ISO45001取得で押さえておきたい4つのポイントとは?労働安全衛生に携わるコンサルタントがわかりやすく解説
[このコラムを書いたコンサルタント]

- 専門領域
- 労働安全管理体制、安全文化醸成
- 役職名
- リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリング第三グループ マネジャー上席コンサルタント
- 執筆者名
- 村橋 邦輝 Kuniteru Murahashi
2026.6.18
日本では労働災害による死傷者の数が増加傾向にあることに加えて、メンタルヘルスや熱中症対策など、企業が対応すべき安全衛生上の範囲は広がってきています。
こうした中、継続的な安全衛生水準の向上に向けた仕組みづくりを進める上で有効な手段の1つとして、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格・ISO45001があります。
そこでMS&ADインターリスク総研では2回にわたって、これまで以上に仕組みづくりが求められるようになっている背景や、ISO45001の取得や実践にあたってのポイントを、労働安全衛生に携わるコンサルタント・村橋邦輝がわかりやすく解説します。
1回目の今回は、日本の労働安全衛生をめぐる現状と取得にあたってのポイントです。
流れ
- 日本の労働災害の現状は?
- 労働安全衛生マネジメントシステム・ISO45001とは?
- ISO45001の取得にあたってのポイントは?
- ポイント① 「リーダーシップ」と「働く人」の参加
- ポイント② 安全文化の醸成
- ポイント③ プロセスの理解と構築・統合
- ポイント④ マネジメントシステムマニュアル(基本規定)の作成
- まとめ:日ごろの安全衛生活動をマネジメントシステムに組み込む視点を
日本の労働災害の現状は?
まず日本の労働災害による死亡者数は、実はピークだった1960年代から大幅に減少して、2024年には過去最少となる764人でした。
労働災害の発生状況


一方で、休業4日以上の死傷者の数は2009年以降増加傾向で、2024年には13万5718人に上りました。
また、労働災害の発生状況は多様化していて、業種別では第3次産業の占める割合が2024年に52%を占めるまで増加しました。さらに、高年齢労働者や外国人労働者の死傷者数も増加傾向にあります。
このほか、メンタルヘルス、ハラスメント、熱中症対策など、社会環境の変化に伴って企業が対応すべき安全衛生上の課題範囲は広がってきています。
労働安全衛生マネジメントシステム・ISO45001とは?
こうした社会環境の変化を踏まえ、実効性のある安全衛生対策に取り組むために、安全衛生の方針や目標を定め、PDCAサイクルを回しながら組織を指揮・管理する仕組みの構築が、事業場の規模を問わずいっそう重要になってきています。
そこで有効となる手段の1つがISO45001の取得です。
ISO45001は「労働災害の防止」と「安全で健康的な職場環境の提供」を目的とした、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格で、組織の各階層の働く人が労働安全衛生に関わり、PDCAサイクルを継続的に回すことで、労働安全衛生の水準の向上を図ることを目指しています。
ISO45001は、序文と10の箇条(章立て)で構成されていて、要求事項は箇条4~10に記載されています。構成は次の表のように、各箇条がPDCAサイクルに対応しています。
ISO45001の箇条とPDCAサイクルの関係
| ISO45001の各箇条 | PDCAサイクル |
|---|---|
| 箇条6 | Plan(計画) |
| 箇条7,8 | Do(実行) |
| 箇条9 | Check(評価) |
| 箇条10 | Act(改善) |
この構成はほかのISOマネジメントシステムと共通となっているため、ISO9001やISO14001をすでに取得している組織では統合的な運用がしやすいというメリットがあります。
ISO45001の取得にあたってのポイントは?
