
政府人権行動計画の公表目前、人権DD義務化で国内外から賛否の声
2025.10.10
日本政府が2025年12月に予定する「ビジネスと人権に関する国会行動計画(2020-2025)」(NAP)の改定に向けて、内容への関心が高まっている。中でも、企業に対して人権デュー・デリジェンス(人権DD)の義務化が盛り込まれるどうかに注目が集まる。欧州を中心にした複数の先進国では、すでに法制化が進む。2022年5月に、当時の萩生田光一経済産業相が記者会見で、将来の法制化の可能性について言及したことがある。
そうした中、経団連は9月16日に公表した意見書「『人権尊重経営』の推進 -『ビジネスと人権』に関する経団連の考え方と政府への期待-」の中で、企業の人権尊重の取り組みは、「指導原則に則って自主的に進めることを基本とするべき」として、義務化に否定的な考えを明らかにした。企業の人権尊重の取り組みは不可欠としつつ、人権DDやサプライチェーン上のリスク把握のための調査などが企業の重い負担になっていると主張。義務化は、企業の画一的・チェックボックス的な対応を招くとした。また、企業が配慮すべき人権侵害リスクは業種やサプライチェーンの構造によって異なるため、政府の現行の汎用的なガイドラインでは実務上の対応が難しいと否定的な見解を示した。その上で、政府に、▽ガイドラインの定期的な更新、▽無料相談可能な政府窓口の設置、▽中小企業向けの人権DDチェックリスト・事例集の作成――などの支援を要請した。
一方、海外を中心に、日本企業による人権DDの実効性向上のため、政府に法制化を求める声が挙がっている。「ビジネスと人権」の推進を目的にする国際NGOのWorld Benchmarking Alliance(WBA)とBusiness and Human Rights Resource Centre(BHRRC)は8月19日、共同提言を公表。法制化で先行するドイツやフランスで国内企業の人権DDの実施率が向上するなどの政策的効果を例示して、日本にも法制化を求めた。
改訂NAPには、人権DDのほか、「AI・テクノロジーと人権」や「環境問題と人権」など新たな人権課題も盛り込まれる予定だ。政府は2025年10月のパブリックコメントに向けて策定作業を進めている。
【参考情報】
2025年8月19日 World Benchmarking Alliance HP:
https://assets.worldbenchmarkingalliance.org/app/uploads/2025/08/Japan-NAP-2.0-policy-note_JP.pdf
日本経済団体連合会 HP: https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/056_honbun.pdf
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