コラム/トピックス

GPIFの運用委託先、最も懸念のESG課題は昨年度とほぼ同じ気候変動、ダイバーシティなど

2025.6.27

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2025年3月31日に公表した2024/25年スチュワードシップ活動報告によると、運用を委託する機関投資家向けに「重大なESG課題」を聞いたアンケートで、全回答者が「気候変動」「サプライチェーン」「ダイバーシティ」「生物多様性」「人権と地域社会」を挙げた。一方で、前回は全機関が挙げていた「不祥事」は今回は一部が挙げず、「コーポレートガバナンス」を挙げた機関は昨年よりもさらに減少した。

GPIFの全体の9割を占めるパッシブ運用の国内株式受託機関の回答に基づく。

<表>国内株式パッシブ運用機関が挙げた
「重大なESG課題」と割合

※網掛=70%以上、うち太字=100%

国内株式パッシブ運用機関が挙げた「重大なESG課題」と割合
国内株式パッシブ運用機関が挙げた「重大なESG課題」と割合

出典:GPIF資料に基づき弊社作成

また、GPIFは2025年4月30日、委託先を中心とした機関投資家による上場企業へのエンゲージメントの実態把握を目的に、投資先企業インタビューの結果概要を公表した。企業から見た評価や課題を把握し、GPIFのスチュワードシップ活動の改善に役立てるのが目的。同時に、機関投資家への参考に活用してインベストメントチェーン全体の好循環につなげる狙いもある。

インタビューを受けた企業からは、好意的な意見が多く出された。「統合報告書等を活用し対話が深化した」「対話のテーマも、財務、事業の状況の確認から、サステナビリティ、ガバナンス、資本コスト、効果的な情報開示のあり方等に拡大した」などがあった。また「投資家からの意見を取締役会にフィードバックし、社内検討に反映、他社比で遅れていた戦略策定につながった」との活用事例も挙がった。一方、「個別トピックに議論が偏る」「ESG面談での準備不足の投資家がいる」「短期業績に関する質問が多い」などの課題が示された。

半面、「サステナビリティ情報を投資判断にどう活用しているか明確に示してほしい」や「株式運用部門とESG部門から逆のことを言われた」など、企業側の困惑の声も取り上げられた。

また、社外取締役と投資家との対話についての質問も設定。社外取締役との対話機会や説明会、投資家への訪問ミーティングの実施例などの回答を紹介した。その上で、「ここ数年の間に初めて実施した企業が多く、近年、急速に広がった」「投資家や参加した社外取締役からの実施後の反応は高評価」と総括した。

【参考情報】
2025年3月31日付 GPIF HP:https://www.gpif.go.jp/esg-stw/stewardship/2024stewardship_report.html
2025年4月30日付 GPIF HP:https://www.gpif.go.jp/esg-stw/stewardship/202504_interview.html

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