
第37号「ISO14001:2015年版と生物多様性」
2015.10.1
1. はじめに
1996年に発行された環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001は、2004年の改訂を経て、今般11年ぶりに大幅な改訂がなされ2015年9月16日に2015年度版が国際規格として発行されました。
2015年版の特徴については、既にいくつかの文献12にて解説してきましたが、ISO14001:2015年版では従来の規格ではあまり規定されていなかった生物多様性の概念が強調され、結果としてその取組が強化されていると言えます。しかしながら、後述するように日本企業の生物多様性に関する認識には課題があるため、本稿ではISO14001:2015年版と生物多様性について焦点を絞って解説します。今回の規格改訂を契機に生物多様性に関する認識が深まり、我が国の環境経営が更に深化することが期待されます。
2. 日本企業の生物多様性に関する認識
環境省が、2015年3月に公表した環境にやさしい企業行動調査結果(平成25年度における取組に関する調査結果)によれば、事業エリア内での重要な環境課題については【図表1-1】に示す通り、「資源・エネルギーの利用」と回答した企業が最も多く77.9%となっています。次いで、「廃棄物」が77.0%、「温室効果ガス」が62.8%、「資源の循環的利用」が55.1%となっていますが、「生物多様性の保全」は27.1%に留まっています。また同調査の事業エリア外での重要な環境課題については【図表1-2】に示す通り、「廃棄物」と回答した企業が最も多く56.1%となっています。次いで、「資源・エネルギーの利用」が54.9%、「温室効果ガス」が45.1%となっていますが、「生物多様性の保全」と回答した企業は25.1%で、事業エリア内(工場・事業所内)・事業エリア外(バリューチェーン・サプライチェーン)共に、「生物多様性の保全」は企業にとって重要な環境課題とは認識されていないと言えます。
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