解説コーナー|食品安全マネジメントシステムFSSC22000_V7への対応における留意点 【第2回】新PRP規格の主な変更点とPRP関連文書の見直しポイント
2026.10.21
はじめに
前回は、FSSC22000_V7(以下「V7」という)への改訂理由、Version6.0(以下「V6」という)からの主な変更点および移行対応について解説した。
※前回:【第1回】まず押さえたいFSSC22000 V7.0の変更点と対応の進め方(https://rm-navi.com/search/item/2611)
V7では、前提条件プログラム(Prerequisite Programs:PRP)の参照規格が見直された。PRPは食品安全マネジメントシステム(FSMS)の基盤であり、製造、品質保証、設備保全、購買、物流・倉庫等、多くの部門に関係する。このため、箇条番号の読み替えや文書上の差分対応にとどまらず、既存の一般衛生管理および現場運用が、新たな規格体系の下でも有効に機能しているかを組織横断で確認する必要がある。
本稿では、一般的な加工食品メーカーを対象に、V7で適用するISO 22002シリーズの構成、旧ISO/TS 22002-1からの主な追加・明確化事項、およびV7の追加要求事項も踏まえたPRP関連文書の見直しポイントについて解説する。
1.V7で適用するISO 22002シリーズの構成
一般的な加工食品メーカーは、V6までは主にISO/TS 22002-1に基づきPRPを整備してきたが、V7では、食品・飼料・食品包装材・輸送等のサプライチェーンに共通する要求事項を定めたISO 22002-100:2025と、食品製造業固有の要求事項を定めた ISO 22002-1:2025とを組み合わせて適用していく必要がある(以下、規格末尾の「:2025」は省略し、両規格を「新PRP規格」という)。
図表1に、加工食品メーカーに適用されるPRP規格の構成と、PRPの実効性を補完・強化するFSSC 22000の追加要求事項に関連する主な管理項目を示す。
図表1 食品メーカーに適用されるPRP規格および関連する主な管理項目
| 規格・要求事項 | 主な位置付け | 主な管理項目 |
|---|---|---|
| ISO 22002-100:2025 | 食品や飼料、食品包装材、輸送等のサプライチェーンに共通するPRP要求事項 | 敷地・施設、ユーティリティ、有害生物防除、廃棄物、設備、購入材料、保管・輸送、清掃・洗浄、従業員衛生、食品防御・食品偽装等 |
| ISO 22002-1:2025 | 食品、原料、ペットフード等の加工に関する追加要求事項 | 食品製造工程における排水、ボイラー用化学薬品、バルク原料受け入れ、微生物・アレルゲン・物理的・化学的汚染の予防、手直し等 |
| FSSC22000_V7の追加要求事項 | PRPの実効性を補完・強化するFSSC22000の追加要求事項 | サービスと購入資材の管理、ラベリング、食品防御、食品偽装対策、食品安全・品質文化、品質管理、設備管理、食品ロス・廃棄物等 |
なお、自社で樹脂レジン等から食品接触容器を製造し、その容器に食品を充填する事業所では、ISO 22002-4の適用要否も確認する必要がある。適用規格は認証範囲、製品および活動内容により異なるため、判断に迷う場合は早い段階で認証機関に確認することを推奨する。
2.新PRP規格における主な変更点と取り組み例
旧ISO/TS 22002-1から新PRP規格への移行では、箇条構成の再編や表現の整理に加え、新たに独立した要求事項や、管理対象、責任、力量、確認方法および異常時対応等が具体化された事項がある。図表2に、明確化ないし追加事項の観点から主な変更点と取り組み例を示す。
図表2 新PRP規格の主な変更点(追加事項・明確化事項)と取り組み例(一例)
| 管理事項 | 参照箇条 | 主な変更点 | 取り組み例 |
|---|---|---|---|
| 敷地・周辺環境の管理 |
|
