地震発生時の車中泊避難 メリット・リスクなどを1,000人に調査 ~結果から見えること
[このコラムを書いた研究員]

- 専門領域
- 食料安全保障、マイクロファイナンス
- 役職名
- 主席研究員
- 執筆者名
- 新納 康介 Kousuke Niiro
2026.9.24
災害時の車中泊とは、避難所などの利用が難しいため、自家用車を一時的な生活・睡眠の場として使う避難行動を指します。自治体は原則として推奨していませんが、近年の地震災害では車中泊による避難がしばしば確認されています。
内閣府も2024年6月に公表した「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」の中で、「やむを得ず車中泊を選択する避難者が一定程度発生することが想定される」と指摘しています。
こうした中、自家用車を保有する住民が、自動車による避難についてどのように考えているのかを探るため、2026年7月にMS&ADインターリスク総研は、自家用車の保有者1,000人を対象にアンケート調査を実施しました。本稿では、地震発生時の自動車による避難、特に車中泊について回答者の考えを紹介しながら考えていきたいと思います。
流れ
- 地震発生時に自動車で避難したい人は半数超
- 車中泊のメリットは、「プライバシー」と「エアコン」
- 車中泊にともなう健康リスクの認識は高い
- メリットはリスクを上回る価値がある?
- 車中泊避難は現実的な選択肢なのか
- 自治体に期待される車中泊避難者の支援
地震発生時に自動車で避難したい人は半数超
消防庁は、地震発生時は「原則として徒歩で避難しましょう」と呼びかけていますが、自家用車を保有する人の意識はどうでしょうか。本調査では、地震によって自宅から避難が必要になった時に、自動車で避難(移動・車中泊)をしたいかを回答者に聞いています。その結果、「そう思う」と「ややそう思う」の回答の合計(意向あり)は56.4%(564人)でした。「そう思わない」と「全くそう思わない」の回答の合計(意向なし)は、43.6%(436人)でした。以降は、この2つの回答者群の車中泊に対する考えに違いがあるかを探ります。
【図表1】あなたが自宅にいるときに災害の情報が伝わり、自宅の外に避難することになったとします。
その時に自動車で避難(移動・車中泊)をしたいと思いますか(地震)


車中泊のメリットは、「プライバシー」と「エアコン」
本調査では、車中泊による避難は避難所と比べてどのようなメリットがあるかについて回答者に聞いています。地震発生時に自動車による避難の「意向あり」の回答者群(564人)では、「プライバシーを確保できる」(70.6%)、「エアコンや充電環境を得られる」(40.6%)という項目が上位になっています。割合は低くなるものの上位2項目は「意向なし」の回答者群(436人)でも同様です。
なお、平成28年熊本地震の後に熊本県が行った調査では、被災者が車中泊による避難をした理由として以下が挙げられました。その中には本調査で挙げられたメリットと一致しているものもあります。
- 安全確保のため
- プライバシーの確保のため
- ペットを連れて避難をするため
- 避難所の混雑を回避するため
【図表2】避難所と比べて、車中泊による避難のメリットはどんなことだと思いますか(いくつでも)


車中泊にともなう健康リスクの認識は高い
一般社団法人日本自動車連盟(JAF)などからは、車中泊による避難は、車内で過ごすことでエコノミークラス症候群、熱中症、一酸化炭素中毒を発症するリスクが指摘されています。本調査ではそれら健康リスクの認識について回答者に聞いています。その結果、地震発生時に自動車による避難の「意向あり」の回答者群の「詳しく知っている」と「知っている」の合計は79.6%と、多くの回答者がそのリスクを認識していました。「意向なし」の回答者群のそれは78.2%で、二つの回答者群の間に目立った差は見られませんでした。
【図表3】車中泊による避難は、車内で過ごすことにより、エコノミークラス症候群、熱中症、一酸化炭素中毒等の被害を発症する可能性があると言われています。あなたは、このことをご存じでしたか


