レポート/資料

自然災害時における従業員の早期業務復帰を支援する従業員向け防災・BCM教育のポイント ~従業員向け防災・BCM教育推進モデルとソリューション~【RMFOCUS 第97号】

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[このレポートを書いたコンサルタント]

小林 啓太
会社名
MS&ADインターリスク総研株式会社
部署名
リスクコンサルティング本部 リスクマネジメント第四部
BCMプロダクト推進グループ
執筆者名
上席コンサルタント 小林 啓太 Keita Kobayashi

2026.4.2

要旨
  • 災害時の初動対応と復旧対応は災害対策本部などの一部のメンバーのみではなく、対応実務の担い手である従業員がどう動くべきかを理解し、早期に業務復帰して動ける状態をつくる教育が必要である。
  • 従業員向け教育では、従業員へ伝えるべき事項を「棚卸し」し、どのように、どの程度まで教育・推進するかを「見える化」した上で、教育を実施する必要がある。
  • 従業員向け教育推進モデルや支援ソリューションを参考に、従業員向け防災・BCM教育のポイントについて解説する。

1. 防災・BCMにおける従業員教育の実態と推進のポイント

防災・BCMにおいて、所管部門を中心としたBCP等のルール整備や、災害対策本部等で実施する訓練など、コアメンバーを対象とした取り組みは多くの企業が進めている。これらは企業・組織として対応を進めるために不可欠である一方、災害発生時に実際に動くのは現場の従業員であり、事業復旧の諸対応を進めていくのも従業員である。

本稿では、BCP・BCMの所管部や災害対策本部メンバー、自衛消防隊員といった一部の要員を「活動要員」、その他従業員も含めた全従業員を「従業員」と定義し、防災・BCMに関する従業員教育と推進のポイントについて解説する。

まずは、企業の現在の従業員教育の取組実態について整理する。

図1に示したとおり、内閣府の調査 1)によると、8割以上の企業がリスクへの対応を実施していく上で自社従業員への取り組みの浸透に「課題がある」と回答している。

また、MS&ADインターリスク総研が2025年に実施した「第10回事業継続マネジメント(BCM)に関する日本企業の実態調査」2)では、「BCMに関する社内教育(研修・セミナーなど)は行われていますか」の問いに対し、「全社員を対象に定期的に行われている」と回答した企業はわずか16.1%にとどまり、活動要員の取り組みと比べて従業員教育は取り組みが遅れている領域であることがわかる。

【図1】リスクへの対応を実施していく上での課題についての回答結果(%)

【図1】リスクへの対応を実施していく上での課題についての回答結果(%)
(出典:内閣府「令和5年企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」2024年)

2. 従業員教育が進まない要因と推進の方向性

多くの企業が「取り組めていない」という課題認識を持ちながら従業員教育を進められていない要因として、活動要員向けのルール整備に手がかかるなどが想定される。MS&ADインターリスク総研では従業員向けに「何を目的に、どのように教育をすればよいか」という、そもそもの教育推進モデルが構築できていないことが主要因であるととらえている。

従業員向けの教育推進モデルが構築できていない要因としては、活動要員向け教育と従業員向け教育では目的や特性が異なる点がある。

活動要員向け教育は「整備したルールの着実な実施」が目的であるのに対し、従業員向け教育は「防災・BCM活動への協力」が目的となる。また、ルールの整備状況や危機意識の濃淡、対象者数なども異なるため、それらの差異をかんがみた教育推進モデルと教育コンテンツが必要となる。

これらの要因を踏まえ、従業員向け教育と推進のプロセスをMS&ADインターリスク総研が構築した教育推進モデルを参考にポイントを解説する。

3. 従業員向け教育推進の3STEPモデル

従業員向け教育推進モデルは実施事項を三つのSTEPで整理している。基本的な推進フローとあわせて図2に示す。

「教育の実施」(STEP3)に入る前に、従業員に伝えるべき事項を体系立てて整理する「棚卸し」(STEP1)、棚卸しした事項を従業員に伝えるための「見える化」(STEP2)を実施する点が特徴である。

【図2】従業員教育推進3STEP

【図2】従業員教育推進3STEP
(MS&ADインターリスク総研作成)

(1) STEP1:教育事項の「棚卸し」

従業員教育を推進するにあたっては、教育項目、すなわち企業として「従業員に伝えるべき事項」を明確にすることが大前提となる。そのためには、活動要員向けに定めた様々なルール等から、「従業員に伝えるべき事項」を抽出し、体系立てて整理する作業が必要となる。本稿ではこのような作業を「棚卸し」と表現する。この「棚卸し」の具体的な推進フローは・・・

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