労働災害発生時における事業者と管理・監督者の責任について【労災リスク・インフォメーション(2014年1月)】
2014.1.1
1. はじめに
最近テレビのニュースで「お詫び」のシーンを頻繁に見かける。企業(特に誰でも知っている有名な企業が多い)が、不祥事を起こして、社長等の経営者が謝罪をしているのである。数人が深々と頭を下げている姿を見るたびに、「またか」とうんざりするほど多いのであるが、もちろん頭を下げて済む問題ではない。損害の内容にもよるが、被害者、消費者、取引先等に対する損害賠償額は相当な額になることもある。長年培われてきた企業イメージも、瞬時にして大幅ダウンし、ブラック企業の烙印を押されてしまい、短期間で倒産、解散してしまう企業もある。
労働災害においても、損害賠償訴訟の件数が増加し、しかも高額判例が多く出されている。死亡事故や重度の後遺障害が発生した場合は、2億円を超えることもあり、正しく企業にとって存亡の危機に陥ることになってしまう。
本稿では、労働災害が発生した場合の責任は誰にあるのか、どのような責任があるのか、どのように対処すれば良いのか、等々について紹介する。
2. 使用者と事業者
労働基準法では、第10条に「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為するすべての者をいう」と規定し、「使用者」との表現をしており、また労働安全衛生法第 2条3号では「事業者:事業を行う者で労働者を使用する者」と規定し、「事業者」との表現を用いている。したがって、「事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為するすべての者」を含んでいる分、労働基準法の使用者のほうが、労働安全衛生法の事業者よりも広い概念であるものと考えられる。(下図参照)
何かの事業を行う上で第三者に損害が発生した場合、その事業により利益を受ける主体に責任があると考えるのは、至極自然である。したがって「使用者」であれ「事業者」であれ、その利益を享受する主体が個人であれば個人が、法人である場合には法人そのものが責任を負うことには、異論がないであろう。
では、責任主体が法人である場合に、その法人の代表者個人は、責任を負わなくとも良いのであろうか。答えは、「否」である。
労働安全衛生法の第122条に「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第百十六条、第百十七条、第百十九条又は第百二十条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する」と規定されているからである。これは、いわゆる両罰規定と呼ばれるものであり、この規定により代表者等の個人も責任を負うことになるのである。
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