レポート

タイにおける電気自動車用電池の火災リスク その1 (インターリスク タイ レポート)

2023.3.27

見どころ
ポイント
  • 電気自動車の普及に伴い電気自動車用電池の役割が高まっています。
  • 主要な電池であるリチウムイオン電池には様々な種類があり電気自動車では安全性が高いものが採用されています。
  • 電気自動車の火災の多くは電池に起因しています。

1.はじめに

近年、電気自動車(EVが急速に普及していますが、EVで使用される電池電気自動車用電池 electric vehicle battery(以下、EVB)は EVの動力源として重要な役割を果たしています。技術の進歩により、従来より高性能で低コストなバッテリーが開発されており、これによりEVの価格低下、充電時間や走行距離の向上が進んでおりEV普及を後押ししています。

BEVとPHEVの売上推移(全世界)

一方でEVBのリスクとして、環境問題(レアメタル使用による生産・リサイクル時の環境負荷や廃棄時の環境への影響 )、ハッキングやセキュリティ攻撃などが想定されていますが、併せて火災・爆発のリスクもあります。特に高エネルギー密度のリチウムイオン電池は、過充電、過放電、損傷、高温などの条件下で発火・爆発する可能性があります。そこで今回より数回にわたり、EVBの火災リスクについて説明します。まず本号ではEVBの概要や電気自動車の火災原因について、また次号以降ではEVBの火災特性や対処法等についてご案内します。

2. 電気自動車用電池(EVB)の概要

EVBは、電池式電気自動車(BEV)やハイブリッド式電気自動車(HEV)などの電気モーターを駆動するための二次電池です。エネルギー密度が高く急速充放電が可能という特徴などから、現状ではリチウムイオン電池が主流です。EVBは、高いエネルギー密度と長い寿命を持つことが求められます。また、高い安全性や信頼性も必要です。表1はEVBとして採用されることが多いリチウムイオン電池とニッケル水素電池の特徴を比較したものです。

表1 リチウムイオン電池とニッケル水素電池の主な特徴
リチウムイオン電池 ニッケル水素電池
価格
充放電時間 早い 遅い
サイズ
重量
温度特性 低温に弱い 低温に強い
自動車での主な用途 BEVやPHEV HEV
一般的な電池のエネルギー密度あたりのサイズ(縦軸)と重量(横軸)

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