【明確化】
|
|
| ユーティリティおよび照明 |
|
【明確化】
|
|
| 有害生物防除 |
|
【明確化】
|
|
| 廃棄物、食品ロスおよび再利用・再使用 |
|
【追加事項】
|
|
| 設備の適切性および保守 |
|
【明確化】
|
|
| 購入材料、発送および輸送 |
|
【明確化】
|
|
| 化学的汚染の予防 |
|
【追加事項】
|
|
| 要員衛生、来訪者および請負業者管理 |
|
【明確化】
|
|
| 食品防御および食品偽装対策 |
|
【追加事項】
|
|
【追加事項】旧規格では独立して明示されていなかった事項または新PRP規格で新たに管理対象として明示された事項※
【明確化】旧規格にも関連する要求はあったものの、対象範囲、責任、管理方法または確認内容等が具体化された事項
※旧規格に同趣旨の管理が全く存在しなかったことまでを意味するものではない。
上記の取り組み例は、新たな帳票を増やすことを意図するものではない。既存の作業標準書、点検記録等を見直し、確認者、評価結果、是正処置等の必要な情報を追記することで対応できる場合も多い。自社の製品、工程およびリスクに照らして、ブラッシュアップの必要性を判断することが重要である。
3.V7の追加要求事項を踏まえたPRP関連文書の見直しポイント
V7の追加要求事項には、PRPの運用を補完・強化する項目が含まれる。このため、新PRP規格への対応にとどめず、V7の追加要求事項との整合も確認する必要がある。PRP関連文書を見直す際に両者をあわせて確認することで、文書間の重複を整理し、既存の記録を活用できる場合がある。
図表3に、V7の追加要求事項のうち、PRP関連文書の見直し時に確認すべき代表的な項目を示す。
図表3 V7の追加要求事項を踏まえたPRP関連文書の主な確認事項
| V7の追加要求事項 | 関連するPRP管理 | 文書・記録の主な確認事項 |
|---|---|---|
| 2.5.6 アレルゲンの管理 |
アレルゲン | アレルゲン一覧、交差接触のリスク評価、製造順序、洗浄、検証、教育、年1回以上の見直し等 |
| 2.5.7 環境モニタリング |
環境衛生・微生物管理 | 病原菌・腐敗菌・指標菌のモニタリング、傾向分析、モニタリングプログラムの定期見直し等 |
| 2.5.10 輸送、保管および倉庫 |
保管・輸送 | 先入れ先出し、倉庫管理、輸送タンク使用時の洗浄および供給者との合意文書・仕様書による管理等 |
| 2.5.11 ハザード管理および交差汚染防止手段 |
異物・交差汚染防止 | 異物検出装置の必要性の評価、装置管理、ガラス・硬質プラスチックの破損管理等 |
| 2.5.12 PRP検証 |
PRPの現場確認 | 全PRPの実施状況、施設・設備・環境の状態に関するリスクに基づく現場検証等 |
| 2.5.15 設備管理 |
設備・保全 | 購入仕様、衛生設計、供給者による仕様適合の証拠、変更管理、試運転記録 |
文書改訂担当部門だけで対応するのではなく、購買、品質保証、製造、設備保全、商品開発、物流・倉庫等の関係部門が、現場運用と照合しながら確認・見直しを進めることが重要である。
おわりに
本稿では、一般的な加工食品メーカーを対象に、新PRP規格の構成、旧ISO/TS 22002-1からの主な変更点、およびPRP関連文書の見直しポイントを整理した。今回のPRP移行では、規格番号や文書表現を整えるだけでなく、既存の管理が新たな規格体系の下でも現場で有効に機能していることを確認する必要がある。既存の規程、記録および現場運用を活用し、不足する管理を優先して補うことで、現場負担を抑えながらV7への移行を進めることが期待できる。
次回は、V7対応で比較的優先度の高い「食品安全・品質文化の醸成」および「食品防御・食品偽装対策」について、食品事業者における取り組み例を交えて解説する予定である。
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