TNFD、「自然関連データ・パブリック・ファシリティ(NDPF)」の具体的な構想提示
2026.1.15
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は2025年11月6日、市場関係者向けの自然関連データ・アクセス強化に向けて「自然関連データ・パブリック・ファシリティ(NDPF)」の運営青写真と今後の活動に向けた8つの提言をまとめた報告書を発表した。NDPFはオープンアクセス型の統合的な自然関連データベースで、市場規制当局等によって設定されている科学的データ基準、オープンデータ基準、企業報告データ基準に整合させ、自然関連データにおけるデータの信頼性を担保するものである。
データを集約するのではなく、「接続」型プラットフォームを想定しており、複数のデータ提供者のデータセットをNDPF上で参照・利用できるようにすることが中核案となっている。この中核案は、①ユーザーが活用する自然関連データアクセス性の向上と品質の確保、および②データ提供者(政府機関や科学機関、企業など)への持続的な資金供給の仕組みの構築を目的としている。利用対象は、TNFDのLEAPアプローチやThe Science Based Targets Network (SBTN)の目標設定、移行計画、開示・報告などの企業・金融機関のユースケースを想定している。
今回提示された8つの提言は、下表のとおりである。
<NDPFの今後の活動に向けた8つの提言>
| 1.自然データ原則の採用 | データ品質向上のための原則群を策定する。 |
| 2.共通メタデータ基準 | NDPFに接続されるデータ群の共通メタデータを提供する。
|
| 3.データライセンスと利用契 約の調和 |
現状では、ユーザーが各種データ活用のために個別契約が必要 となり、手間と時間を要している。 このユーザーが直面するアクセス性、コスト、契約の複雑さに 対処するため、データ提供および利用契約の調和を推進する。 |
| 4.自然関連データ・パブリ ック・ファシリティ (NDPF)の設立 |
自然関連の有用な中核的なデータへのオープンアクセスを提 供する。 |
| 5.企業のデータ提供インセン ティブ |
企業が独自に集めたデータ(環境影響評価(EIS)など)を公共 財に還流させる仕組み
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| 6.国際自然データトラスト (Nature Data Trust)の創設 |
NDPFを運営し、資金配分や基準の実行を担う国際機関を創設 する。 |
| 7.自然測定プロトコルの開発 | 自然への依存・インパクトの共通指標と測定方法を整備する。 |
| 8.グローバルデジタルプロト コルの開発 |
バリューチェーン全体でのデータ共有を円滑にする規格を開 発する。 |
データ利用の料金モデルは、大規模企業・金融機関からの利用料で収益を得て、50人未満・年商200万USD未満のSME(中小企業)には無料で提供することを想定している。2040年までに1,200以上の有料ユーザーを想定している。
NDPFが2026年に開始した場合、3年目(2028年)に損益分岐点に達し、5年目(2030年)までにはデータ提供パートナーに総額年間3,000万米ドルのライセンス料を支払い、さらに国際自然データトラストが再投資するための年間200万米ドルの余剰資金を生み出すと予測している。
実際に一連のシステムを構築し、維持・発展していくための資金調達が可能かどうかなど、課題があることには留意する必要がある。しかし「世界的な公共財」として自然の状態や生態系サービスに関するデータの利便性を高め、データ収集者へ資金を循環させる新たな枠組みが実装されれば企業のリスク管理や投資判断の質向上、世界的なデータギャップの縮小に寄与し、ネイチャーポジティブ社会の実現の一歩となるであろう。
【参考情報】2025年11月6日付 TNFD HP
https://tnfd.global/tnfd-release-recommendations-for-upgrading-nature-data-for-market-participants/
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