コラム/トピックス

東京は“ブラックホール”なのか? 人口集中の実情と人口減少時代の街づくり

[このコラムを書いた研究員]

酒見 友康
専門領域
物流、モビリティ
役職名
シニア研究員
執筆者名
酒見 友康

2026.8.3

「東京への人口一極集中」と言われて久しいですが、なぜ東京への人口集中が進むのでしょうか?また、東京都は出生率が低いとされていますが、それは出産や子育ての環境が整っていないことを意味しているのでしょうか?

こうした疑問についてデータを紐解いてみると、東京は雇用や教育、医療、交通などの機能が高度に集積しているため人が集まりやすい一方、低い出生率は必ずしも子育て環境の悪さを示すものではないという、意外なことが見えてきました。

その上で、人口減少の速度を少しでも緩める「緩和」と、人口が減少しても住民が快適に暮らせるようにする「適応」の両面から、これからの街づくりを考えます。

この記事の
流れ
  • 日本では都市部、とりわけ東京への人口集中が加速
  • 全世界で進む都市部への人口集中
  • 「ブラックホール型自治体」とは何か
  • 出生率について
  • 人口減少への対応は「緩和」と「適応」の両面で
  • 人口減少社会で住民のQOLを向上させるカギ
  • スマートシュリンクを実現するために

1.日本では都市部、とりわけ東京への人口集中が加速

2025年に実施された国勢調査の人口速報集計結果では、人口減少ペースの拡大とともに都市部への人口集中の実態が浮き彫りになりました。都道府県単位で見ると、前回調査時(2020年)から増加したのは東京都と沖縄県のみでした。前回調査までは増加を維持していた埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、滋賀県、福岡県の6県も減少に転じました。

総人口に占める比率を見ると、東京都が最も高く、1950年の7.5%から2025年には11.6%にまで増加しています。東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県)の人口比率は同期間に15.5%から30.1%に、さらに大阪府、愛知県、兵庫県、福岡県を加えた上位8都府県では、同期間に32.3%から51.7%に達しています。上位8都府県の人口が、残りの39道県の人口を上回っているのです。

【図1】上位都道府県の人口ウェイト(1950-2025年)

上位都道府県の人口ウェイト(1950-2025年)
上位都道府県の人口ウェイト(1950-2025年)

(出所)総務省「令和7年国勢調査」等をもとに筆者作成

2.全世界で進む都市部への人口集中

人口の都市部への集中は、実は日本に限った話ではありません。国際連合が発表した「World Urbanization Prospects 2025(世界都市化見通し2025年版)」では、人口密度を尺度として人々が居住する地域を「都市(cities)」、「町(towns)」、「農村部(rural areas)」の3区分とし、人口移動の実態と将来推計を示しました。

図2のとおり、1950年の各居住地域別の人口割合は「町」40%、「農村部」40%、「都市」20%でした。その後、「農村部」の人口はほとんど増加せず、「町」の人口は増加し、「都市」の人口はさらに急速に増加したため、2025年の人口割合は「都市」が45%、「町」が36%、「農村部」は19%となりました。

国連の推計どおりに人口が増加すれば、2050年の居住地域別の人口構成割合(概数)は「都市」48%、「町」36%、「農村」16%となり、さらに都市部への人口集中が進むことが示唆されています。

【図2】居住地域別の世界人口推移と将来予測

居住地域別の世界人口推移と将来予測
居住地域別の世界人口推移と将来予測

(出所)国際連合「世界都市化見通し2025年版」

3.「ブラックホール型自治体」とは何か

2024年4月、民間有識者で構成された「人口戦略会議」は、出生率が低く他地域からの人口流入に依存する東京都などの自治体を「ブラックホール型自治体」と名付けました。「出生率の低い東京都心部に人口が流入しており、そのために日本全体の人口減少に歯止めがかからない」、「まるで東京は『人を飲み込むブラックホール』のようだ」という意味のようです。

厚生労働省の人口動態統計による2024年の都道府県ごとの合計特殊出生率で見ても、東京都は47都道府県中で最も低く、0.96となっています。全国的な傾向としては、東日本より西日本の方が高く、西高東低が顕著となっています(図3)。

【図3】都道府県別合計特殊出生率(2024年)

都道府県別合計特殊出生率(2024年)
都道府県別合計特殊出生率(2024年)

