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「交通ルールを守れている」と回答も実際は…電動キックボードユーザー調査で見えた“自分をよく見せたい心理”

[このコラムを書いた研究員]

新納 康介
専門領域
食料安全保障、マイクロファイナンス
役職名
主席研究員
執筆者名
新納 康介 Kousuke Niiro

2026.9.1

電動キックボードのシェアリングサービスは急速に拡大しています。シェアリングサービスのアプリダウンロード数は500万件を超え、稼働中の電動キックボードの台数は2万台以上にのぼります。一方で、電動キックボードによる交通違反の検挙数は年間4万件を超えており、さまざまな課題も浮き彫りになっています。

「便利さの裏に潜むリスク」――その実態を明らかにするため、MS&ADインターリスク総研は2026年1月に、シェアリングサービス利用経験者500人を対象にアンケート調査を実施しました。

アンケート調査の結果からは、「自分をよく見せたい」という心理から、回答者が交通ルールを遵守できているかに関して一見矛盾した回答をしている実態が見えてきました。その概要を紹介します。

この記事の
流れ
  • 約半数が電動キックボード運転時は常に交通ルールを「守れていた」と回答
  • 6割超が電動キックボード運転時に何らかの交通ルールを「守れていなかったかもしれない」
  • 「常に交通ルールを守れている」と答えた人の半数以上が、何らかのルールを「守れていなかったかもしれない」と回答
  • 「自分をよく見せたい」社会的望ましさのバイアスの影響

約半数が電動キックボード運転時は常に交通ルールを「守れていた」と回答

本調査では全回答者に電動キックボードに関する交通ルールの遵守度(常に交通ルールを守れていたか)について聞きました。その結果、「そう思う」とした回答者は46.6%となりました(図表1)。「そう思う」と「ややそう思う」の合計は89.4%でした。

【図表1】あなたが電動キックボードを運転された時は、常に交通ルールを守れていましたか(n=500)

あなたが電動キックボードを運転された時は、常に交通ルールを守れていましたか
あなたが電動キックボードを運転された時は、常に交通ルールを守れていましたか

6割超が電動キックボード運転時に何らかの交通ルールを「守れていなかったかもしれない」

本調査では全回答者に電動キックボード運転時に、「守れていなかったかもしれない交通ルール」について聞いています。その結果、65.6%が何らかの交通ルールについて「守れていなかったかもしれない」と回答しています(図表2、「違反は一切していない」が34.4%)。

「守れていなかったかもしれない交通ルール」で最も回答が多かったものが「車道の左側通行」で23.8%でした。「二段階右折」(18.0%)と「飲酒運転の禁止」(17.4%)がそれに続きます。

【図表2】ご自身が電動キックボードを運転された時に、守れていなかったかもしれないと思う
交通ルールは何ですか(いくつでも)(n=500)

ご自身が電動キックボードを運転された時に、守れていなかったかもしれないと思う交通ルールは何ですか(いくつでも)
ご自身が電動キックボードを運転された時に、守れていなかったかもしれないと思う交通ルールは何ですか(いくつでも)

「常に交通ルールを守れている」と答えた人の半数以上が、何らかのルールを「守れていなかったかもしれない」と回答

これまで本稿で紹介した調査結果を見ると、交通ルール全般の遵守度を尋ねる設問よりも、具体的なルールごとに尋ねる設問のほうが、違反を自覚する回答が増える傾向が見られます。設問の聞き方が異なるため単純な比較には注意が必要ですが、この違いは見逃せません。

そこで、さらに「常に交通ルールを守れているか」の設問で「そう思う」とした回答者に着目し、分析を行いました。ここでは図表1の交通ルールの遵守度の設問で、「そう思う」とした回答者群233名の、「守れていなかったかもしれない交通ルール」について集計しました(図表3)。

その結果、この回答者群の46.8%が「違反は一切していない」と回答していることがわかりました。
つまり、残りの53.2%が何らかの交通ルールを「守れていなかったかもしれない」と自覚していることになります。

【図表3】電動キックボードを運転された時に、守れていなかったかもしれないと思う
交通ルールは何ですか(常に交通ルールを守れていたとする回答者群、n=233)

電動キックボードを運転された時に、守れていなかったかもしれないと思う交通ルールは何ですか
電動キックボードを運転された時に、守れていなかったかもしれないと思う交通ルールは何ですか

「自分をよく見せたい」社会的望ましさのバイアスの影響

「常に交通ルールを守れている」と答えた回答者の半数以上が、個別には何らかのルールを「守れていなかったかもしれない」と回答しました。こうした現象は、決して珍しいものではありません。このような結果は、回答の一貫性だけでなく、質問の仕方や回答時の心理的な影響も考慮して解釈する必要があります。

アメリカの心理学者Allen L. Edwardsは1957年に「社会的望ましさのバイアス(Social Desirability Bias)」の概念を確立しました。これは、回答者が他の人から好意的に見られるように質問に答えようとする傾向、つまり「自分をよく見せたい」という欲求によって生まれる認知バイアスです。本調査の結果について、「社会的望ましさのバイアス」の影響を考慮すると、次のように解釈できます。

  1. 「電動キックボードを運転された時は、常に交通ルールを守れていましたか?」という総合的な質問では、社会的望ましさのバイアスの影響により、やや自信のない回答者も「そう思う」とした可能性がある。
  2. 一方で、個別の交通ルールについて尋ねられると、より具体的に振り返ることになり、結果として違反の自覚が表れやすくなった(バイアスの影響が弱まった)可能性がある。

バイアスの影響があるため、アンケート調査によって電動キックボードの運転実態を完璧に把握することは困難ですが、バイアスの影響を考慮して設問を設計し、回答の傾向を丁寧に見ることで利用者の意識や認識の特徴を把握する手がかりは得られます。本稿が、電動キックボードのシェアリングサービス利用者の交通ルール遵守について考える一助となれば幸いです。

【参考文献】

  • 警察庁(2025)『パーソナルモビリティ安全利用官民協議会第12回資料3』
  • 警察庁(2025)『事務局説明資料 第13回パーソナルモビリティ安全利用官民協議会』
  • 警察庁(2026)『事務局説明資料 第14回パーソナルモビリティ安全利用官民協議会』
  • 警察庁『特定小型原動機付自転車に関する主な交通ルールについて』
  • 日本マイクロモビリティ協会(2025)『日本マイクロモビリティ協会安全対策について』
  • King & Bruner (2000) ”Social Desirability Bias: A Neglected Aspect of Validity Testing”
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