ERMの視点から操業停止リスクを考える【企業リスクインフォ 2010年度 No.6】
2011.1.1
1. 背景
昨今、地震や新型インフルエンザ等を想定したBCP(事業継続計画)やBCMS(事業継続マネジメントシステム)は、大企業を中心に普及が進んでおり、特定のシナリオについては、事業継続に対する手当てがなされてきている。
もっとも、ERM(EnterpriseRiskManagement)という全社的なリスクマネジメントの視点から、最近の操業停止事例を俯瞰してみると、地震や新型インフルエンザ等以外にも様々な操業停止リスクが存在していることがわかる。
特に、法令違反により操業の一時停止命令等の行政処分を受け操業を停止せざるを得なくなるという事例が散見される現状からすると、法令違反に伴う操業停止リスクは、地震や新型インフルエンザ等に伴う操業停止リスクと同程度、あるいはそれ以上に注視すべきものであるように思われる。
そこで、本稿においては、法令違反に伴う操業停止リスクとその対応について考察することとする。
2. 法令違反と操業停止リスク
企業を取り巻く規制は、法律・条例・協定・ガイドライン等、様々なルールが網羅的・重層的に折り重なっているが、その中には、規制の趣旨目的の達成のため、行政処分等の実効性担保措置を定めるものがある。
実効性担保措置である行政処分には、「免許取消し」のように法律上事業廃止を強制するもの、「操業停止命令」のように法律上操業停止を強制するもの、及び「施設使用停止命令」のように場合によっては操業停止に至る処分など、様々な規制手段が存在し、企業の事業活動は、常に操業停止リスクにさらされているといえる。
さらに、これらの規制は、その複雑性に加え、法改正もあって、自らの事業活動において遵守すべき規制を完全に把握することが困難な状況が存在している。
このような状況下、自らの事業活動において、遵守すべき規制を把握できていないまま事業活動が遂行されている、または、遵守すべき法令等を管理部門のみが把握し、リスクをコントロールできる現場部門が把握していないという実態はないだろうか。
現在の厳しい経営環境の中においては、法令遵守でも特に、最低限操業停止に陥らないための『勘所を押さえた取組み』が必要になってきているものと思われる。
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