(出所)未来を選択する会議「人口問題白書2025」

4.出生率について

出生率にはいくつかの種類がありますが、新聞の見出しなどで「出生率」と記載されている場合、「合計特殊出生率」を指していることが多いようです。「一人の女性が一生涯に出産する子どもの数」などと説明されることも多いのですが、厳密には「その年における年齢別出生率を合算した推計値」であり、実際に一人の女性が生涯に産む子どもの数そのものではありません。

合計特殊出生率は出産可能年齢を15~49歳とし、その各年齢層の女性が生んだ子どもの数(出生数)をその年齢層の女性の人口で除すことにより各年齢層の出生率を求め、その値を15歳から49歳まで合算することにより算出します。分母となる女性の人口には、未婚女性も含まれています。

一方、有配偶出生率は出産可能年齢(15~49歳)の配偶者のいる女性を対象に、嫡出子(法律上の夫婦から生まれた子ども)の総数を、15~49歳の有配偶女性人口で除して求めます。

有配偶出生率で見た場合、東京都の値は図4のとおり、北海道、宮城県、秋田県、京都府、奈良県の5道府県を上回ります。さらに都心3区に限れば、沖縄県以外の45道府県を上回っていることがわかります。

【図4】有配偶出生率(2020年)

有配偶出生率(2020年)
有配偶出生率(2020年)

(出所)財務総合政策研究所 講演会資料「東京は『ブラックホール』なのか 少子化と出生率について考える」

東京都には未婚女性の流入が多いため、合計特殊出生率の分母となる女性人口が増えます。
一方、日本では未婚女性の出産が少ないため、結果として東京都の合計特殊出生率は低くなりやすいのです。

したがって、東京都の合計特殊出生率が低いことは、必ずしも出生環境が劣ることを意味するものではないと考えられます。東京への一極集中による弊害もあり、他地域の居住環境、就労環境を整えることにより地域分散を図ることは重要ですが、出生数の減少を食い止めることとは分けて考える必要があります。

5.人口減少への対応は「緩和」と「適応」の両面で

人口減少は多くの先進国が抱える問題ですが、これからの日本を含む中国、台湾、韓国など東アジア諸国では人類史上に前例がないほどのスピードで減少していきます。日本の地方都市では、人口減少を主因とする「シャッター商店街」が以前から問題となっていますが、最近では首都圏においても目立つところが増えているようです。これまでのところ人口の増加を維持している東京都でさえ、他県の人口減少が進む中、転入者が先細っていくことは自明であり、いずれ遠くない将来に人口が減少に転じることは避けられそうにありません。

気候変動への対応と同様に、人口減少への対応にも「緩和」と「適応」があります。すなわち、出産費用や教育費用の支援などの人口減少の速度を少しでも緩めようとする方法と、人口減少を事実として受け入れ、人口が減少しても住民が生活の質(QOL)を落とすことなく快適に暮らしていけるような街づくりをする方法で、最近では「スマートシュリンク(賢い縮小)」という考え方も広まりつつあります。

人口減少に適応する街づくりという政策にはネガティブなイメージがあり、看板政策とするには不人気な側面がありますが、その潮目が変わる兆候も出てきました。石破政権下の「地方創生2.0基本構想」(2025年6月閣議決定)においては、従来の「人口減少に歯止めを掛ける」という考え方に対し、「当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていく。」との方向性が示されました。

経済協力開発機構(OECD)が2025年に発表した「Shrinking Smartly and Sustainably: Strategies for Action(賢くかつ持続可能な形でシュリンクする:行動のための戦略)」という報告書では、人口減少と高齢化が多くのOECD加盟国で進み、特に遠隔地や小都市で深刻化しており、放置すれば、雇用縮小、税収減、空き家増、インフラの過剰・老朽化、サービス維持困難が連鎖し、地域衰退を招くと指摘しています。

同報告書は、人口が減少しても適切な政策枠組みがあれば、人口動態の変化と高い生活水準は共存可能とし、「緩和策」のみに頼るのではなく、「適応策」にも注力すべきことを強調しています。

6.人口減少社会で住民のQOLを向上させるカギ

人口減少社会において、住民のQOLを向上させるためのカギは大きく2つあると考えています。
それは「生産性の向上」と「都市機能の集約」です。

(1)生産性の向上

日本の時間当たり労働生産性(就業1時間あたり付加価値)はOECD加盟38カ国中28位と低位にあり、G7諸国の中で最下位となっています。以前から問題視されていましたが、働き手の不足が深刻化する中で、生産性を一気に高める必要があります。

