レポート/資料

新型インフルエンザ等対策特別措置法の制定と企業の対応【労災リスク・インフォメーション(2012年11月)】

2012.11.1

1. はじめに

2009年に発生した新型インフルエンザは、想定よりも病原性が低く、病気そのものがもたらす被害はそれほど大きなものではなかった。その結果、現時点では新型インフルエンザという問題に寄せられる社会の関心は相当程度沈静化している。しかし、2012年5月、政府は、「新型インフルエンザ等特別措置法」(以下「特措法」という)を制定し、新型インフルエンザ対策に今後も取組む姿勢を明確にした。これは、世界的には高病原性鳥インフルエンザの動物間における流行が収束せず、ヒトへの感染例もあとを絶たない現状を踏まえ、高病原性新型インフルエンザの発生リスクは依然として残るという判断によると思われる。

従来の日本企業の新型インフルエンザ対策は、現段階では発生していない架空の感染症を想定した上で、感染拡大防止や事業継続のための計画を作成した事例が多い。このような計画も重要であるが、毎年流行するインフルエンザ等の感染症への効果的な対策は、新型インフルエンザ対策にも有効であるし、労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じた従業員の安全と健康の確保を企業の責務とした労働安全衛生法第3条の趣旨に照らしても妥当な対応といえる。

そこで、今回の労災リスク・インフォメーションでは、近年の高病原性鳥インフルエンザの流行状況を概観し、今回制定された特措法の内容を整理したうえで、日本企業における今後の対応を考える。

2. 高病原性鳥インフルエンザの現状

そもそもインフルエンザは、高熱、咽頭や関節の痛み、せき、鼻水などを主な症状とする全身感染症であり、日本では、毎年冬に流行する地域が多い。この病気は、鳥や豚などの間で流行しているウイルスが突然変異や遺伝子再集合を繰り返し、ヒトに効率的に感染し、増殖できる性質に変化することによって新たな種が発生する。2009年 4月に世界保健機関によって発生が確認された新型インフルエンザも同様の過程により発生したと考えられている。

このような事情を考慮すると、今後の新型インフルエンザ対策を検討するに当たっては、動物間での流行状況、特にヒトに感染した場合に重篤な症状を起こす高病原性鳥インフルエンザウイルスの流行状況を把握しておくことが重要である。

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