
2012年度 No.5「『リスクの洗い出し』の実務」
2013.2.1
はじめに
本稿では、リスクアセスメントにおける「リスクの洗い出し」「リスク分析」「リスク評価」の3つの工程のうち、「リスクの洗い出し」に係わる実務の解説を行う(「リスク分析」の実務は、本誌の2011年度第2号、3号『リスクの分析指標(発生頻度・影響度)の作り方』を、「リスク評価」の実務は、本誌の前号を参照いただきたい)。
筆者の経験上、リスクアセスメント作業で最も煩雑なのは、「リスクの洗い出し」の工程である。この工程をいかにセンスよく行うかにより、この後の工数が大きく変化してくると言っても過言ではない。「リスクの洗い出し」漏れを防ぐため、作業には一定の工数をかける必要はあるものの、全体の集計作業は効率的に実施できるよう、効果と効率の両方を重視した手法で行うことが肝要である。
白紙の状態から各部門に「リスクの洗い出し」を依頼する手法もあるが、このやり方では各部門の洗い出し作業も、事務局の集計作業も煩雑となる。したがって、多くの企業では事務局でリスクリストを作成し、リスクリストを基に各部門が追加・修正作業を行っていく手法が一般的である。本稿における「リスクの洗い出し」の解説においても、リスクリストを活用した手法を念頭に説明を行う。
1. リスクの洗い出し手法
「リスクの洗い出し」は、漏れなく網羅的に行うことが重要である。そのため、洗い出し作業は、組織の全体像が網羅されている資料に着眼して行うのが有効である。一般的によく用いられる手法としては以下の通りである(表1)。
全社リスクアセスメントは、企業内の各部門ごとに作業を行う場合が多いため、「業務別」の手法を採用する方がその後の作業が整理しやすいといえる。ただ、洗い出し漏れを防止するためには、他の手法を補完的に用いることをお勧めする。弊社では「リスク分野別」の手法を採用することが多いが、その場合においても他の手法を補完的に用いて、より丁寧な洗い出しを心掛けている。
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