飲食業を取り巻くリスクと主だったリスクへの対応【企業リスクインフォ 2011年度 No.1】
2011.6.1
1. はじめに
食中毒は、来店客にとっては、生死に関わる重大なリスクの一つであり、他方、飲食業に従事する事業者にとっても、賠償責任はもちろんのこと、店舗の信用・評判、さらには事業継続に直結する重大なリスクの一つである。
飲食業に従事する事業者の多くは、店舗の衛生管理を徹底することで食中毒リスクを低減したり、事故の発生を契機として食中毒リスクの大きい一部メニューの提供を停止するなど様々な方策を尽くしている。
もっとも、飲食業界を取り巻くリスクは食中毒だけではなく、事業を継続していく上で様々なリスクが存在するということを改めて認識しておく必要がある。
飲食業に従事する事業者には、今一度事業を取り巻くリスクに対する管理を再構築し、リスクに強い組織・店舗を構築していただきたい。そこで、本稿では、リスク管理の基本的な考えをもとに飲食業を取り巻くリスクを洗い出した上、一般に飲食業にとって重要と思われる食中毒リスク、賠償責任リスク、火災リスクへの対応のポイントを解説する。
2. リスク管理の基本
リスク管理を実施するに当たり、行うべきことは、①リスク管理方針の策定②リスク管理フレームワークの設定③リスク管理プロセスの共有化の3点である。
まず、①リスク管理方針の策定とは、なぜリスク管理を実施するのかということを明らかにすることである。リスク管理をなぜ行うかについては、「安全・安心なサービスを提供するため」、「お客様の信頼を獲得するため」等の目的が考えられるが、これらを自らの言葉として表現することがはじめの一歩となる。
つぎに、②リスク管理のフレームワークの設定とは、リスク管理を実施するにあたり、リスク管理を主管する組織の設置やリスク管理の範囲や対象など、リスク管理の骨格と役割分担を決めることである。リスク管理を推進していく組織を立ち上げた上で、組織体制や通常業務の役割に応じて、誰がどのような役割を担うのかという点を明らかにすることが必要となる。
最後に、③リスク管理プロセスの共有化とは、リスク管理のプロセス(図表1)を明らかにし、組織の共通認識とするということである。いつ何をするのかという全体像を組織として共有することで、個人的なリスク対応にならないようにする必要がある。
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