EUで環境犯罪の制裁強化と犯罪リストを拡大する指令が成立
2024.6.3
欧州理事会は2024年3月26日、「刑法による環境保護に関する指令」を採択した。本指令は、環境に関する刑事犯罪と刑罰の定義に関する EU 全体の最低限の規則を定めているもの。2008年に制定された法律に取って代わる内容となっており、環境犯罪の捜査と起訴の強化が期待されている。犯罪を犯した法人には罰金が科され、最も重大な犯罪については法人の前事業年度における世界の総売上高の5%以上または4000万ユーロ、その他の犯罪については前事業年度における世界の総売上高の3%以上または2400 万ユーロの罰金と定められている。
本指令案は2024年2月に欧州議会で採択されており、EU法の立法プロセスにしたがい、欧州理事会による採択をもって成立することとなった。これにより、各加盟国は指令で定められた政策目標と実施期限に従って、国内法の立法が求められる。本指令はEU域内で行われた犯罪が対象となっているが、加盟国は自国の領域外で行われた犯罪についても管轄権を拡大することが可能となっている。これは次の場合が想定されている。
- 犯罪者が自国に常居している場合
- 犯罪が自国の領域内に所在する法人の利益のために行われる場合
- 犯罪が自国の国民などに対して行われる場合
- 犯罪が自国の領域内の環境に深刻な危険をもたらした場合
本指令が規定する、環境犯罪を構成する行為の数は20である。これには、人の健康や自然環境に対して深刻な損害を与える物質の放出、汚染された船舶部品の違法なリサイクル、生態学的状態や量的状態に損害をもたらしうる地表水または地下水の取水、EU森林破壊防止規則で定められる商品や関連製品の輸出、保護区域内の生息地などの劣化を引き起こす行為、人の健康や自然環境に対して深刻な損害を与える侵略的外来種の持ち込み・上市・保管・使用など、オゾン破壊物質の生産・上市・輸出入などが挙げられている。また上記の行為については、犯罪の実行を教唆することや未遂の場合にも処罰することが求められている。
また本指令では、指令で言及されている犯罪行為が意図的に行われ、不可逆的または長期的な損害を引き起こした場合に適用される「適格犯罪」条項が導入されている。加盟国は適格犯罪を犯した法人に対して、本指令で定義されている犯罪に対する罰則よりも厳しい罰則を、国内法にしたがって規定することが求められる。
加えて、EU加盟国は法人への追加措置による制裁を定めることが求められており、違反者に環境の回復や損害の補償を義務付けることや、公的資金へのアクセスからの除外、犯罪行為を引き起こした活動を行うための許認可の取り消しが挙げられる。
EU 加盟国は本指令について、2 年以内に国内法に適用することが求められている。前述のとおり本指令は環境犯罪に関する最低限の規則であり、加盟国によってはより厳しい規則を定める可能性がある。EU 域内で活動を行う企業は、動向を注視する必要がある。
【参考情報】
2024年3月26日付 European Council HP:
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/03/26/environmental-crimecouncil-clears-new-eu-law-with-tougher-sanctions-and-extended-list-of-offences/
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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.2」(2024年5月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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