コラム/トピックス

「急増する雹(ひょう)被害 発生メカニズムと地域・時期や対策は?」

[このコラムを書いた研究員]

池田 貴彦
専門領域
防災減災の基礎研究
役職名
マネジャー上席研究員
執筆者名
池田 貴彦 Takahiko Ikeda

2026.3.17

近年、日本各地で「雹(ひょう)」による大規模な被害が相次いで発生しています。降ひょうは予測が難しく、発生すると自動車や住宅、農作物に加え、人や動物にも甚大な損害をもたらします。

特に自動車保険(車両保険)や火災保険などの損害保険では、ひょう被害による保険金支払いが急増していて、経済的な影響も無視できません。

本コラムでは、ひょうの発生メカニズムや発生しやすい地域・時期、被害の現状と対策について、リスクマネジメントの観点からわかりやすく解説します。

この記事の
流れ
  1. 近年の雹(ひょう)被害の現状と経済的影響
  2. 雹(ひょう)の定義と発生メカニズム
  3. 雹(ひょう)が発生しやすい地域・時期と発生傾向
  4. 雹(ひょう)被害を減らすための対策
  5. 今後雹(ひょう)発生は増えるのか?
  6. まとめ:雹(ひょう)リスクへの備えは事前の対策が重要

1.近年の雹(ひょう)被害の現状と経済的影響

損害保険料率算出機構と損害保険協会によると、2022年と2024年に、損害保険会社はひょうによる被害により、自動車保険(車両保険)や火災保険で1,000億円を超える保険金を支払う事態となりました(図1)。特に自動車への被害が多く、車両保険未加入の場合は修理費を全額自己負担する必要があります。車両保険加入者でも翌年の保険料が上がるほか、大規模な降ひょうの場合は自動車や屋根の修理業者への依頼が集中し、修理完了まで数ヶ月かかるケースも珍しくなく、多くの経済的な負担が発生します。

また、農作物や人・動物への被害、街路樹や排水溝の詰まりによる道路冠水や住宅浸水など、ひょうの被害は多岐にわたります。経済的・社会的な影響は想像以上に大きいのです。

【図1】ひょうによる主な損害保険支払状況

(単位:億円)

※2011年、2017年の車両保険の支払保険金は未公表

※合計保険金は四捨五入の関係で車両保険と火災保険の合計と一致していない


(出所)損害保険料率算出機構・日本損害保険協会ホームページより当社作成

2.雹(ひょう)の定義と発生メカニズム

「ひょう」とは直径5mm以上の球形または塊状の氷粒子を指し、5mm未満は「あられ」と区別されます。ひょうは積乱雲内で発生し、雲の中の氷晶は重力と上昇気流により何度も上下運動を繰り返し、氷晶等と衝突し、凍結して成長します。特に「スーパーセル」と呼ばれる巨大な積乱雲は特殊な構造を持ち、強い上昇気流の周りで重力と釣り合い回転しながら長時間漂うことによって大きなひょうが形成されやすくなります。

【図2】ひょうの写真

(出所)熊谷地方気象台ホームページより抜粋

3.雹(ひょう)が発生しやすい地域・時期と発生傾向

ひょうは雨量計等の地上観測網で観測することはできません。昨今気象レーダーの発達により、雲内の粒子を判別できるようになってきていますが、落下中に融解して雨粒に変わることもあります。またひょうは局地的かつ突発的に発生するため、正確な観測や予測が難しい気象現象です。気象庁の統計によると、5月から7月がひょうの発生ピークで、長野県、栃木県、群馬県、北海道などで発生回数が多くなっています。地上の気温が高くなると、落下中にひょうが溶けてしまうため、発生頻度は低下します(図3、4)。

農作物の被害統計でも、同じく5月~7月に被害が集中し、都道府県別では福島、茨城、山形などでもひょうによる農作物の被害が多く報告されています。

【図3】月別ひょうの発生回数(1971年~2004年平均) 

(単位:回)

(出所)気象庁「気象災害統計」(1971年~2004年)より当社作成

【図4】都道府県別ひょう発生状況(1971年~2004年)

(出所)気象庁「気象災害統計」(1971年~2004年)より当社作成

4.雹(ひょう)被害を減らすための対策

ひょうの粒径が1cm以上になると車両損害、3cm以上では人的被害や住宅・窓ガラスの破損のリスクが高まります。風が強い場合は被害がさらに拡大します。抜本的な被害防止策はありませんが、以下の対策が有効です。

  • 気象予報や降ひょう予測情報をこまめにチェックする
  • 車両や自転車は屋根付きの場所に避難させる
  • 防ひょうカバーを活用する
  • 屋外作業や移動時は、ひょう注意報や警報に従い、屋内退避を心がける

特に近年は損害保険会社が気象予報会社などと連携し、降ひょう予測の精度向上とSNS等で早期情報提供に努めています。当社でも気象ビッグデータ解析と損害保険金支払いデータ、独自AI技術を活用し、降ひょう予測モデルの構築や精度検証などの取組みを行っています。こうした情報を活用し、事前の準備を怠らないことが重要となります。

5.今後雹(ひょう)発生は増えるのか?

海外では大型ひょう(5cm以上)の発生頻度が北半球で増加傾向、南半球で減少傾向という研究結果もありますが、地域差が大きく、地球温暖化との明確な因果関係もまだ解明されていません。日本国内でも統計的な傾向を掴むのは難しく、今後の観測体制の充実と予測精度の向上や早期化により、被害の軽減が実現されることが期待されます。

6.まとめ:雹(ひょう)リスクへの備えは事前の対策が重要

ひょうは突発的かつ局地的な災害で、大きなリスクとなっています。被害を最小限に抑えるためには、最新の情報を常に把握し、事前の対策を講じることが重要です。今後もひょう被害の動向に注目し、備えを怠らないよう心がけましょう。

【参考資料】

【関連ニュース】

SBI損保とMS&ADインターリスク総研、降雹予測モデルの構築および 精度検証を目的としたPoC(概念実証)を実施 ~降雹アラートで防災・減災に貢献~

https://www.irric.co.jp/topics/press/2025/0425.html

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