メリットはリスクを上回る価値がある?
本調査では、回答者に車中泊のメリットは、健康リスクを上回る価値があるかを聞いています。この設問では地震発生時に自動車による避難をしたい「意向あり」と「意向なし」の回答者群の間で差が見られました。
「意向あり」の回答者群の「そう思う」と「ややそう思う」の回答の合計は65.1%である一方で「意向なし」の回答者群のそれは39.5%と差が見られました。これらから、地震の時に自動車で避難したい意向のある人は、そうでない人よりも車中泊による避難のメリットを高く評価する傾向がうかがえます。
【図表4】車中泊による避難のメリットは、健康リスクを上回る価値があると思いますか


車中泊避難は現実的な選択肢なのか
本調査の結果から、車中泊は自家用車を保有する人の一定数にとって「リスクを認識しつつも、なお選択されやすい行動」になっていることがうかがえます。前述の、過去の大震災時に、車中泊をした人の事情にもあるように、本調査で挙げられたプライバシー確保のようなメリットは、車中泊を選択する「やむを得ない」理由であり、健康リスクを上回る価値があるのかもしれません。
防災の専門家の中には、「エコノミークラス症候群のリスクを軽減できれば体育館より車中泊が『よりましである』」という考えを持つ人もいます。しかし、その一方で、車中泊を避難の選択肢として考える際には、健康リスクに加えていくつかの条件、制約も踏まえる必要があります。車中泊による避難生活は自家用車があれば成立するわけではなく、安全な駐車スペースに加えて、トイレ、生活に必要な物資、ガソリンなどが必要となります。災害時はそれらが簡単に手に入るとは限りません。
そのため、やむを得ず車中泊による避難をするにしても、それは可能な限り短期間にとどめることが望ましいでしょう※。もっとも、やむを得ない事情により車中泊が長期化する場合もあるため、その際には健康管理、衛生環境の維持などに十分に配慮する必要があります。
※)群馬県が2021年に公表した「災害時における避難の基本的考え方」には、「車中避難は発災前後1、2日程度の「命を守る避難」の選択肢として位置付ける」と記載されています。熊本市は「車中泊避難者支援ガイドライン」で、車中泊避難は、健康管理や避難者の状況把握の面で課題があり望ましいものではないこと、長期の生活を送る手段として適切ではないことから、「車中泊避難は7日間を目安とし、周辺の避難所や避難者に応じた支援場所を案内する」としています。
自治体に期待される車中泊避難者の支援
前述の「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」では、「地域の実情に応じ、自治体ごとに、災害時の車中泊避難者の支援方策について平時から検討準備することが必要」としています。具体的には、車中泊避難を行うためのスペースを平時から検討、公表することや、そのスペースの設置・運営に係るマニュアルを作成することなどが自治体には期待されています。
ただし、車中泊避難者の支援策の整備は簡単ではありません。読売新聞によれば2026年の3~4月時点で、道府県庁所在地と東京23区、政令市、中核市の計109自治体のうち、車中泊避難用スペースを確保していない自治体は75に上りました。また、車中泊避難者の対応マニュアルを作成していた自治体は20にとどまっています。こうした車中泊避難者に対する自治体の支援方針と支援策の整備状況も住民に広く知られることが重要だと思います。
【参考文献】
- あいち・なごや強靱化共創センター、名古屋大学減災連携研究センター 自治体研究会(2022)『車中泊避難GUIDE』
- 一般社団法人日本自動車連盟(JAF)(2026)「災害時の車中泊避難で注意すべきこと」
https://jafmate.jp/car/traffic_topics_20260729_1199511.html - 熊本県(2023)『平成28年熊本地震における車中泊の状況について』
- 熊本市(2026)『熊本市車中泊避難者支援ガイドライン』
- 群馬県(2021)『災害時における避難の基本的考え方 -群馬県避難ビジョン-』
- 日本防火・防災協会(2024年)「車中泊避難所の可能性について~全国初の車中泊避難所の取り組みで見えてきた課題~」『地域防災No.59』
- 読売新聞オンライン『災害時の車中泊対応マニュアル、主要自治体6割超が未作成…熊本地震や能登地震では健康被害続出』2026/05/10
災害時の自動車避難に関する意識調査 ~車で避難したい意識と、その背景にある認識
【リサーチレター(2026年8月)】
https://rm-navi.com/search/item/2632