コラム/トピックス

中国駐在8年目を迎え…

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
事業場における防災・安全管理
役職名
総経理
執筆者名
海司 昌弘 Masahiro Kaishi

2013.5.24

私自身、ここ中国上海に駐在し、4月で8年目を迎えた。
北京オリンピック、上海万博等、様々な中国の発展を間近に見つつ、「リスクの宝庫」とも言われる環境下での経験を踏まえ、今回は、'中国'について、以下キーワードから感じるもの等をご紹介したい。

1. チャイナリスク

よく「法改正や制度改定が多すぎたり、変わり過ぎたり」等の声が聞かれる。ただ、これだけの発展・発達の速度であれば、当然ながら法律や制度も走りながらフィットさせていかざるを得ないと考える。またあるところでは、「各地で制度の運用がマチマチで、管理が煩雑」とも聞く。皆さん(特に日本本社の方は)、中国を一つとして捉えがちであるが、日本の25倍近くもある広大な国土で、それぞれに異なる地域特性、文化・風習等を持つことからもわかるよう、中国を一つとして考えることにそもそも無理がある。そのため、例えば複数の国の集合体として捉えてみてはどうだろうか。
個別の事例としても「デモ」「スト、労働争議」「コピー商品」「食の安全」「異なる商習慣」等様々あるが、我々が「理解できない」「受け入れられない」様々なリスクを、「チャイナリスク」と位置づけ、蓋をしてしまっている、もしくはしょうがない等と諦めてしまっているように、多くの場面で感じる。

2. 反日

過去にも幾多の反日行動はあったが、2012年9月の雰囲気は、私自身も過去にない緊張感を味わった。
しかし、海外のビジネスについては、当然ながら国対国の政策や感情等に左右されることは往々にしてあると考える。中国市場への進出理由は様々かと思われるが、薔薇色で明るい未来だけを見ていればいいのではなく、現実は非常に厳しく、ビジネスリスクを受け入れ、ビジネスチャンスに変化させていく覚悟がなければ、異国でのビジネス拡大・成功はないと考える。異国でのビジネスを志向する中で、中国をどう位置付けるのか、それぞれの会社としての経営判断をどう舵をきっていくのか、改めて問われた事象と考える。

3. 現地化

多くの企業で、経営課題として「現地化」が叫ばれている。ただ一番「現地化」できていないものは、実は日本本社からの「現地への権限移譲」と、駐在員自体の「現地化」といった、我々自身の行動ではないだろうか。
例えば、本社の誤った「現地化」方針により「責任」だけが現地に負わされ、ベクトルが部門間で著しくかけ離れている事業場の事例、「海外駐在員=本社からの派遣者=偉い?」と勘違いしてしまい、中国語や中国文化を全く理解しようともせず、個室に居るだけで責任を取らない経営層やマネージャー層や、逆に中国語が喋れるだけで仕事を全くしない高齢層がいる事例、一方で、若くして(社有車があてがわれる等)会社を代表した駐在と勘違いしてしまった若年層がいる事例等、いろいろな悩ましい課題が見受けられる。このような中で、現地のスタッフをどのように成長、発展させることが出来るであろうか?
嘗ての低コストだけでの中国進出は終焉に近いと考える。「中国市場」にどのように向き合い、真の「現地化」が出来るかどうかが、これからの中国ビジネスのキーワードと考える。

<海司 昌弘:インターリスク上海 総経理>
事業場における防災・安全管理。
中国へは、2006年4月、(現)三井住友海上(中国)有限公司の初代リスクマネジメント部長として赴任。2010年3月、インターリスク上海の設立にあわせ、初代総経理に就任。

以上

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