レポート/資料

第14号 「長時間労働とメンタルヘルス」

2014.8.1

1. はじめに

2014年6月27日、厚生労働省は、2013年度の「脳・心臓疾患及び精神障害の労災補償状況」を公表した。これによれば、2013年度の精神障害に関する労災請求件数は、1,409件と過去最高を更新した。また、2013年度中に行われた精神障害に関する労災決定件数は、1,193件であり、うち支給開始の決定が行われたのは、436件(36.5%)となった。

わが国では、1983年度に初めて精神障害による労働災害の認定が行われたが、その後も、精神障害による労働災害の認定は、極めて限定的に行われてきたことを考えると隔世の感がある。2011年に厚生労働省が発表した「心理的負荷による精神障害の認定基準」は、1998年当時の労働省が公表した「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」に代わるものとして、急増する精神障害の労災請求の審査迅速化を目指して作成された新基準である。

この基準は、業務による強い心理的負荷の有無を確認するため、様々な職場での事象を網羅する形で定められている。中でも、企業の関心が高いのは、長時間労働に関する具体的な基準である。しかし、実務家の間では、長時間労働がメンタルヘルス不全を惹起する決定的な要素とは必ずしも言えないのではないかとする議論も根強い。

そこで、今回は、長時間労働とメンタルヘルス不全に関する最新の研究を紹介した上で、メンタルヘルス不全の発生抑制に向けたポイントを考える。

2. 長時間労働とメンタルヘルスの関係

前述の2011年12月26日厚生労働省労働基準局長通達「心理的負荷による精神障害の認定基準について」は、長時間労働による業務上の心理的負荷が強かったことを判定する基準として、以下の項目を挙げている。

レポートを全て見る