最近の医療安全に思うこと
[このコラムを書いたコンサルタント]
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- 専門領域
- 医療・福祉介護安全、品質管理(サービス業)、教育プログラム構築 ISO9001:2000審査員補
- 役職名
- 社会・法務リスク部 上席コンサルタント
- 執筆者名
- 高尾 和俊 Kazutoshi Takao
2008.4.1
近年の健康増進ブームと共に病気や医療に対する情報が、テレビや雑誌等の媒体で流され、以前にも増して私達にとって身近なものとなっています。特にここ何年かでは、医療事故についてその内容や病院名が実名報道され、どこでどんなことが起こったかをニュースで知る機会が増えました。これは、医療分野は特殊であり、私達の日常とは違う世界であるといった認識が変化し、他業態と同じように説明責任を負ったオープンな世界であると社会全体が見るようになったことによるものでしょう。
このような環境では、実名報道が病院経営に大きな影響を及ぼすことが危惧されます。そのため、事故を起こさないように、また万一起こした際には迅速に対応できるように様々な工夫を凝らす病院が多くなっています。安全衛生のレベルを計るモノサシとして外部機関によるお墨付き(第三者評価)取得への取組みを進めている病院も多く見られます。しっかりした病院ですよと対外的にアピールするために第三者評価を用いることは結構なことですが、より大切なのはその評価の内容を病院自身が真摯に受け止めたうえで患者に対する説明責任を果たすことです。
現状では、専門的で安全基準等に偏っている第三者評価は、患者が考える評価(患者満足度)とは必ずしも一致しておらず、評価の趣旨が正確に伝わっていないように見受けます。社会が、病院の選択基準を第三者評価に求めるのではなく、雑誌やインターネットでの評判に求めてしまうのは、目に見える形での良さという違ったモノサシがそこにあるからでしょう。
私は多くの医療機関にお伺いさせていただいていますが、医療の現場を知れば知るほど、日進月歩の医療の安全性確保とともに患者満足度向上の実現が大変困難であることを痛感しています。満足度はサービスを測るうえでの原点ではありますが、その向上の程度には際限がありません。したがって、満足度ではなくある一定の満足レベルでの納得度を安全性と共に向上させていくことのほうが取組みやすいと思われます。「判りやすさ」を追求し、医療現場の特殊性にとらわれることなく、一般に言われる基本的行動を忠実に実践し、対応することで納得度の向上を目指すべきでしょう。
実際に、対外的なアピールにばかり力点を置くことなく、患者に目を向け、安全性と納得度をバランス良く追求している「隠れた名店」たる病院がたくさんあります。
以上