コンサルタントコラム

福祉・介護サービスのあり方について思うこと

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
福祉・医療分野におけるリスクマネジメント、福祉・介護分野を中心とした社会制度、企業における製品安全、リコール関連、緊急時対応計画、リスクコミュニケーション、その他危機管理全般。
役職名
法務・環境部 主任コンサルタント
執筆者名
砂川 直樹 Naoki Sunagawa

2008.4.1

高齢者人口の増加に伴い、介護サービスを必要とする高齢者が急激に増えることが予想され、介護サービスが日常生活に必要不可欠な社会インフラとして整備されつつある。

老後の不安を和らげ、充実した老後を思い描けるようになるためには、介護サービスの充実が図られ、誰でも自分に応じた適切なサービスを自ら選んで受けられることが大前提である。介護保険制度の導入等によって、それらが制度上一定保証されるようになったが、我々は本当に安心な老後を思い描けるであろうか。

介護に対する不安の一要因として、介護サービスに関する情報が乏しいことがあげられる。実際に介護サービスを利用しようとした際、どの事業者がどのようなサービスを提供しているのか、介護サービスに関して入手できる情報が意外と少ないことに気づく。

規模や設立年など外形的な情報は一定把握できるものの、例えば、注力しているサービスはどのようなものか、安全確保の為にどのような取組を行っているかなど、ソフト面についてはなかなか見えてこない。その背景として、特別養護老人ホームなど福祉施設では、入所待ちが多数存在し、多くの施設では労せずして利用者が集まることから、今後施設を利用しようとする人たちに対して主体的に情報開示を行うインセンティブが乏しいことがあげられる。

現在、行政主導で「情報開示の標準化」や「第三者評価制度」が整備されつつあるが、利用者の視点に立った実効性の高い評価や情報開示がなされなければ、結局は事業者のための「仲間内による制度s」になりかねない危うさを含んでいる。

介護サービスに限らず、本来福祉サービスとは地域に根ざしたものであるはずだ。地域福祉の実現とは、ただ単に地域に福祉施設が存在しているだけではなく、地域のニーズを把握し、地域の人たちが必要とするサービスを提供することを意味する。

そのためには、行政主導の受身的なサービス提供から脱却し、自ら主体的に地域市民と対話することが必要である。福祉サービスを地域に解放し、地域市民との双方向のコミュニケーションを図ることによって、サービスの充実を目指し、併せて地域市民も福祉サービスに対する理解を深め、将来への不安を和らげることが本来の姿ではないかと考える。

以上

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