
電動キックボードの法改正から2年、交通違反や事故の現状は?
[このコラムを書いた研究員]

- 専門領域
- リスク管理・社会保障制度
- 役職名
- マネジャー上席研究員
- 執筆者名
- 池田 貴彦 Takahiko Ikeda
2025.9.25
電動キックボードに乗って通りゆく人たちを街で見かけることが増えたと感じている人も多いかもしれません。
その電動キックボードに関しては、2023年7月に道路交通法が改正され、一定の要件を満たす場合は、運転免許がなくても運転することができるようになりました。
当初から交通違反や事故の多発が懸念されていた電動キックボードですが、法改正から2年がたち、交通違反や事故の動向はどうなっているのでしょうか?データを使って分かりやすく解説します。
流れ
- 電動キックボード 法改正から2年で台数が大幅増
- 法改正後の2年間の交通違反(検挙)と事故件数は?
- 電動キックボードが関連する事故はどのような事故?
- 飲酒による事故割合が高い電動キックボード
- 基準に適合しない電動キックボードの流通も
- まとめ
電動キックボード 法改正から2年で台数が大幅増
2023年7月の道路交通法改正では、一定の規格の電動キックボードは従来の一般原動機付自転車から新たな区分の特定小型原動機付自転車(以下「特定小型原付」)に移行されました。それともない、16歳以上が免許不要で利用できるようになり、ヘルメットの着用が努力義務化されました。警察庁の有識者懇談会の資料によれば、電動キックボードのシェアリング事業者大手2社の稼働台数は2023年7月の7,662台から2025年3月には23,220台へ大幅に増加しています。
法改正後の2年間の交通違反(検挙)と事故件数は?
警察庁が公表しているデータで検挙件数と事故件数の状況を見てみましょう。電動キックボードを含む特定小型原付に関する検挙件数は、図1の棒グラフ(左目盛)の通り、法改正後右肩上がりに増加し、2024年9月をピークに減少しました。その後一旦増加に転じたものの、直近では再び減少しています。
また、折れ線グラフは事故件数(右目盛)を示していますが、検挙件数とほぼ同様の動きが見られます。シェアリング事業者大手2社の稼働台数が増加し、普及が進んでいますが、急激に事故が増加している状況にはないと考えられます。
直近の検挙件数と事故件数は、ピーク時と比べて7~8割前後となっていて、事業者を含めた交通ルールの周知等、安全対策に対する効果が出てきているとも考えられます。2025年4月の増加は、年度の変わり目なので、交通ルールに不慣れな電動キックボードの新規利用者が影響した可能性があります。
【図1】特定小型原付に関する検挙件数と事故件数推移(2023年7月~2025年6月)


(出所)警察庁ホームページより当社作成
電動キックボードが関連する事故はどのような事故?
図2は2023年の電動キックボードを含む特定小型原付(上)および自転車(下)が関連する事故における相手当事者の割合を比較したものです。
自転車は対四輪車との事故が76.3%と圧倒的に多い一方で、特定小型原付は、対四輪車との事故が33.7%、次に単独事故が29.6%、対自転車が16.0%、対歩行者が15.4%となっています。
特定小型原付の単独事故が多いのは二輪の立位型が多いため、段差や低速時に安定せずに転倒しやすいという実態が現れているようです。また、特定小型原付の歩行者に対する事故の半分以上は道路を横断中の事故で、信号の遵守、一時停止の基本ルールが徹底できていないと考えられます。
【図2】特定小型原付(上)・自転車(下)関連事故の相手当事者の割合(2024年)




(出所)多様な交通主体の交通ルール等の在り方「パーソナルモビリティ安全利用官民協議会」
第12回(2025年6月27日)資料3より当社作成
飲酒による事故割合が高い電動キックボード
2024年の特定小型原付の発生事故338件のうち、飲酒があったのは51件(15.1%)と自転車(0.6%)や一般原付(0.5%)の割合に比べて圧倒的に多くなっています。これは、深夜(0時から5時台)の発生割合が高い(全体の68.6%)ことから、飲酒を伴う飲食後、公共交通機関が運行していない時間帯に、電動キックボードで移動や帰宅しているという姿が想像できます。
基準に適合しない電動キックボードの流通も
国土交通省によれば、市場に流通している電動キックボードの保安基準の適合状況を調査したところ、46車種の内20車種で不適合が確認されたとしています。既に事業者への改善指導は実施済ですが、15車種については、未対応の不適合品が市場に残っており、車種名等を国土交通省ホームページで公表しています。
まとめ
交通ルールを守らない運転、事故の発生、特定小型原付の保安基準を満たさない車両の流通等への対策として、内閣府の規制改革推進会議では2025年6月に電動キックボード等の安全性確保に向けて「規制改革実施計画」を閣議決定しました。
警察庁が民間事業者と連携して収集したデータに基づき、実態や状況、原因を踏まえた交通ルールの遵守や事故防止に必要な取組を行うことや、保安基準不適合品の流通防止を行うことが挙げられています。
警察庁からはシェアリング事業者に対して、利用者への交通ルールの周知、飲酒運転撲滅の対策推進、ヘルメット着用の促進を行う等、実効的な取組を求めています。
すでに販売事業者やシェアリング事業者も一定の対策を実施していますが、電動キックボード等がラストワンマイルの手段として今後普及するためにも、更なる対策強化により検挙件数や事故件数が減少することを期待します。
【参考文献】
- 多様な交通主体の交通ルール等の在り方「パーソナルモビリティ安全利用官民協議会」第12回(2025年6月27日)
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/index.html - 警察庁ホームページ
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/tokuteikogata.html - 内閣府「第23回規制改革推進会議」(2025年5月28日)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/250528/agenda.html
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