NPIが自然の状態を測る指標のドラフト版と解説を発表、2026年の完成を目指す
2025.5.26
Nature Positive Initiative(NPI)※は2025年1月17日、陸域の自然の状態(SON: State of Nature)測定指標のドラフト版を発表した。
NPIは2024年にSON指標のコンセンサス構築ペーパーを公表し、その内容についてパブリック・コンサルテーションを受け付けていた。ドラフト版ではそのフィードバックを踏まえ、より個社の状況を踏まえた運用性を高め、内容の簡素化を図るために大きく6つの変更点が加えられた。例えば、各指標は「ユーザー能力レベル」ごとに、Entry-level、Standard、Advancedの3つの区分が設定されていたが、この区分は「粒度レベル」ごとにLow, Medium, Highへと改称された。これにより企業は指標の測定に投下できる資金や時間などの状況に鑑みて、開示する各SON指標の粒度を選択できるようになった。また、SON指標はすべてのユーザーが測定する必要のある4つの「ユニバーサル指標」と、事業内容や特定の生態学的または社会的状況などの条件により測定必要性の有無が変わる5つの「ケース固有指標」が設定されている。ケース固有指標は、ユーザー能力レベルの各区分(Entry-level、Standard、Advanced)で設けられていた条件が、区分に関わらず共通化され、1つでも条件に該当する場合には測定が必要となる仕様になった。
また、3月にはユニバーサル指標が何を目的として設定されているかといった下表の解説が公表されている。
なお、ドラフト版で公表された陸域SON指標案は、2025年中にパイロットプログラムにて有用性検証を実施し、正式な指標としての設定を2026年に目指している。加えて、2025年6月には国連海洋会議にて海域のSON指標草案発表を予定しているほか、淡水域の指標案開発を進めることも計画されている。
SON指標はTNFD、GRIおよびSBTNといった既存の枠組みや基準に組み込まれることが想定されており、企業はSON指標を測定するためのプロセス構築を進める必要がある。ユニバーサル指標の解説を参照すると、バリューチェーンを含めた企業の活動全体を考慮する必要があることが読み取れる。プロセス構築においては、サプライヤーを含めた幅広い視野で取り組む必要があるだろう。
| インディケーター | メトリック | 解説 |
|---|---|---|
| 生態系の範囲と分類(IND1) | 損失、回復、正味の変化面積(ha) |
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| 土地の状態(IND3) | 土地分類ごとの、基準からの面積と種類の変化(土地分類ごとのha) |
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| 景観の状態(IND4) | a)景観の十全性、b)構造的な接続性、c)機能的な接続性、の値と変化 |
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| 種の絶滅リスク(IND6) | 種の絶滅リスクスコアと傾向 |
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(NPIの解説に基づきインターリスク総研作成)
※Nature Positive Initiative
自然保護団体、研究機関、企業、金融連合など27団体が参画しており、「ネイチャー・ポジティブ」の定義を含め、ネイチャー・ポジティブの実現に向けて必要なツールとガイダンスを提供することを目的とした団体。
【参考情報】
2025年1月17日付 Nature Positive Initiative HP:
https://www.naturepositive.org/app/uploads/2025/02/Draft-State-of-Nature-Metrics-for-Piloting_170125.pdf
2025年3月20日付 Nature Positive Initiative HP:
https://www.naturepositive.org/news/blog/four-indicators-state-of-nature-metrics/