レポート/資料

貸切バス事業者安全性評価 認定制度の変更とその対応【RMFOCUS 第91号】

[このレポートを書いたコンサルタント]

佐瀬邦夫
会社名
MS&ADインターリスク総研株式会社
所属名
リスクコンサルティング本部 リスクマネジメント第二部
運輸総合リスクマネジメントグループ 主席
執筆者名
佐瀬 邦夫 Kunio Sase

2024.10.4

見どころ
ポイント
  • 貸切バス事業者を対象とする「貸切バス事業者安全性評価認定制度」が2025年度の申請より大幅に変更される。制度発足以降10年以上が経過しているが、直近の重大事故の発生状況を踏まえ一層の運行管理強化が必要であり、2024年度からの法改正への対応もあるため、初の抜本的見直しとなる。
  • 2025年度の申請より新たな制度への対応が必要となるため、申請を希望する貸切バス事業者においては、2024年度の取り組みが重要となる。
  • 事業用自動車の重大事故発生傾向を踏まえ、健康管理、先進安全自動車などの安全に対する高度な取り組み、運輸安全マネジメントへの対応等、安全に直結する事項へのより一層の強化が求められる。

1.貸切バス事業者安全性評価認定制度の概要

貸切バス事業者安全性評価認定制度は、公益社団法人日本バス協会において、貸切バス事業者からの申請に基づき安全性や安全の確保に向けた取組状況について評価認定を行い、これを公表するもので、2011年度から運用が開始されている。

申請には、事業許可取得後3年以上経過していることや、安全性に対する取組状況における法令遵守事項に関する違反がないこと、過去2年間に有責の第一当事者となる「死傷者を生じた事故」が発生していないこと、などの厳しい条件がある。認定の有効期間は基本2年間の更新制であり、訪問審査による現地確認等を経て、認定を受けた事業者は、取組状況に応じ、次回の認定申請時により上位の認定種別の認定取得を目指すことができるも のである。

制度によって認定を受けた事業者(認定事業者)は、国土交通省ならびに日本バス協会のホームページにおいて公表されるとともに、運行するバス車体に認定事業者の証である「SAFETY BUS」(セーフティバス)評価認定制度のシンボルマークを貼付することや、各事業者のホームページや従業員の名刺などにマークを表示することなどを通じ、認定事業者であることを利用者等に知らせることができる。これにより、利用者のみならず、旅行業者、国・地方公共団体等に安全への取り組みに積極的な事業者であることを示すことができ、発注者から選定されやすくなる等の効果が期待できるため、多くの事業者が認定、更新、ランクの昇格を目指している。

なお、貨物自動車運送事業者を対象に、全国貨物自動車運送適正化事業実施機関(公益社団法人全日本トラック協会)が評価を行う「Gマーク」(貨物自動車運送事業安全性評価事業)は営業所単位での申請となっているが、本稿で紹介している貸切バス事業者安全性評価認定制度は、組織全体での取り組みが評価対象となり、全社を挙げた対応が必要とされるものである。

「2023年(令和5年)12月20日 国土交通省 物流・自動車局旅客課発表資料」によれば、全国の貸切バス事業者3,556者のうち、2,028者が認定を受けており、現在の認定制度の三段階の認定種別では、三ツ星(1,060者)、二ツ星(259者)、一ツ星(709者)となっている(表1)。

【表1】貸切バス事業者安全性評価認定制度の認定の概要(2022年度末現在)

図1
(出典:公益社団法人日本バス協会の資料を基にMS&ADインターリスク総研作成)

2.制度変更の背景と主な変更点

「事業用自動車の交通事故統計(令和4年版)[第1分冊]」における事業用自動車の交通事故件数の推移を見ると、近年は減少 傾向であったところ、2022年にはすべての業態で増加しており、バスにおいては、乗合バス、貸切バス等の合計で928件となっている。一方、「事業用自動車総合安全プラン2025」において2025年までにバスの事故件数を800件以下とする削減目標が示されており、引き続き事故削減に向けた不断の取り組みが期待されている。

また、2022年10月に静岡県で発生した貸切バスの横転事故(死傷者計29名)を踏まえ、二度と同様の悲惨な事故を発生させないよう、貸切バスの安全性向上のため、国においても新たな対策が検討されてきた。その対策の一つとして、2023年10月に旅客自動車運送事業運輸規則が改正され、2024年4月1日から施行されている。この法令改正や運行管理高度化の推進、安全運転支援装置の普及、健康起因事故の増加、社会的な環境の変化(人手不足・高齢化)等へ対応するため…

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