港湾における地震・津波対策について【BCMニュース 2012年 第8号】
2013.2.1
はじめに
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、マグニチュード9.0の地震とそれに伴う巨大な津波が発生した。その結果、東北地方太平洋側を中心に多くの港湾が長期にわたって利用不能となり、輸出に依存する企業を中心に業務に多大な支障が生じた。
今後、首都直下地震や東海・東南海・南海地震の発生可能性が高いと言われており、東京・横浜、名古屋、大阪・神戸など日本の経済を支える三大港湾地区の地震・津波対策は喫緊の課題となっている。
本稿では、東日本大震災における港湾被害とその復旧状況、国の対策の現状と企業が準備すべき対策について紹介する。
1. 東日本大震災における港湾被害と復旧状況
(1) 港湾の被害状況
今回の震災による被害の特徴は、津波による防波堤の物理的な被害が甚大であったことであり、その結果、津波が湾内に侵入し、荷役機械、電気設備を中心とした港湾施設が直接被害を受けたり、コンテナが散乱したりする被害が発生した。また、液状化により岸壁背後のエプロンや荷捌き地が沈下を起こし、陥没や大きな段差を生じる被害も発生した。加えて、地震後の地盤沈下によって、高潮時には岸壁が浸水するため、使用できなくなる港が生じた。
国土交通省の調査では、2012年1月時点での港湾関連土木施設の被害報告額は約4,126億円に上る。東北最大の仙台塩釜港でも7.2m程度の津波が来襲し、津波防波堤やほとんどの港湾設備が破損、多くのコンテナも流される被害を受けた。(図1および写真1から7参照)
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