「運輸安全マネジメント制度」における内部監査について
2024.3.21
運輸安全マネジメントにおける内部監査とは
「運輸事業者における安全管理の進め方に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」という)は、14個の項目にて構成されていますが、「内部監査」は項目11番目であり、安全管理体制に係るPDCAサイクルの「C:Check」の部分の取組に該当します。
内部監査の目的は、安全管理体制上の優れた取組及び「事業の安全に関するリスク」を見出し、対応を促すことです。また、本取組を通じて、可能な範囲で課題・問題点への対応について提案を行うことにより、安全管理体制の向上が期待できるとされています。なお、内部監査は、「計画」・「準備」・「実施」・「報告」の4つフェーズから構成され、内部監査担当者間で、逐次情報共有・整理を行い、課題や優良事例等について取りまとめを行うことが求められています。
要求事項のポイント
ガイドラインの内部監査においては、安全管理体制の構築・改善の取組に関し、「安全管理規程、その他事業者が決めた安全管理体制に関する規程・手順に適合しているか」及び「安全管理体制が適切に運営され、有効に機能しているか」の2点について確認する必要があります。
前者は、「適合性」という観点であり、安全管理体制の構築・改善の取組が、安全管理規程、その他自社で定めた安全管理の規程・手順どおり実施されているかを確認することが求められています。他方、後者は、「有効性」という観点であり、安全管理体制が様々な状況の変化に対応しつつ構築・改善されているか、安全目標等において計画したとおりの成果が得られているか、計画した成果を得るためPDCAサイクルに基づいた取組が実施されているか等を確認することが求められています。
また、上記2点の視点で監査することも重要ですが、内部監査の範囲は、「安全管理体制全般であり、経営トップ、安全統括管理者等の経営層であること」に注意を払わなければいけません。現業実施部門については、あくまで必要に応じて実施する位置づけとなります。さらに、一般的な手順としては、「監査方針、重点確認事項等を含めた監査計画を策定すること」、「経営トップ、安全統括管理者等に対しては、少なくとも1年毎に実施すること」、「監査結果を速やかに取りまとめ、経営トップ及び安全統括管理者に報告すること」、「監査で指摘を受けた点に対して、必要な是正措置・予防措置を実施すること」等を実施しなければいけません。
なお、運輸事業者にとって内部監査は難易度が高く、国土交通省の「令和2年度 政策レビュー結果(評価書) 運輸安全マネジメント制度」においても取組の実施充足率が低いことが確認されていることから、「必要に応じて、親会社、グループ会社、協力会社、民間の専門機関等を活用して内部監査を実施することもできる」とされており、内部監査の取組は社内外の組織を通じて柔軟に対応できることについても意識することが望まれます。
内部監査における近年のガイドライン改訂について
近年のガイドライン改訂においては、課題の抽出・事実の報告対応のみならず、「被監査部門の優良な取組事例を積極的に収集・展開」や「是正措置・予防措置の提案」を積極的に実施することが期待されています。さらに、監査時の留意点として、「輸送の安全を確保する上で、自社を取り巻く環境の変化に伴う新たな課題に適時、適切に対応しているかを確認すること」が、明記されています。
従来より、輸送の安全を確保する上での課題の認識とその対応状況を確認し、必要に応じて新たな「気づき」を与えることが重要であるとされていますが、加えて、普遍的な課題のみならず、自社を取り巻く様々な環境の変化に伴い、新たに生じる安全上の課題を的確に把握して適時・適切に対応することもこれからの対応として求められるものであり、この点について内部監査を通じて確実に確認する必要があります。したがって、内部監査要員に対しては、当該点を踏まえた確認の重要性を強調して理解を促していくことが望まれます。
上述した内容を踏まえ、ガイドラインの内容を正しく理解し、各組織の状況に応じた内部監査の取組を推進していくことが重要です。