レポート/資料

電動キックボードの現状と課題【RMFOCUS 第94号】

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[このレポートを書いたコンサルタント]

池田 貴彦
会社名
MS&ADインターリスク総研株式会社
部署名
基礎研究部 受託調査グループ
執筆者名
マネジャー上席研究員 池田 貴彦 Takahiko Ikeda

2025.7.1

要旨
  • 2023年7月の道路交通法改正により、一定の規格を満たした電動キックボードは、「一般原動機付自転車」から「特定小型原動機付自転車」という新たな区分に移行した。
  • 電動キックボードの普及が先行する諸外国では、交通違反や交通事故の発生が増加したため、規制・罰則強化を実施している。
  • 国内では利用の手軽さ等から電動キックボードのシェアリングサービスが拡大しているが、諸外国と同様に交通違反や交通事故の発生が増加傾向にあり、普及に向けて課題となっている。
  • 交通違反や交通事故の防止には、利用者への交通ルールの周知・徹底が急務である。
  • 新たな電動キックボードの区分「特定小型原動機付自転車」には、二輪型に限定されていることはなく、三輪型・四輪型の車両も許容されている。三輪型・四輪型の安定性と小回りが利く利便性から、高齢者層での利用拡大も期待ができる。

1. 道路交通法の改正内容

2023年7月に道路交通法が改正され、一定の規格の電動キックボードは従来の一般原動機付自転車(以下、「一般原付」)から、新たな区分の特定小型原動機付自転車(以下、「特定小型原付」)に移行された。 これにより、16歳以上が免許不要で利用できるようになり、義務であったヘルメットの着用は努力義務となるなど、規制が大幅に緩和された(次頁表1)。また、手元のスイッチにより最高時速を6km(最高速度表示灯点滅)に切り替えることで特例特定小型原動機付自転車(以下、「特例特定小型原付」)という扱いになり、歩道上の走行も可能となった。

2. 交通規制と違反行為

電動キックボードは、その車体の大きさ・構造により他の車両の通行を妨げる恐れはなく、高い運転技能は必要としない。法改正後も自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)への加入義務に変更はなく、性能等確認済シールを貼り付け、標識(ナンバープレート)は電動キックボード本体に取り付ける必要がある。 交通違反の罰則については道路交通法が適用され、16歳未満の運転、飲酒運転、通行区分違反、駐停車違反等が主な違反項目となっている。軽微な違反については反則金を納付することになり、例を挙げると、携帯電話を使用しながらの運転は12,000円、通行区分違反6,000円、二人乗りは5,000円となっている。違反行為を繰り返す者に対しては、運転者講習制度が設けられており、違反後3カ月以内に講習(3時間・ 6,000円)を受講しなくてはならないが、これに従わないと5万円以下の罰金が課される。

【表1】道路交通法と道路運送車両法による分類

道路交通法と道路運送車両法による分類
(出典:国土交通省「自動車の種類」を基にMS&ADインターリスク総研作成)

3. 諸外国における電動キックボードの利用状況

諸外国では、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、混雑を緩和するための新たな移動手段として、電動キックボードの普及が進んだ。特に欧州では電動キックボードの公道での走行を早くから認めていたが、普及が進むにつれて交通違反(特に違法駐車)や交通事故が増加した。そのため、市民団体の電動キックボード利用に対する反対運動や、マスメディアのネガティブな報道の活発化により、規制強化の流れになっている。

表2は、諸外国の主な法規制をまとめたものである。フランス・パリ市では2023年9月に、スペイン・マドリード市およびオーストラリア・メルボルン市では2024年8月に、電動キックボードのシェアリングサービスを禁止した。オーストラリアのメルボルン市を含むビクトリア州では、個人所有の電動キックボードは・・・

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