サプライヤー全体のBCPレベル底上げのポイント
[このコラムを書いたコンサルタント]
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- 専門領域
- BCP/BCM(事業継続マネジメント)
- 役職名
- リスクマネジメント第四部 事業継続マネジメント第一グループ 上席コンサルタント
- 執筆者名
- 四釜 研之介 Kennosuke Shikama
2023.9.5
近年、頻発化・甚大化する自然災害、新型コロナウイルス感染症、政治的な不安定要素(地政学的リスク)など、ビジネス環境の変化が激しさを増している中、自社業務を支える取引先の事業停止や、サプライチェーンの途絶などにより、自社の業務や生産活動も大きな影響を受けることが多くなっていると言えよう。このような環境下で事業継続力を高めていくには、自社だけでなく、自社を支えるサプライヤーや取引先等においても、事業継続計画(BCP)の構築取組みを加速させることが必要不可欠である。
しかしながら、サプライチェーンを構成する企業や取引先等は中小企業であることも多く、大企業に比べるとまだまだBCPへの取組みが進んでいないのが現状である。その要因としては、BCPが必要だという認識はあるものの、BCP取組みに関するノウハウ不足やそれに費やす人材、時間が確保できないといったことが挙げられる。ついては、サプライチェーンの下流に位置する大企業がノウハウ等の支援を行う必要があるが、大企業といえども全てのサプライヤー等に対して一律でBCP取組みを支援するには、マンパワー面・コスト面でも限界があるとも聞く。
このような阻害要因を踏まえると、大企業は、サプライヤーの特性に応じて効率的にBCP取組みを支援することが必要となる。以下にそのポイントを紹介する。
第一に、自社の業務において重要な役割を果たすサプライヤーや取引先企業を洗い出すことである。特に、災害発生時などにおいても優先して継続・早期復旧を行う「重要業務」に関するサプライヤー等のリストを作成し、どの企業・取引先が自社の事業継続においてキーパートナーとなるか把握する。その中で真に重要なサプライヤーを洗い出し、彼らには対策検討における協業を申し出で、膝詰めで個別対応を実施する。
第二に、上記以外のサプライヤーに対しては、自走化に向けた支援が中心となるが、「"どのサプライヤーに"、"いつまでに"、"何を"、"どのレベルまで" して欲しいか」という目標を設定することが必要となる。かかる目標設定がないと、サプライヤーに対して曖昧な依頼しかできず、BCPレベル底上げの実効性が確保できない。具体的には、「大震災が発生した際でも、製品○○に関連する調達品については、○週間以内に供給してもらう」というような目標を設定していくことが重要である。
そして、アンケートやヒアリングによって、サプライヤーのBCP整備状況を把握し、それぞれの現状のレベルに応じた研修を実施する。具体的には、調達部門等が主催する取引先説明会等の機会を用いて、BCPのフォーマットやサンプル、訓練教材などを提供したり、BCP策定ワークショップ等を開催するなどにより、サプライヤーや取引先がBCPを構築するにあたり効率的かつ効果的に取り組めるよう支援する。
最近では、多数のサプライヤーや取引先等の事業継続力を効率的に高める方策として、「システム」を活用し、自律的にBCP取組み推進を図ってもらう手法も有効である。
以上のように、自社のサプライヤー等に対してBCPの構築を働きかけたり、訓練に取組んでもらうことは、自社の事業継続の安定性と競争力を高める上で重要な要素であるので是非、イニシアティブを持って取組んでもらいたい。
以上