そのカギはDX、AI、自動運転等の先端技術を活用した省人化・無人化の本格導入にあります。
特にフィジカルAIは、文字や音声でアウトプットを回答するだけでなく、実際にモノを動かすことができます。いわゆるエッセンシャル・ワーカーと呼ばれる労働者の業務もこなせる可能性があり、供給制約の問題を解消できるポテンシャルを持っています。

本年4月、ある日本の造船メーカーは、AIで動く造船ロボットを開発する計画を発表しました。
自律歩行が可能で、段差や階段などの障害物を避けながら作業現場に向かい、カメラやセンサーで捉えた作業箇所の状況をAIで把握・判断しながら溶接作業を進めます。ロボットの重量は60~70kgほどですが、腹部に内蔵した磁石でブロックに張り付くようにして上部まで登り、高所作業もこなします。2028年の実用化を予定しており、溶接工程の生産性を2倍に引き上げ、技術者不足を補い、建造能力を高めることが期待されています。

(2)都市機能の集約

人口が減少しているにもかかわらず、住民の居住するエリアが変わらなければ、広い地域に少人数がまばらに住むことになってしまいます。電気、水道、ガス、郵便、公共交通などのサービスは効率が落ち、サービスの単価は上がってしまいます。路線バスを例にあげると、赤字路線が廃止されたり、減便されたりという事態が全国で起きています。路線が維持された場合でも、運賃の値上げが相次いでいます。

こうした問題に対処するための方法としては、居住エリアを地域的に集約し、当該エリア内または近接地域に商業施設や役所、学校、病院等を配置することにより、人々の移動や輸送、配送距離を短くすることで各種サービスのコストを抑えることが可能です。

富山市では人口が郊外に拡散していたため、膨大な社会インフラ整備コストが市の財政を圧迫していました。このため、2002年頃からコンパクトシティー化の取組みを進め、自動車依存が極端に高い社会から脱却し、鉄道やバスなどの公共交通機関を縦横無尽に張り巡らすことで、市街地の中心部に市民を「誘導」することを目指しました。次世代型路面電車システム「LRT」と公共バスを接続することで市民の利便性が高まり、LRT沿線への居住促進や都市機能集積により、人口減少や高齢化に伴う社会的課題への対応も進められており、コンパクトシティーの成功事例として国内外に知られています。

7.スマートシュリンクを実現するために

自治体において、スマートシュリンクに対する機運がこれまで大きな潮流に至らなかったのは、国からの政策誘導も一因であるとの意見があります。施設整備の補助金等、国から自治体への支援はハード優遇の色合いが濃く、例えば地方交付税の配分も、道路が長いほど配分額が多くなる仕組みとなっているため、自治体の政策判断を歪めかねないという指摘です。

7月16~17日に鳥取市で開催された全国知事会議では、初めて「人口減少下における賢い縮小戦略」をテーマとして取り上げた分科会が設けられました。17日に採択された「鳥取宣言」では、人口減少社会においても持続的に必要な行政サービスが提供できるよう、縮小の連鎖に陥らないスマートシュリンクの視点を取り入れ、効率的な行政サービス提供体制全般の再構築を目指すことが盛り込まれました。本格的な人口減少時代を目前にして、自治体首長の意識も変わりつつあると感じます。

政府が年内に策定するとしている「人口総合戦略(仮称)」についても気になるところです。従来施策の延長線上ではなく、地方自治のあり方も含めて、人口減少下の日本社会に対する人々の不安を払拭するような、希望の持てる未来への指針を示すようなものであってほしいと思います。

【参考文献】

  • 財務総合政策研究所(2024)「東京は『ブラックホール』なのか 少子化と出生率について考える」
  • 総務省統計局(2026)「令和7年国勢調査 人口速報集計結果」
  • 未来を選択する会議(2026)「人口問題白書2025」
  • United Nations (2025), World Urbanization Prospects 2025 Summary of Results

会員登録でリスクマネジメントがさらに加速

会員だけが見られるリスクの最新情報や専門家のナレッジが盛りだくさん。
もう一つ上のリスクマネジメントを目指す方の強い味方になります。

  • 関心に合った最新情報がメールで届く!

  • 専門家によるレポートをダウンロードし放題!

  • お気に入りに登録していつでも見返せる。