レポート/資料

2015年度 No.1「『自転車通勤』をめぐる、企業のリスク管理上の留意点」

2015.4.1

はじめに

健康志向や環境問題への関心の高まりなどを反映して、自転車通勤を行う人が増えているといわれている。一方で、図1のとおり、自転車が関与する交通事故は全体の20%程度で推移しており、自転車事故をいかに削減していくかは、交通事故対策上の課題の一つとなっている。

企業にとって、従業員の自転車通勤は、リスク管理上多くの考えておかねばならない問題を含んでいる。本稿では、自転車通勤を取り巻く企業のリスクおよびその対応策をお示ししたい。企業の安全管理を担当される方におかれては、自転車通勤にかかるリスクを再認識いただき、リスクの低減策を検討するきっかけとしていただければ幸いである。

1. 自転車事故に関連する世の中の動向

最近、自転車運転者が加害者となった交通事故で、高額な賠償金支払いを命じられた判例を報道などによってご存知の方も多いと思う。表2のとおり、2013年には、小学生が歩行中の女性と正面衝突し、女性が頭がい骨骨折等の障害を負って意識が戻らない状態となった事故について、9,521万円の賠償を命ずる判決が下されたほか、数千万円の支払いを命じられた事例が何件も出てきている。

自転車事故防止のため、自治体でも取り組みを強化する動きがある。東京都では2014年1月、「東京都自転車安全利用推進計画」を公表し、「社会全体で自転車の安全利用に取り組み、自転車事故がなく、自転車の交通秩序が確立された社会を実現する」ことを理念として掲げ、事業者に対しても「事業活動と自転車の関わりの内容・程度に応じて、事業者自身にも自転車の安全利用に関する責任があることを自覚し、必要な取り組みを実施する」ことを求めている。

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