コンサルタントコラム

金融庁が有価証券報告書の「好事例集」 を公表 開示充実のポイント解説

2024.5.31

金融庁は2024年3月8日、企業の有価証券報告書の優れた開示を紹介する「記述情報の開示の好事例集2023」を更新した。開示の充実化を促すため毎年作成しており、2023年版は内閣府令の改正で新たに開示が求められるようになった「サステナビリティに関する考え方及び取組」をテーマに昨年12月に公表していた。今回の更新では、「コーポレート・ガバナンスの概要」などの分析を追加。投資家、アナリストらの意見をもとに選んだ好事例について高く評価したポイントを解説しており、開示の充実化を目指す企業が参考にしやすい構成となっている。

「サステナビリティに関する考え方及び取組」は、内閣府令で4つの枠組み(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標)について開示することが求められている。好事例集では、各項目の記載前にサステナビリティ全般に関する説明や企業の全体戦略とサステナビリティとの関わりについて紹介することが、わかりやすい開示につながると指摘した。

開示項目別では、4つの枠組みのうち、ガバナンスとリスク管理が特に重要とし、ガバナンスにおいては、全般的なガバナンス体制と実効性に関する評価を開示することをポイントとして挙げた。また、リスク管理では、有価証券報告書で開示が求められている「事業等のリスク」だけでは情報が不足する可能性があるとし、リスクだけではなく、機会についても記載することが有用だとした。

「コーポレート・ガバナンスの概要」では、ガバナンスの実効性を訴求するポイントとして、取締役のスキルマトリクスや取締役会での議論の状況を開示すること、取締役会議長の視点からの説明を記載することなどを挙げている。

そのほか、「監査の状況」「株式の保有状況」「経営上の重要な契約等」の開示についても分析。企業の規模に着目し、中堅企業や中小企業の開示に関する好事例も紹介している。また、リソースに課題があり、十分な開示をできていない企業は、自社にとって特に重要な論点や、開示を通じて投資家に伝えたいことに焦点を当てて開示をすることや、現時点で開示できていない情報については今後の方針や方向性について記載することを推奨している。

近年、情報開示の重要性は高まっており、有価証券報告書の内容も開示の充実化を進める企業と従来の開示を続けている企業の二極化が顕著となっている。有価証券報告書を充実させることは、株主や投資家への説明責任を果たすだけでなく、新たな投資を呼び込むことにもつながる。好事例と自社の開示内容を比較し、より高いレベルの開示を志向する契機としてほしい。

【参考情報】
2023年12月27日付金融庁HP https://www.fsa.go.jp/news/r5/singi/20231227.html
2024年3月8日付金融庁HP https://www.fsa.go.jp/news/r5/singi/20240308.html

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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.1」(2024年4月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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