コラム/トピックス

バイオマス発電とは?メリット、デメリットは?“そもそも”から今後の動向まで、わかりやすく解説

[このコラムを書いた研究員]

池田 貴彦

専門領域
リスク管理・社会保障制度
役職名
マネジャー上席研究員
執筆者名
池田 貴彦 Takahiko Ikeda

2025.1.24

この記事の
流れ
  • バイオマス発電とは
  • バイオマス発電ってなんでサステナブルなの?
  • バイオマス発電の発電目標について
  • バイオマス発電拡大への課題
  • まとめ

“バイオマス発電”という言葉を聞いたことはありますか?去年12月には山口県下関市で、9月には千葉県市原市で営業運転を開始、山形県西川町ではバイオマス発電を活用した取り組みが…。少し調べてみただけで、バイオマス発電をめぐっていろいろな動きがあるようです。
ただ、そもそもバイオマス発電ってどういうものなの?メリットやデメリットは?そして、今後はどうなっていくの?そんなバイオマス発電の“今さら聞けない疑問”について、わかりやすく解説します。

バイオマス発電とは

バイオマス発電は、再生可能エネルギーの一つです。再生可能エネルギーとは温室効果ガスを排出せず、国内生産が可能である重要なエネルギー源で、太陽光、風力、水力等が該当します。

バイオマスエネルギーの利用はそもそも人類が木材を燃やして使い始めた100万年前に起源があるとされていますが、発電への利用は1960年代にアメリカで廃材を利用して行われたことが始まりといわれています。

バイオマス発電にはさまざまな種類の発電方法がありますが、一番多いのは木材を燃料用に加工したチップやペレット等(木質バイオマス燃料)をボイラーで燃焼させて高温・高圧の蒸気を作り、その蒸気の力でタービンを回して発電する方法です。

太陽光や風力による発電は季節や天候に左右されますが、バイオマス発電は安定的に電力を供給でき、発電量の調整が可能な再生可能エネルギーとして位置づけられています。

バイオマス発電

また、その際に発生する排熱をエネルギーとして利用することもできます。

バイオマス発電ってなんでサステナブルなの?

バイオマス発電で使用する燃料は、森林から伐採した間伐材・林地残材のほか、住宅等の建設資材の解体材や廃材、製材等の残材、支障木、剪定材等の木材を燃焼して発電します。木材を燃焼するとCO2を排出しますが、成長過程において光合成により大気中のCO2を吸収して生育しているため、排出と吸収によりCO2の増減に影響を与えない「カーボンニュートラル」なエネルギー源として整理されています。

しかし、間伐材や林地残材等ではなく、燃料として利用するために天然林を伐採すると、かえって大気中にCO2を排出し、さらに生物多様性を破壊することになってしまいます。また、伐採や運送時にはCO2を排出します。特に海外から燃料を輸入する場合は、海上輸送時に多くのCO2を排出しているため、カーボンニュートラルではないのでは?との意見も環境団体を中心に多数出ています。

日本のバイオマス発電で、おが粉等を粉砕して乾燥させた原料を圧縮成形した木質ペレットを使用する場合は、そのおよそ95%をベトナムやアメリカ、カナダからの輸入に頼っているというのが実態です。

バイオマス発電の発電目標について

今後の日本の電力需要は1~2割程度増加する見込みです。現在策定中の第7次エネルギー基本計画では、全発電量に占める再生可能エネルギーの電源構成割合を2040年に40%~50%程度として主力電源化する計画です。

バイオマス発電の全発電量に占める電源構成割合は4.1%です(2023年度速報値)。第6次エネルギー基本計画では2030年の電源構成割合を5%程度としていましたが、今第7次エネルギー基本計画では2040年に5~6%程度へと若干増加させる目標です。電力需要が増加するため、実質的にバイオマス発電の発電量は現在の401億kWhから、最大で720億kWh を目指すことになります。

全発電量に占めるバイオマス発電の割合の行方は?

バイオマス発電拡大への課題

バイオマス発電は、発電コストの大半を収集・運搬に係る燃料費が占めています。昨今の木材の高騰等により事業採算性が悪化し、事業から撤退する事業者も出てきました。

また、メガバンクではバイオマス発電に対する新たな融資は供給網全体での環境負荷を考慮する等、融資条件を厳格化するとの報道もされており、今後の拡大へは逆風が吹いています。

最近は大型の新規事業の組成が少なく、電力会社の具体的な事業計画からも新たなバイオマス発電所の建設を読み取ることができません。

まとめ

廃材等木材の利活用という観点や再生可能エネルギーの中での調整弁としての位置づけを踏まえれば、バイオマス発電には一定の役割が期待されています。発電と同時に熱供給を行うことや、燃料の地産地消によるコスト削減により事業採算性を高める等、今後バイオマス発電がどのような発展を見せるのか、見守る必要があります。

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