ISO45001の取得にあたっては、従来から行っている安全衛生活動をベースにマネジメントシステムとして構築することが重要となります。
押さえておきたいポイントは、次の4つです。
- 「リーダーシップ」と「働く人」の参加
- 安全文化の醸成
- プロセスの理解と構築・統合
- マネジメントシステムマニュアル(基本規定)の作成
それぞれについて解説していきます。
ポイント① 「リーダーシップ」と「働く人」の参加
ISO45001の特長として「経営トップのリーダーシップ」と「働く人の参加」を求めている点があります。
このため、経営者などトップマネジメントが先頭に立ってして方針を打ち出し、明文化し、社内に周知していく必要があります。
また「働く人」というのは「労働者」よりも広い概念で、事業者・管理職・協力企業 ・派遣労働者・ボランティア・インターンシップなど組織の事業活動に関わるすべての人が参加して協議することが重視されています。
このため、実効性のある安全衛生活動を進めるうえでは、現場の知見や意見を反映することが求められます。
ポイント② 安全文化の醸成
ISO45001では、要求事項の1つに「目指すべき成果を支援する文化を醸成すること」が挙げられています。
実際の調査研究でも安全文化の醸成度と事故の発生には相関関係があることが明らかになっていることから、安全衛生水準の向上には安全文化を醸成することが重要です。
そのためには、自社の醸成度を把握して優先的に対処すべき課題を明確にする必要がありますが、すでに安全文化を醸成するために取り組んでいても、どう評価したらよいか悩んでいる組織も少なくありません。
そうした悩みを解消し、醸成度を“見える化”するためのアプローチとして「安全文化診断」があります。これは、「安全文化に関する会社全体の傾向」「エリアや社員属性による偏り」「安全意識の経年変化」を数値で比較するものです。
安全文化診断では次の図のように8軸の指標で、組織における安全文化の状態を数値化します。
安全文化の8軸
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ポイント③ プロセスの理解と構築・統合
ISO45001では、さまざまなプロセスの構築と運用が求められています。このプロセスには「手順」だけでなく、「手順を活用できる人」や「手順の実行に適した機械設備」なども含まれています。
このため、マネジメントシステムを適切に運用できる手順はもちろん、必要な情報や材料、適切な担当者の任命、使用する機械設備などプロセス全体を構築・運用することが重要になります。
またISO45001では、組織の事業活動にマネジメントシステムを統合することを求めています。ISO45001のために新たな仕組みを作って特別に取り組むのではなく、これまでの取り組みをできる限り活かして、組織の事業活動の中で実施できるようにすることが重要です。
ポイント④ マネジメントシステムマニュアル(基本規定)の作成
ISO45001の要求事項には、文書化した情報の維持または保持を求めるものがあります。ここでの文書化した情報には、単に文章だけではなく図・写真・動画なども含まれます。
構築したプロセスを運用するためには、関係者に周知するための文書化した情報が必要となりますが、従来から取り組んでいる安全衛生活動で活用されている文書なども含めて、複雑に絡んでくるおそれがあります。
このため、ISO45001取得にあたっては、マネジメントシステムの構築や運用に関わるすべての事項を包括的に示し、関連文書を体系化するための「マネジメントシステムマニュアル(基本規定)」を作成することが望ましいです。
その際には、ISO45001の各箇条に沿った形で作成すると、要求事項に合致した内容になりやすくなります。
まとめ:日ごろの安全衛生活動をマネジメントシステムに組み込む視点を
ISO45001の要求事項すべてに対応するのは難しいと感じる方も多いかもしれません。ただ、先ほどもお伝えしましたが、必ずしも新たな仕組みを一から作る必要はありません。
日常的に行っている安全衛生活動をマネジメントシステムに組み込み、PDCAサイクルの中に位置づけて運用することで、実効性のある仕組みに発展させることは十分できます。
2回目のコラムでは、具体的にISO45001の各箇条で記載されている要求事項と、実践に向けたポイントを解説します。
MS&ADインターリスク総研では、ISO45001取得・ISO45001を活用した労働安全マネジメントシステム構築の支援を行っています。
ISO45001は単なる安全管理規格ではなく、労働安全衛生を経営管理の仕組みとして回すためのフレームワークでもあります。
労働安全衛生に関する経営課題や事業課題を解決したいとお考えの皆さまは、お気軽にご相談ください。