企業における津波避難場所の選定について【BCMニュース 2015年 第1号】
2015.7.1
1. はじめに
東日本大震災では、津波から逃げ遅れたり、避難したが避難先で津波にのみこまれたりして多くの犠牲者が発生した。就業時間中に津波により職員が死傷した場合、企業の対応によっては安全配慮義務違反を問われる可能性があるが、安全配慮義務違反の判断において、避難させた場所が妥当か否かは重要な要素となる。そこで、本稿では企業における「津波避難場所」の選定対策の妥当性にフォーカスして考察する。
2. 各拠点における津波リスクの把握
安全配慮義務は危険が予見できる局面で発生する。したがって、「津波避難場所」の選定対策も各拠点の津波リスクを把握するところから始まる。
津波リスクの把握は、主に、拠点の津波による浸水危険性の有無や浸水深、津波の到達時間等を調べることになる。浸水危険性や想定浸水深については、自治体等の公表により調べることができる。一方、津波の到達時間については、自治体等で公表されているのは海岸線までの到達時間のみで、拠点までの到達時間は公表されていないのがほとんどである。公表されていないことを理由に「予見可能性なし」を主張することは困難であり、自身で推測することが必要となるが、その場合、海岸線から対象の拠点までの津波到達時間を加算する必要がある。
ここで、かかる加算の考え方について紹介する(図1)。海岸線から拠点までの津波到達時間は、海岸線から拠点までの距離と津波の速度から算出するが、津波の速度は地形に左右され正確に算出するのは困難である。
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