レポート/資料

2012年度 No.2「リスク顕在化を想定した財務的な影響分析」

2012.8.1

はじめに

近年、上場企業をはじめとして、リスクマネジメントの取組みが広く採用されてきている。一般的には、経営を阻害するリスク事象を洗出し、分析、評価(以下、リスクアセスメントという)することで、対応すべきリスクに優先順位をつけて、優先順位の高いリスクから対策を検討・実施するというステップがとられている。もっとも、金融機関や商社を除くと、リスクアセスメントの際に、リスクが顕在化した際の財務的なインパクトまで分析、評価を行っている企業は多くはないというのが現状であるといえる。他方、取組みが進んでいる企業においては、リスクを定量評価する試みが存在するものの、どの程度の精度で定量評価すればよいか確立された手法はなく、課題が少なくない。

そこで一案であるが、リスクアセスメントでは、基本的には想定される最悪のシナリオを前提として分析・評価されることが通常であるため、そのシナリオを前提にリスクが顕在化した場合における財務的なインパクトをはじき出すという手法が実用的であると考える。

本稿では、具体的事例におけるリスク顕在化事例を想定した財務的な影響分析手法および財務分析を前提とした財務への影響について解説することとする。

1. 財務インパクトシミュレーションの前提

リスク事象が顕在化すると、売上げの減少、人的・物的損害に伴う損害賠償、復旧費用、回収費用、信用回復費用など、様々な悪影響が発生することになる。リスク顕在化による財務への影響分析を実施するにあたっては、リスク事象が発生した場合に生じる悪影響を特定し、それぞれの算出方法に従って損失を算定する必要がある。

以下では、電気機器メーカーにおけるPL事故のリスク顕在化シナリオを想定して、リスク事象が顕在化した場合における財務的な影響について検討していくこととする。

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