コラム/トピックス

あおり運転罰則強化を契機とした安全風土の再徹底

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
交通リスク分野
役職名
リスクマネジメント第二部 交通リスク第一グループ グループ長
執筆者名
福島 康 Yasushi Fukushima

2020.7.2

道路交通法の一部を改正する法律案が国会で可決され、「あおり運転」の罰則強化が、6月30日に施行された。今回の法改正で、通行妨害目的で、交通の危険のおそれのある方法により、車間距離不保持、急ブレーキ禁止違反等、一定の違反をした場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金、また、これら違反行為により、高速道路での停車等著しい危険を与えた場合は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられることになった。

また、道路交通法とあわせ、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)が一部改正され、「あおり運転」が「危険運転致死傷罪」の対象に追加される。「あおり運転」により人を死傷させた場合、最高刑は懲役20年となった。

2017年6月に東名高速道路で発生した死傷事故、2019年8月に常磐自動車道で発生した「あおり運転」および暴行事件は、社会的な反響も大きく、記憶に新しい。

「あおり運転」に該当するような行為は、一種の攻撃行動であり、その背景には「苛立ち」や「怒り」の感情があると考えられる。「運転中に感じる苛立ち」を「スピードを出すこと」で解消するドライバーや、運転中に「怒り」や「焦り」の感情を感じるドライバーほど事故・違反経験が多い傾向であることなどが明らかになっている。また、運転中は、特に、焦り、苛立ち、怒りといった感情を喚起しやすい状況になると言われている。

警察庁が昨年実施したアンケートでは、約35%のドライバーが、過去1年以内に「あおり運転」の被害経験があると回答している。

日常の運転で、「あおり運転」の被害に巻き込まれることはありうる話であるし、また、自社の運転者が、運転中の状況や怒りの心理状況によっては、「あおり運転」の加害者になる可能性もある。

感情コントロールは、安全運転に求められる重要な技能の一つである。日常の仕事の進め方やコミュニケーションの取り方において、例えば、遅刻が多い、締切を守れない、同僚への挨拶が少ない、電話でよく怒っている等の行動がみられる人物は、自分の感情や行動のコントロールが不十分な要素があるかもしれない。

管理者は日常業務の中で、部下をよく観察し、他人に配慮できる社会性の高い人財の育成に努めていただくことも大切と考える。

新型コロナウイルス感染症への対応で、我々の日常生活が大きく変化している。環境の変化は、ストレスの大きな原因となり、ストレスは自動車の運転にも影響を及ぼす。

企業にとって、従業員の安全や心身の健康維持は重要な課題である。今回の法改正での「罰則強化」を契機に、「あおり運転」の防止とあわせ、あらためて、従業員の健康管理や心理的安全性の確保、安全第一の風土醸成について再徹底されてはいかがだろうか。

以上

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