般家庭から排出されることが想定され、国分寺市でも、発災後はまず片付けごみへの対応が必要になるとの認識を示していました。
推計した「量」を、実際の処理や支援要請につなげる
災害廃棄物量を把握することが、災害対応のゴールではありません。その推計量に基づいて、迅速かつ円滑に災害廃棄物の処理を行い、1日も早い復旧・復興につなげていくことが自治体に求められる役割です。
国分寺市では今後、「災害廃棄物量推計サービス」で得られた推計値を、市が利用する処理施設の能力と照らし合わせ、必要な対応を検討していく考えです。
「推計した災害廃棄物量をもとに、市が利用する処理施設で処理可能かどうかを確認し、できないのであれば、他自治体など の支援を要請する必要があります。あとは、仮置場の設置や災害廃棄物処理実行計画の策定にも活用していきたいと思います」(小野木課長)
(本インタビューは、2026年9月9日に実施されたものです)
【自治体さま向け】災害廃棄物量推計パッケージ
MS&ADインターリスク総研では名古屋大学の平山修久准教授の指導のもと、環境省の推計手法を基に独自の改良を加えた「災害廃棄物量推計サービス」を開発しました。
本サービスにより、自治体による災害廃棄物処理計画の実効性を向上させ、初動対応期における業務効率化に貢献します。