レポート

異常気象による風水害の影響とその対策 <中国風険消息(中国関連リスクニュース)2024 No.1>

2024.8.2

見どころ
ポイント
  • 2024年は世界規模での温暖化とエルニーニョ現象の影響により、世界各地で激しい大雨や気温の上昇が観測されている。
  • 2024年4月と6月に華南地域で発生した風水災害は深刻な被害をもたらした。特に広東省では4月に豪雨、洪水、雹、竜巻など様々な災害が発生し、各地域に甚大な影響を及ぼした。
  • 異常気象時の風水災害に対応するためには、ハードとソフトの両面から、日常対応、直前対応、事業復旧という3つの側面で対策を講じる必要があり、各対策について解説する。

1. 2024年に発生した異常気象とその原因

2024年は大雨や洪水、干ばつ、高温など、地球規模で異常気象が発生している。4月から6月にかけて、ブラジル、アフガニスタン、アラブ首長国連邦、イエメンなどで記録的な大雨が観測され、広範囲にわたる洪水が発生した。4月16日にはアラブ首長国連邦の一部で年間平均降水量の約2倍の大雨を観測し、大規模な洪水が発生した。
中国においても、4月から6月にかけて例年と比べ、大雨、洪水、高温、干ばつが多く発生した。当初は広東省、福建省、江西省で大雨と洪水が発生し、その後、大雨の区域は徐々に南部から北部に遷移し、6月には湖南省、重慶省、安徽省にも影響を与えた。
中国で発生した異常気象の主な理由は①地球温暖化、②エルニーニョ現象の2つの現象が考えられる。 次に2024年4月~6月にかけて中国で発生した異常気象について、それぞれの現象を解説する。

1) 地球温暖化

2024年の4月から6月にかけて、地球全体の平均気温は過去最高を記録した(図1)。一般的に、気温が上昇すると、大気中により多くの水蒸気が含まれるため、降水量が増加する。
また、温度が高くなると大気の対流は活発になるため、大気中の水蒸気が高い高度まで流入する可能性が高くなり、雨が発生しやすくなる。
中国の4月から6月の平均気温に着目すると、例年よりも約1℃~2℃高い(図2)。広東省では、2024年4月の平均気温が24.4℃と、例年を2.2℃上回り、4月の最高気温の記録を更新した地域もあった。
降水量では、広東省の4月の月平均降水量が497.4mmと過去最高を記録し、過去の同時期の平均降水量を181%上回った。広東省最大の国家気象観測所(佛網県)の月間累積降水量は1152.4mmに達し、この記録は上海市の年間平均累積降水量(1273mm)に匹敵する降水量となった。
6月に入ると、広東省では例年の平均気温との差が見られなくなった。平均降水量も今年の月平均降水量(352.1mm)と過去の平均降水量(329.7mm)の差が小さくなったことから、気温の上昇が降水量の増加に影響したと考えられる…

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