コラム/トピックス

施設内の「道路環境」および「クルマ」や「ひと」の動きに潜むリスク

2024.3.21

交通事故発生の「3要素」

交通事故が発生する原因として、三つの要素が関連しているといわれており、実際の事故ではこれらが複合的に絡み合って起きるといわれています。三つの要素とは「ひと」、「道路環境」、「クルマ」です。つまり、「クルマ」や「道路環境」に潜む危険性が、車の運転者、歩行者といった「ひと」の危険な行動をきっかけに現実のものとなることによって発生する、というものです。

より具体的な要素は次のとおりです。
まず「ひと」という観点からは、はじめにも述べたましたが運転者の運転技術の未熟性や不注意などのヒューマンエラーや交通法規違反、といったものが考えられます。次に「道路環境」という観点からは、路面の状態や道路標識、視認性といった道路構造や道路を利用する「クルマ」「ひと」の危険な動き、いわゆる交通流における危険挙動などが考えられます。最後に「クルマ」という観点からは、車両の操作性や安定性、といったものが考えられます。

交通事故対策の考え方

交通事故対策に対する考え方として、一般的に二つの考え方が存在します。

ひとつは「能動安全性」と言われるもので、事故そのものをいかに防ぐかという考え方、いわゆる「予防対策」です。例えば、「ひと」の観点からの対策として、安全教育の実施や点呼実施、健康管理、取締り、といったことが考えられます。
次に「道路環境」の観点からの対策として、線形改良や舗装の改良、注意喚起標識や路面標示の設置といったことが考えられます。最後に「クルマ」の観点からの対策として、居眠り防止装置やカーナビの設置、車間距離警告音の装備、ABSや、衝突被害軽減ブレーキの導入といったことが考えられます。

もう一方は「受動安全性」と言われるもので、事故が起こった場合に搭乗者の安全をいかに確保するかという考え方です。つまり「被害軽減対策」です。
こちらも「ひと」の観点からの対策としては「安全姿勢の保持」といったことが考えられます。次に「道路環境」の観点から考えると、ガードレールやクッションドラムの設置といったことが考えられます。最後に「クルマ」の観点からの対策として、シートベルトやエアバックの設置、衝撃吸収構造の採用といったことが考えられます。

これらの考え方は、1980年代にドイツにおいて提唱された交通事故対策には、衝突の発生を防止するのみでなく、発生した衝突による被害をどうやって軽減するのかといったことも検討する必要がある、という考え方です。

交通施設・交通流に潜むリスク

「道路」には「公共の道路」以外に「私的な道路」があります。「私的な道路」とは、企業が保有する工場や事業所、商業施設構内の道路や駐車場などが該当します。これらの「私的な道路」は、企業が保有する「道路環境」として、本来企業が交通事故対策に取り組む必要があります。これら、企業が保有する「道路環境」において、どういった潜在リスクがあるのか。駐車場を保有する店舗を想定し、「交通施設」と「交通流」の二つの観点からお伝えします。

「交通施設」の観点から考えると、視界を遮る物の存在、注意喚起標識やミラー(道路鏡)の未設置や歩行帯や横断帯の未設置などにより、車同士や車と歩行者とが接触する潜在的なリスクが存在します。施設を保有する企業にとって、こういった潜在リスクから来訪者や来店者、自社の社員の安全を守ることが、法的、社会的に求められています。

一方、「交通流」の観点から考えると、駐車場出入り口での入庫車両と出庫車両の未分離、車両と自転車や歩行者との未分離、店舗周辺の公道への駐車車両の放置などにより、「交通施設」の場合と同様、車同士や車と歩行者とが接触する潜在的なリスクが存在します。

つまり、交通事故を防止するためには、「ひと」「道路環境」「クルマ」のそれぞれの観点からのアプローチが不可欠です。

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