TNFDアダプターが半年で96社増加、業種別ガイダンスも公表
2024.8.23
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は2024年6月下旬に開催されたロンドン気候アクションウィークにおいて、企業報告にTNFD提言を採用する意向を表明した企業(TNFDアダプター)が2024年1月以降30%(96社)増加したと発表した。その結果、TNFDアダプターは合計416社(うち日系企業109社)となった。
これに合わせて、TNFDは8業種(養殖業、バイオテクノロジー・医薬品、化学、電力施設・発電、食品・農業、林業・製紙、金属・鉱業、石油・ガス)の業種別ガイダンス正式版と金融機関向けガイダンス第二版を公表した。また新たにアパレル・アクセサリー・フットウェア、飲料、建設資材、エンジニアリング・建設・不動産、漁業の5業種について、業種別ガイダンス草案が公表され、9月27日までパブリックコメントを実施する。
業種別ガイダンスは自然関連課題を評価する際に課題となる可能性のあるバリューチェーンの特性、TNFDのLEAPアプローチへの各セクター特有の取り組み方法、固有の開示指標などについて概説されている。また金融機関向けガイダンス第二版は、金融機関のフィードバックも踏まえて、中核開示指標において範囲に含めることが期待される資産クラスなどの補足情報が追加された。
なお、業種別ガイダンスの公表に先立ち、TNFDとEFRAG(欧州財務報告諮問グループ)は、ESRS(欧州サステナビリティ報告基準)とTNFDという2つの開示枠組みを比較した対応マップレポートを公表した。EU域内では今年から企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が段階的に適用開始となっており、対象企業はESRSに基づく開示を行う必要がある。ESRSは全般的開示と気候変動の開示要件のほかに、汚染、水および海洋資源、生物多様性と生態系、資源利用および循環経済などのTNFDと重複する分野の開示要件も含まれる。本レポートは各社の開示が本格化する前に、TNFDが推奨する14の開示項目すべてがESRSに反映されていることを強調し、両者が一貫したものであることを明確にする意図があると推察される。
TNFDが公表した業種別ガイダンスは、より具体的に特有の自然関連課題やKPIなどが整理されており、それら業種に属する企業はTNFD開示を検討する際にこれも参照すべきである。またCSRDの対象となる日系企業は今回公表された対応マップレポートを参照して、効率的にTNFDとESRSに対応していくことが望まれる。
【参考情報】
2024年6月28日付 TNFDHP:
https://tnfd.global/tnfd-adoption-now-over-400-organisations~
2024年6月20日付 TNFDHP:
https://tnfd.global/tnfd-and-efrag-publish-correspondence-mapping/
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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.5」(2024年8月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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